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5/12 『ぼくらの特命教師』を読んだ

前作での描写から、英治の年齢は30代半ばから後半くらいか、とあたりをつけていたが、今回、終盤でぼくらメンバーが一部集結したときに柿沼が三浪の末に医大合格し、まだ在学中という情報が出たことで、最大でも27くらいということが明らかになった。思ったより若かった……英治も、ある程度普通の教師経験を積んでから悪魔教師にクラスチェンジしたと思ってたが、わりとすぐ悪魔道に邁進してたんだな。まっとうな教師としての道はひとみに譲り、自身は邪道を突き詰めてゆくと考えれば、ある意味いいチームワークと言える。まあ今回は、それほどきっちり機能してたとは言いがたいが……これからか。
今回の生徒たちは、往時のぼくら世代に負けないくらいのエネルギーに満ちている、ただし学校や教師たちへの攻撃という方向に著しく傾いていて……という状態で、そこにはオメガという、彼らを陰で操る謎の存在が見え隠れしている。その実態は指示に従う生徒たちにさえ存在が不確かで、「なんとなく」の空気感が事態を茫洋かつ混沌とさせている……。新シリーズ2作目にして、かなり曖昧で解釈の難しいものを相手取っているな。オメガの正体について、序盤にウイルスという言葉が出てきたところから、『ぼくらのグリム・ファイル探険』に出てきたような情報ウイルスのようなものを再び持ち出してきたのかと最初は思ったが、どうもこれは、もっと曖昧なものであるようにも思える。同じように序盤で生徒の口から語られた言葉、「目に見えなくたって、いることはわかりますよ。空気だってそうでしょう?」というのが答えのような気もする。そう、つまり「空気」だ。本作が書かれたのは2003年、「空気読め」「KY」という語が一世を風靡したのは2007年頃だというから、流行り出したのはもっと以前からと考えると、だいたい時期は合うか。匿名性に守られ、オメガをさらに裏で操るアルファによって、誰もがオメガとなり得るという構図は現代のインターネット社会をも予見していたとも言えるだろうか。あんまり昔の本を読んで、時代先取り先取りばっか言っててもしょうがないが。敵が曖昧なせいか、話の流れも結構曖昧なところがあったし。不良四人組中学生とか、なんかなし崩し的に英治の傘下に入ってたけど、特に更生したわけでもなく、といって反撃に転じるでもなく。最後は何故かオメガデスマッチの司会に収まっていた。まあ面白いけども。
最初っから怪しかった高村はオメガではなくアルファであったが、しっぺ返しを食らったからって最後まで味方ヅラしているのもどうかとは思った。悪魔教師シンパだったとはいえ、それでやることが生徒を陰から操るなのだから邪悪だ。ある意味、英治のやり方は一つ間違えればこういう悪影響も起こりうるという警告になっているのだろうか。あんまそんな感じしなかったが……。終わり方も、空気が相手だけにすっきりしない。英治がこの調子で学校から学校を渡り歩くなら、なんか『キノの旅』みたいな感じになっていきそうだな、このシリーズは。つってもあと2作だが。

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