5/20 『ミッドサマー ディレクターズカット版』を観た

面白かった。面白かった、が……!
うん、面白かったが、「観てよかった~」と思うかというと、そんな気分にはなれない……3時間弱もあるのでいろいろ用心して臨んだが、「臨んだ甲斐あった~」とは思いにくい……いや、絶対面白かったんだけど。「あー、面白かった。ハァ……(溜息)」という感じ。
いやいや、ホラー映画だって知ってたし、前評判からどんな感じのお話かってのも何となく知れてたし、スッキリ爽快なハッピーエンドが待ち受けているなんて思っちゃいなかった、むしろ期待した通りのモノがお出しされたと喜ぶべきだろうに、なんなんだろうなこの疲労感は。食べたポップコーンも妙に胃袋の中で重い。
何がこんなに遣る瀬無いかって、おそらくあの村にとって、今回のような事態というのは、別に珍しくも何ともないケースなのだろうって思えることだ。外部からやってきた人たちが自分たちの風習に衝撃を受けてパニックになることも、寿命を迎えた老人が死に損なって始末をつけなくちゃいけなくなることも、外の人間がいろいろと禁忌を犯して処分することになるのも、外部の血を取り入れることも。すべて、彼らの長い伝統の中できっと幾たび起こってきたことだろうし、だから段取りに滞りが無い。しきたりに沿ってなべて事もなく事が為される。外部の人間が女王になることは、珍しいことだったかもしれないが。
ダニがクリスチャンの”儀式”を目にし、パニックになって泣き叫ぶのを周りの女性たちが宥めているうちにみんなして泣き叫びだすシーン。最初はダニを宥めるつもりが逆にダニの悲しみに共鳴してしまい、この異常な世界に耐えるべく必死に誤魔化していた心が解き放たれてしまったのかと思ったが……そんなのは俺の願望でしかなく、むしろダニが身も心も村の一員となるための禊のようなものだったようだ。クリスチャンも結局生贄にしてしまうし。最後までぎりぎり、観客に「どっちなんだ?」と勿体つけていたけど、でもそうするしかないもんな。そうすれば、クリスチャンの魂は生まれ変わってまたこの村に戻ってくるんだから。見捨てる選択でもあり、見捨てない選択でもあったのだ。
俺としては最後には「この村を滅ぼすには一体どうすれば……」ということしか考えられなくなっていたが、観た人の感想などを掘っていると、ダニの悲しみを埋められたという意味でこれはハッピーエンドなのだとする人や、癒しでもあるなどといった意見を目にし、すげえなと思った。言わんとすることはわからないでもないけど……俺も基本ハッピーエンドが好きだし、どんな結末にも救いのある部分を探したりする方だけど、今作に関してはなかなかそんな気分にはなれなかった。せめて一人でもあの村から帰してくれれば、俺の心もすぐに帰って来れたんだけどな……。もう少し時間が欲しい。

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