3/28 『七つの魔剣が支配するⅤ』を読んだ

面白かった。
進級による新たな授業で世界観や(今はまだ)物語の本筋からは離れたような遠大な設定を開陳するとはズルい(?)。魔法学園ものはこういうことができるのだな、と感心しつつ、こういう話は大好きなので興奮した。
前半の学園生活パートでは、相変わらずピートがヒロインよりもヒロインしている。まあ、オリバーがピートに手厚いのは、発展途上のピートにまだ無垢だった頃の自分を見ているからなのかもしれない。自分が決定的な変質を迎えることなく、真っ当に育っていたらこうなっていたのではないかという未練からの、ピートを真っ当に歪むことなく育てたいという無意識の願望。後半で明かされる、母の魂との融合によって庇護欲も増しているのかも。だがそう考えるとピートが自分に憧れていることを告白したのに気づかないことも、ただの鈍感ってだけじゃなくなってきて辛い。今のオリバーが友人に憧れられることというのは、オリバーを苛むものでしかない。

後半のVSフォルギエーリもまた、とても白熱してよいものだった。フォルギエーリは宿敵として、また歴史に名を刻む天才として相応しき猛威を存分に振るいつつ、オリバーの憎悪を受け止めて悪びれもせず、そして死に際にはオリバーに哀れみや罪悪感からではなく教師としての助言を遺して逝くなど、序盤に立ちはだかる壁として申し分ない働きぶりだった。格が高い。これがあと5人は続くの~? 怖~。

そういったところでひとつ、今更ながらに疑問に思ったのが、オリバーの同志たちがともに抱く「志」ってそもそも具体的には何なんだろう? クロエの復讐なのかと最初は思ったけどどうもそんな感じじゃない、むしろそれはほぼオリバーだけの妄執のようだし。カーリーの遺言からすると、魔法使い至上主義の社会を打倒したいとかいう感じだろうか。なんかその辺の差異というかズレも、のちのち不穏なことになる伏線に思えてくる。あらゆる点から破滅の未来しか見えない……「出会い」を望まないことには。次巻も期待。

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