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10/20 『魔女と猟犬』を読んだ

面白かった。

はじめて読む作家。これまたジャケ買い。あとラノベのオビで「重版出来」って書かれてるのも珍しい気がして興味を引かれた。更に言うと、名前も変だし。
おはなしは、がっつりめのファンタジー。魔法のある世界で、その力を駆使して勢力を拡大し続ける大国にどうにか対抗すべく、天然の魔法使いである魔女を隣国から貰い受けに交渉へ向かう。
そして主人公は小国領主のバドに仕える暗殺者であるロロなのだが、このロロの強さがちょっと、いまいちわかりにくいというか、やや混乱した。
いやよく見てみればそんなわかりにくいことはない、むしろ作品内における強さの指標になってもいるのだ。ロロの強さは普通人の騎士であれば多人数相手でも翻弄できるほどで、しかし魔術師相手だと1対1は不利。そして魔術師の最高峰である九使徒には逃げの一手と、わかりやすく描き分けられている。
だが、いやだからこそ、冒頭のダイアウルフとかいうでっけぇ狼のシーンだけちょっと解せないというか、そこで振り返ってみて混乱するというか。イラスト見る限り頭に乗れるくらいの大型魔獣で、討伐には騎士団を編成するくらいの準備が必要で、しかも群れのボスであったヤツを単独討伐できるという「戦績」を、どこに位置付けるべきかわかんないのだ。というかこのダイアウルフっていうのはファンタジー世界のモンスター的な存在と考えて良いのか。少なくともこの巻の中では他にモンスターめいた存在が出てこず、人間および魔術師との諍いに終始しているので、この獣がどれくらいの脅威なのかもいまいち判断しづらい。
また、ロロと犬のロロとのエピソードも良かったんだけど、ロロがそれで「人を殺せない暗殺者」となったのはわかるものの、やっぱり冒頭のダイアウルフに立ち返り「あ、獣は殺れるんだ……」とか思っちゃったりして。しかも、狼って。広義のワンちゃんじゃん……とか。いやそりゃ愛着は無いだろうけど。どうにも引っかかってしまった。せめて猪とか、他の獣にしといてくれればな。
しかしそうしたエピソードの果てに、主の無惨な有様を目にし、『暗殺者は慟哭より生まれる』という一度は免れた通過儀礼をおよそ最悪のかたちで果たしてしまうという因果はよかった。ていうか「哭く」っていう字はロロ犬って書くんだね……ここからとったのかな。
魔術師たちと魔女の戦いもいい感じ。普通人との圧倒的な戦力差を見せつつ、しかし死ぬときはしっかり死ぬ。魔法はそれぞれ固有の能力と発現方法を持つあたり、魔術師っていうかニンジャ(『ニンジャスレイヤー』のほう)的な雰囲気も漂う。今後もいろんな魔術を持つ魔術師がボコボコ出てきてはドコドコ死んでってほしい。一方で普通人たちの頑張りも見てみたいところではある。変形武器とか、魔法に対抗する為のトンデモな仕掛けとか見てみたい。

ラスト、策略は失敗に終わり互いの故国も蹂躙され、タイトル通り魔女と猟犬しか残らなかったここから如何なるリベンジを見せるのか。童話モチーフの他の魔女たちの活躍も楽しみ。もっとも、あまり童話じたいに詳しくはないのだけど。

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