4/18 『ぼくらのグリム・ファイル探険 上』を読んだ

面白かった。

ページ開いてすぐ、章のはじめにイラスト、それもマンガ形式のイラストが入っていてびっくりする。なんと作中にキーアイテムとして出てくるマンガの一部が、各章のはじめにイラストとして出てくるという形式をとっているのだった。昔に一度読んだことがあった筈なのに全く憶えてなかった。ただそのことに触れられるのはこの上巻の後半で、それまでは本文と関係なさそうなマンガが飛び飛びで掲載されてるだけなので、当時の自分はあまり理解できてなかったのかもしれない。しかし、急にこんなことをやるのだから、やはり侮れん、宗田理。

憶えてなかったと言えば、一年の浪人生活を経て見事大学に合格した英治が、言語学を学んでいたことも全く憶えていなかった。へえ、英治が言語学を……俺も大学ではちょっと齧ったんだぜ。すっかり忘れてたってのに、時を経てこんな共通点ができていたなんてな、へへ……と、照れた。

ともあれ、そうして英治が言語について学んでいたことがきっかけで、今回の事件に繋がっていく。子供たちを自覚なき凶行に走らせる情報ウイルスの存在が大学のゼミの助教授から示唆され、英治たちは半信半疑ながらも調査に乗り出す、するとまさに子供が凶行に及ぶ場面に出くわす……。いきなり突飛な仮説が出てくるし中盤まではこの大学の先生こそが自身の仮説というウイルスに侵されてんじゃないかという感じなのだが、実際凶行に走る子供のシーンを目にするとなかなか背が冷える。現代のあまりに豊富な情報に晒されて、未発達な子供の脳が特定の情報の組み合わせに過剰な反応を誘発され暴走してしまう、というような仮説で、おそらくは当時話題になり始めていたであろう「キレる子供」現象をうけて生み出された設定なんだと思うが。今風に言うと「虐殺の文法」みたいなものだよな、これ。それも別に今風ではないか。

情報ウイルスの手掛かりを求めて仲間たちといざドイツへ、というところで下巻へ続く。みんな大学生になったことで行動力も増し、日本全国を飛び回ったり海外への遠征もへいちゃらだ。考えてみれば、高校卒業から1年10ヶ月経ってるので、みんなおおむね成人してるんだよな。今作は「大人」としてのぼくらの初ミッションだったというわけだ。立派になって……。

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