7/9 『ぼくらの魔女戦記 Ⅲ 黒ミサ城脱出』を読んだ

面白かった。
昔読んだのは3部作のうちのこの3巻目だけで、内容を断片的にだが結構覚えていたり、「そういえばこんなシーンあったあった」と思い出したりする。前2巻を知らずに読んだから、何がどうなって今どういう状況なのか必死に読み解こうとしていたのかもしれない。そういうの今、やろうと思ってもなかなかできないな……。あえて途中から読むみたいなの。
主要キャラが全員黒ミサ城の中に入ってしまって、そういう意味で舞台がややせせこましくなっちゃってる感はあるものの、久美子が洗脳されて悪の女幹部ムーブをしたりなどと見どころは多い。しかし久美子、悪の女幹部が似合い過ぎる……。
実のところぼくらチームの活躍はあまりなく、現地組と2A組と、何よりはるおばあちゃんがイタリアの数百年続く黒魔女組織に暴威を振るうお話だったと言ってもいい。ただの海外旅行好きのおばあちゃんという役回りでぼくらとイタリアという外国の橋渡しをするだけかと思ったらブッダパワー引っ提げてガンガンに活躍してくるのだから恐ろしい。
痛快に反撃を決め、敵組織は同士討ちで瓦解、終盤はなし崩し的に首魁の魔女ジャンヌとも平然と面会したりするが、しかし最後に城そのものが脅威として立ちはだかる。数百年の歴史を紡いできた城、そして魔女の歴史そのものが。あまりに強大であるために、その一端を覗くといった程度だけど、恐ろしさはじゅうぶんに伝わる。特に魔女ジャンヌと副魔女セルピナが会話している最中に、シームレスに悪魔がセルピナに降りるあたりはかなりホラー。セルピナ、2巻でぼくらを追ううちにやり込められ、保身から寝返るんだけどそのバイタリティに魅せられたりもしていたのに、それが実は悪魔のささやきによって寝返らされていたのだという示唆は、認識が密かに裏返るようで怖い。
結局ジャンヌは契約を履行して死に、セルピナも悪魔に利用されたことを悔やんで自死。ルチアが魔女を継いでしまう。この辺の結末はちょっと忘れてたな。日比野とも一旦お別れしてしまうし。果たしてこれもすべて悪魔のねらい通りなのか、それともルチアは抵抗して黒魔女組織を無害なものに変えることができるのか。その辺は想像に委ねられ、ぼくらは日常へと戻っていく。まあこの後も冒険だらけなんだが。ぼくらシリーズ最大長編、楽しかった。

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