4/29 『バースデー・ワンダーランド』を観た

まあ面白かった。
なんだか、実写のファンタジー映画をアニメで描いた、みたいな不思議な迂遠さを感じた。背景美術などは綺麗の極みだがキャラクターの動きなどはもっぱら常識の可動範囲内で、華美ではあるが派手さは無い。魔法使いとか錬金術師とかいるのに旅の乗り物はなぜか車で、せっかく異世界に行ったのに、風情は異国感程度に落ち着いている。
冒険は成功譚に終わるが、よくよく考えるとあんまいい話でもない。両親を亡くして不安に苛まれてる王子を、自分が眠ってしまうからと身動きの取れない人形に姿を変えて放置する魔法使いはどう控えめに見ても大悪なんだけど、大人たちはそいつらに縋るばかりで糾弾も打倒もせず、じっさい魔法使いが目覚めたら問題はあらかた解決してしまう。おそらくそういう話ではないのだろう。
王子も結局は国を運営するための生贄でしかなく、主人公の少女も含めて子どもたちを犠牲にして回ってる世界なので、滅びに瀕してるのもあんまり悲しくないんだよな……とか思う。大臣みたいな大人が「お前たちの世界は残酷ではないというのか!」と逆ギレしてきたけど自分たちの世界の危機を異世界の子ども連れてきてまで救って貰おうとするほどこっちの世界は残酷ではないぞと思う。 
だからきっと、そういう話ではない。世界の是非を問う物語ではなく、ただ少女が、自分の生きる現実から目を逸らしかけたときに、異世界を救った経験をして、もう一度頑張る気になれたという、それだけの話だったのだと思う。これだけの冒険をしておいて、帰るとき異世界に何の未練も無さそうなのがその証拠ではないか。王子とも何も無く、おみやげの品すら人伝い(しかも量産品)だったし。ひととき(3時間)の経験が誕生日プレゼントとかきらびやかな世界で成長して大人になったとか後腐れナシとか考えるとちょっと何かのメタファーかと邪推してしまいそうだが。

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