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6/25 『ピンクスカイ』を読んだ

元々は著者のかもめんたる・岩崎う大が自身の劇団で上演した作品を小説化したもの、とのことで、そう言われると、いや、言われなくても、作中のヤラナイカ佐藤はう大が演じてるようにしか見えなかった。言い回しとか、常にひとの内面を言い当てようとしながらしゃべる感じとかが。
登場人物はほんとクソみたいな変態ばっかでどんな醜悪な偶然が重なったらこんな変態どもが一堂に会してしまうんだって感じだがそれが起きてしまうのがピンクスカイがピンクスカイであるゆえんなのか。変態どもが変態的に醸成した変態人生論を延々聞かされるのでうんざりしてしまうんだけども、そう思いつつ実は多少は理解を示してしまう。女をどんなに嫌だと思う相手ともセックスしたい気にさせてしまうピンクスカイ、女にこれでもかというほど特殊な設定・シチュエーションを用意してセックスさせるまでの様を撮るRV。RVとはピンクスカイの模倣でありながら同時にピンクスカイの否定、超克を志したものであるのだな……とか、なんでこんなこと理解してやらなきゃならないんだと思いつつ、思う。
性欲という人間の原初の欲求……と言えば聞こえはいいが、要するに最底辺に溜まる澱のような欲望をここまで開けっぴろげに差し出すことで、受け取る側にはある種の余裕ができるから、逆に相手に多少は歩み寄ろうという気持ちが湧いてしまうのだろうか……? なにせ変態であるだけでなくクソのカスであるたっくんにさえ、「オレだけは、オレを見捨てない!」と最底辺の自己肯定をしてみせるところはちょっと偉いなと思ってしまうのだから。
いっこ不思議だったのは、登場人物欄に亀田が入っていないこと……だから本文中でいきなり現れたときは何者かとびっくりしたし、その割にはほとんど出てこず、ただただたっくんを狂乱させるためのギミックであったかのよう。まあそれだけの端役だから登場人物欄に載らなかったのかもしれないが。
ピンクスカイが「女性を問答無用に淫乱にしてしまう現象」だと周知されてから、実際にそれが起きるまでのハラハラ感が面白かった。非現実的な言説に呆れ戸惑いつつ、いつ理性が崩壊してもおかしくないと誰もがうっすら信じているような空気感は結構リアルだ。
なぜピンクスカイが女性にしか作用しないのか、だが……たっくんや亀田のような奴らをみると、そもそも男はピンクスカイを見るまでもなく脳味噌がピンクスカイだから、って結論が出てしまいそうで嫌だな。つまり正確には女性を淫乱にするのではなく、女性を童貞にしてしまうもの、それがピンクスカイ……いややっぱ嫌だなあ。

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