8/9 宗田理『ぼくらのミステリー列車』を読んだ

面白かった。
前作『ぼくらのメリークリスマス』から半年以上も時間が経過していて驚く。だいたい1学期、2学期、3学期にそれぞれ1作というペースではなかったか。しかしその分ぼくらの面々にも変化が見られたようで、カッキーと佐織がくっつき、安永と久美子は卒業後に結婚のハラを決め、純子は英治とひとみの仲を応援しつつも新たな恋敵の登場に胸を躍らせたりするなんか羽川翼みたいなポジションに立ってるし、宇野は背が伸びていた。そんな中で英治とひとみの間柄には進展が見られないのは、長期シリーズ主人公とヒロインの宿命と言わざるを得ない。それでも今作においては、中川冴子の存在もあり、すれ違っても無視したり無反応だったり、という描写が重ねられていた。リアルタイムで読んでいた人たちはハラハラドキドキだったのだろうか。
中川冴子というキャラクターの存在は朧気ながら記憶していたが、ここまで英治と親密になる間柄だったとは。「ぼくら」と一緒に行動できないながらも、携帯が普及していなかった時代、遠く離れた仲間たちとの連絡を繋ぐハブ的役割をこなす。上手い使い方だなと思うとともに、こうした形で「ぼくら」の中で役割を持てて嬉しかっただろうなとも思う。
旅先で見つけた心中しそうな中年カップルの後を追うという、また不謹慎なことをして舞台が転々と移動していくが、旅路の中には僕の見知った場所も登場してきて、そうしたところは情景がイメージできて楽しかった。今度聖地巡礼しちゃおうかな。中盤から知り合って事情を聴き、それから男の方はみるみる元気になって、最後の方なんかめちゃくちゃ活躍していて愉快である。今や大人の側に立ってしまった者として、こうした「ぼくら」に触発されて元気を取り戻し負けないほどの活躍を見せる大人キャラには肩入れしてしまう。もっとも彼がやったことと言えば、ヤクザをボコって不良息子と京都でデスマッチなんだけど。なんだそれ。すげえな。
騒動も終息した頃に、英治に知らされる親父リストラの報。今作では行先の見えないミステリー列車の旅を楽しんでいた一行だったが、最後に英治の人生そのものの行先が見えなくなってしまった、というオチか。しかしそれでも英治は闘志を失うことなく次巻へ続く。激励を込めてギュッと英治の膝をにぎる相原がちょっとカワイイだった。マジで安定の女房役なんだよな……。

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