11/26 西塔鼎『いつかここにいた貴方のために/ずっとそこにいる貴方のために』を読んだ


電撃文庫で「四月に降る雪」をやるとはいい度胸だ、と、あらすじに出てくるフレーズを見た勢いだけで買ってみた作品。戦場の少年と兵器として用いられる少女というモチーフはまた別のシリーズになっちゃうが。
中を開いて見れば四月に降る雪とは、兵器として造られた少女が用いる秘蹟の能力の一環であり俺の知ってる四月に降る雪とは違うな、と序盤では思っていたが、最後まで読むと、しかしあながち全然別物とも言い切れない。少年・レンカは少女・四月を救うために必死に行動を起こすが、しかしそのどれ一つとして成功しない。結局離れ離れのまま四月は亡くなってしまい、彼女に託された姉妹たちの命運さえも彼自身には救えず、ただの少年は何にも慣れないまま青年へと成長していくのだが、それでも進むべき道を定め、邁進していくことを止めないのには、あの時戦場に降り注いだ雪が、彼の心に儚くも未だに残っているからなのだろう。
最後まで読みおえてから、どうやら作者の前作とつながりがあるらしいと知った。なあんだ、それならそうと言ってくれればいいのに。単体でも楽しめる体裁ではあるようだが、せめてオビあたりにでも書いといてくれよと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?