5/7 『ぼくらのグリム・ファイル探険 下』を読んだ

面白かった。

情報ウィルスの原因と治療法を求めてドイツに向かったぼくら。そこで謎の鍵を握る怪しい女性との邂逅から、暗黒秘密組織や更にはナチの残党の影までもが現れだして、話の規模がどんどん大きくなってくる。
最初に追っていたその女性は実は敵ではなくむしろ真の敵と戦っていたイイモンで、そして真の敵こそが女性憎悪を募らせ現代に魔女狩りを復活せしめんとする暗黒秘密結社で、しかもナチ残党ともつるんでいて情報ウィルスはナチスが開発しようとしていた兵器だったという……のだがそれらは全てその女性の口から語られたことに過ぎず、胡散臭さは拭えぬまま、彼女と行動を共にすることになる。彼女も実は敵じゃないとはいうものの、接触する前にはなんか不穏なことを言ってぼくらをビビらせてたし、ハッキリしない。今作はなんか全体的にそうしたソワソワする空気が常に漂っていた。情報ウィルスという目に見えない危機に晒されて、ぼくらのメンバーも敵味方にかかわらず出会う人々もいつ脳が暴走しだすか、あるいはとっくに狂ってしまっているのかもという不安が付き纏い続ける。しかしそれが奇しくも、今のコロナ禍にある世の中の状況とやや似てはいた。読む時期がもう少しズレていたらそんなところに共感を得ていなかったかもしれない。

わりと状況に流されるばかりで今回英治たちあんまりいいところが無いなと思っていたが、しかし終盤には敢えて暴走したふりをして敵を誘い出したり、情報ウィルスを逆手にとって、相手に意味不明な呪文を唱えて敵を惑わすなど、ぼくららしい活躍を見せてくれたのは良かった。情報ウィルスという目に見えない攻撃に対し、こちらも情報ウィルスを創り出す(ただ「だるまさんがころんだ」を連呼するだけなのだが)という反撃はお見事。案外、原初の情報ウィルスもこんな感じで生み出されたのかもなとも思わせる。スレスレのリアリティというか。

しかし今回、というか今巻より、普通に英治とひとみが付き合いだしちゃってて、ヤアヤアという気持ちだ。結構イチャイチャしやがって。しかも相原はアメリカに行っちゃったのであまり一緒におられず(それでも帰国してきたら一晩中語り明かしたりはするんだけど)、なんか取られた気持ちだよ。

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