9/4 大竹まこと『俺たちはどう生きるか』を読んだ

面白かった。
どんな本かと聞かれると返答に困る。年老いてあちこち軋んでいる身体を引きずりながら若かりし頃を振り返って、時事問題に関心を向け、この国の未来を憂い、この国の未来を生きてゆく若者たちの未来を憂い、何かいいことを言おうとするも、まとまり切らず、体調の話に戻る。若者へ警句を発したと思ったら次の行ではモト冬樹がスズメを拾って役所に怒られた話が出てくる。一体どういうものなんだこれはと最初のうちは戸惑ったが、SNSで炎上した話が出てきたあたりで、そうか、要はこれが大竹まことのツイッターみたいなもんなんだ、と考えたら、わりとすんなり理解がいった。政治の話と思い出の話と仕事の話と身内の話が入り乱れる様は、ひとりタイムラインという感じだ。
とりとめのない話が終始続くが、中には目を引く一節、いいことを言うのに成功してるんじゃないかという一節もある。映画を観終えて感動して泣いてしまったので、恥ずかしさを押し切って上映後にひとりで拍手を送っていたら、何人かが応えるように拍手をしてくれて「幸せの壺の中に落ちた」という話とか。
しかし最後には「すまん。若者よ。君たちに伝える言葉をこの年寄りは持っていなかった」などと告白する。そんなことないよとも思うが、なくもないかもと言えるような部分もなきにしもあらず。まあ、一言一句から余すことなく教訓を得るようなことはせず、これから(運が良ければ)70歳になるまでの道行きの間に、そういえば先達はあんなこと言ってたっけと不意に思い出すような程度がよいのではないだろうか。ただ、70まで生きたところで「もういい大人なのに、まだ試練がやってくる」だそうだが。

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