2/12 『ぼくらの『最強』イレブン』を読んだ

面白かった。
高3の2学期、英治達の引退したサッカー部に海外留学していた後輩の木俣(お前サッカー留学なんてしてたんだ……いつしてたんだ?)が戻ってきて、部を建て直す話。部員をスカウトし、かれらを取り巻く問題などを解決するなど、今作では自分たちの後輩を相手にして立ち回るようになっている。クセがあったり厄介な火種を抱えている後輩たちを相手取るのは、やがて教師の道を歩む英治にとっては、ある種の前哨戦のようなものにもなっているかも。今作においては大人への反抗や教師たちとの戦いというものはなく、むしろ部活の顧問の先生は頼れる存在になっている。部費や部員の金が泥棒に遭うという騒ぎでは、罠を張って見事犯人を捕まえるとなんと我が校の教師だったのだけど、それも酷い目に遭わせることはなく、一種の病気だとして哀れむ始末だ。時の流れというか、「ぼくら」の立場の変化というものを感じてしみじみする。彼らはもう社会に反抗するばかりではなく、社会の一部となって上にも下にも影響を及ぼす存在になりつつあるのだ。この後に出てくる敵も、借金のカタに息子を拉致して母親に敵暴力団組長の暗殺を命じる暴力団というあからさまな悪であり、反社会的存在である。「わるい大人をやっつける」ことに変わりはないけれども、いつの間にか秩序の守護者となってしまっている「ぼくら」。それはどうしたってしょうがない変化なのかもしれないけれども。
……なんて言いつつ、やるときにはやりすぎるくらいやっちゃうんですけどね! 今回も相手暴力団のヤクザ共を見事すぎる手際であっさり拉致監禁してしまうし。ヤングアダルト小説史上もっとも多く人を拉致監禁してる主人公たちだと言っても過言ではない。いやマジなんだこれが。
最後、事件が解決した後に襲い来る青春的波乱の前触れは、しかしさすがに急すぎる気もした。それにひとみが他の男になびく展開や英治がひとみへの気持ちを忘れかける展開などはもう既にやったやつでもある。まあ、同じ波乱を何度も繰り返すのが青春かもだが。
次巻は確か、上記のようなことを言っておいて何だが、地方の学校に出向いて悪の校長(悪の校長って何?)をやっつける話だったと記憶しているので、そういう意味でも初心に返ってもらいたいものだ。あと少しは受験のことも気にかけろよ菊地。もう高3のクリスマスじゃねーか。

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