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6/15 『サカナとヤクザ』を読んだ

そもそもサカナはそんなに好きではない。焼いた鮭とサバ、あとおにぎりの中のシーチキンマヨは大好きだけど、逆に言えばそれくらいで、生魚は全般駄目、スシもウナギも別に垂涎しない。そんなではあるものの、漁業とそれにまつわるブラックなビジネスにはそこそこの興味がある。
そして、ヤクザに対する好悪と興味の度合いというのもちょうどサカナのソレと同じくらいだなということに気づいた。当然ああいう人たちのことは好きではないし、怖いし、でもキャラクターとしての興味はある。なのでこの二つのことを同時に知ることができる本書は実にうってつけであった。
オビには「食べてるあなたも共犯者!」という目を引くような文句が載っているが、上記のように俺あんま食わんしな、あと住んでるところも海なし県だし、という言い訳のようなものを常に脳裏に挿みながら読んでいた。そういう逃げしろを用意しとかないと内容にちゃんと向き合っていられなかったとも言える。それくらいに、密漁や、そして暴力団という存在は、実のところ我々の世界と隔絶してないんだなと読んでて思わされたからだ。海なし県だなんて気休めもいいところで、県境どころか国境だって密漁者は軽々乗り越えて密漁するし、密漁品が荷揚げされる海岸と俺の住んでるとこだって文字通りに地続きなのだ。暴力団やヤクザに関しても同じで、彼らも「我々」と実のところ地続きなのである。カタギだのなんだの一応言葉はあるものの、それらはどちらかの都合次第でわりと簡単に混淆・越境・侵犯される。法令で定められた量よりうっかり獲り過ぎちゃってもそんなに気にしないように。密漁品は正規品と混ぜ込ぜにして市場に卸されるように。
一番面白かった章は、築地潜入回。密漁の話よりも築地の仕事の話が面白かった。名前だけはよく聞くのに築地がどういうものか全くと言っていいほど知らなかったし、ある意味ヤクザ社会よりも縁遠い社会の様を垣間見られた。
あと、「ヤクザのプライドは、額に汗して働かないことである」という一文にもなるほどと思った。もちろんそれでヤクザのことをすっかり把握した気にはなれないが、この著者の本をもっといろいろ読んでいけば、キャラクターではないヤクザなるものをもっといろいろ知っていけるかもなと思える程度には、何か、啓かれるものがあった。今後もお勉強させていただこう。

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