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3/14 『PSYCHO-PASS サイコパス 下』を読んだ

下巻に入ってから文体に読み慣れてきたのか、脳内原作再生とも結構かみ合うようになってきた。一方でボーナストラックのアニメには無かったショートエピソードなども楽しい。
シビュラシステムの真実が明らかになるシーンを読みつつ、免罪体質も永遠不変ではないのだろうなあ、などと思う。藤間なんかがいい例で、これは『PSYCHO-PASS  0』を読んだ時にも思った。免罪体質者をシビュラに取り込むという解決法はシステムが通用しない人間を消せるという利点があるが、シビュラに取り込まれた人間がクリアカラーを保ち続けていられるのかという問題に対しては回答を持ち得ない。脳みそだけ取り出されてシステムに取り込まれることで変質するものがあると、シビュラシステムは見抜けなかったのかしら。『魍魎の匣』で京極堂が言っていたように、そこには新たな意識、新たな色相が出現してしまうのではないか……。
そう考えると、アニメの2期に登場した鹿矛囲桐斗は、シビュラにただつまらないとNOを突き付けた槙島とは違い、より発展的な疑問を提示したし、その上でシビュラを発展せしめた点で、正当続編にふさわしき敵役であったのだなあ。2期の小説版も読みたいなあ。
アニメと小説版との違いもちょこちょこあるが、気になったのは狡噛が脱走する際の唐之杜との会話で、小説版だと唐之杜はアニメよりもうちょっとだけ狡噛に気があったのかなと思わなくもない。むろん本命は六合塚だろうけど。それとも、個人的な感情ではなく、1係というチームに狡噛を引き留めておく手段の一つとして提案したのか。
そして槙島だが、こうして見るとあらためて、こいつは最期までこの世界をエンジョイしてたな。本人としては退屈でたまらないということだったが。入念に準備してきただけあって、少なくともこの一連の事件の間中はずっと楽しんでいたように見える。完璧な世界とは何か、人の魂と罪とは何かと誰も彼もが悩んでるっていうのに、一人ずっと好奇心の赴くままに行動し、そして、とうとう最高の遊び相手を見つけた。きっと何一つ未練を遺すことなく逝ったのだろう。
ふと、槙島と対極にいたのは縢だったんだろうな、と思い立った。物心ついたときから潜在犯だった男。槙島と魂が最も近しかったのは狡噛なのだろうが、対極にあるがために最も相似な形を描いていたのは縢の方だったと思う。縢の場合、遺せるほどの未練も最初から世界に与えられちゃいなかったことを思うと遣る瀬無いし、その事実が、シビュラが間違った存在であるという確たる証として読者の胸に刻まれる。この先シビュラがいかなる発展を遂げようと、それが人類をとりあえずは庇護しようとも、常守朱の言うように、いつかは電源を落とさねばならないのだと。
といった感じで、『PSYCHO-PASS 』という作品の原点を改めて再確認できて良かった。面白かった。

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