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衿を使いこなそう!

こんにちは!
すっかり季節が変わりましたね!うちのサクランボもかなり色づき、食べられるものも出てきました。
そして、私の自宅事務所の窓から入る風も暖かく爽やかに!
Studio di Felice主宰の坂元です。 

今回は「衿」がテーマで数回に分けて投稿致します。
衿には様々な形状が有りますが、基本構造となりうる、スタンドカラーで検証を交えながら進めて行きたいと思います。
先ず、その形は衿付け線が前中心側まで真っ直ぐな「帯状」、前中心側で「上がる形状」、逆に「下がる形状」と衿付け線の形状で大きく3タイプに分けられます。
その違いはどの様な条件で変わってくるのでしょうか。

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1.形状の確認

まず、最も単純構造のスタンドカラーでその形状を見てみます。

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同じスタンドカラーでも上の写真の様に3種類の形状が存在します。
そして、専門学校やスタイルブックで紹介されている形状は1番の「前中心側で衿付け線が上がっている」形状が多いかと思います。
ですが、実際市販されているシャツカラーのスタンド部分を見ると3の「前中心側で衿付け線が下がっている」形状も見受けられます。
これらはどう違うのでしょうか。
それではそれぞれを、衿だけの状態で見比べてみましょう。

2.衿単体でボディに乗せてみる

まず、2番の直線の帯状の衿をボディに乗せてみます。
注)今回の衿ぐり設定はボディまたは製図のゆとりが入っていない原型の衿ぐり  を設定してあります。

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衿は帯状の「輪っか」になっており、自然にボディに乗せてみると後衿付け線から浮き上がってしまいます。
では、後衿付け中心線で衿をピンで固定してみます。

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今度は前が浮いてしまいました。
張りのある紙で衿を表現してあるからでしょうか。それとも柔らかい素材だと馴染むのでしょうか、、、

この衿は筒形状ですから、柔らかい素材を用いて馴染んだとしたら、その「筒形状」は崩れてしまうことは容易に想像できる事と思います。
「筒形状」の衿を崩さずに衿ぐりにつけようとすると、身頃衿ぐり線を見直す必要がありそうです。
下の写真をご覧ください。
ボディの衿ぐりを横から見ると、サイドネック付近で一旦「山なり」になっています。
そして、衿の付け線側は筒状になっていても横から見るとバックネックポイントから前衿ぐり中心まで一直線になっていることが分かります。

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この事から2番の様な直線の「帯状」の衿が付く条件は衿ぐりを横から見て「一直線」につながる事が前提となる事が分かります。

製図やボディのバックネックポイントの設定は「第七頸椎」の棘突起(首を前に傾けた時に飛び出る骨の位置)をバッグネックポイントと定義づけているケースが多いですが、人体のサイドネック付近では「僧帽筋」が通っていて、多くの人の衿ぐりはバックネックポイントよりもサイドネックポイントの方が高いバランスになり山なりの傾向になります。
ですので、採寸時の「背丈」や「総丈」を測るときは第七頸椎から測る事になりますが、上記の様な衿付け線が直線の衿を付ける場合はバックネックポイントを意図的に上げる必要があると考えられます

下の写真はボディのネックラインに合わせて描いたネックライン(黒テープ)と、直線のスタンドカラーを自然に首に乗せた時の衿付け線(赤テープ)の後中心線での差を表しています。この場合は約8mmバックネックポイントが上がりました。

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この様なことから、第七頸椎をバックネックポイントとして設定した衿ぐりの場合、サイドネックポイントが一旦山なりになる衿ぐり形状においては、1番の前中心側が上がる衿形状及び、2番の衿付け線が直線の衿形状は不適切と考える事ができます。

では、一般的に多く見受けられる1番の前中心側が上がる形状の衿はどの様な条件が必要なのかを次に見てみます。

3.前中心側が上がる衿形状

では、どの様な条件が整った時に前中心側が上がる衿形状になるのでしょう。
衿付け線が直線のスタンドカラーにおいて、バックネックポイントが第七頸椎の位置では、前中心側では浮いてしまう事が分かりましたので、衿が自然に落ち着くように後中心で第七頸椎より上がった位置でもう一度、衿をボディに乗せた写真を見てみます。

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衿付け線はボディに沿っていますが「衿上端」は首から離れています。
この、首から離れた上端を首に沿う様に衿に切り込みを入れ、たたんで首に沿わせてみます。

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シャツカラーの台衿に近い位の沿い具合で衿上端をたたんでみました。
この状態で衿を見てみます。

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この条件ですと、衿前中心側で衿付け線が上がる形状になりました。
前中心側が上がる衿になる条件を満たすためには
1.横から見て第七頸椎よりもバックネックポイントが上がり、前衿ぐり中心まで
 が一直線になる。
2.衿上端を首に沿わせる形状を求めるとき。

以上の2つの条件を満たす時に衿の前中心側が上がる事になりそうです。
では、最後の3.の前中心側で衿付け線が下がる場合を考えてみます。

4.前中心側が下がる衿形状

もう、予測がついたことと思いますが、多くの場合、サイドネックポイントが山なりになっている事から、身頃衿ぐり線が横から見て一直線になっている場合を除いて、サイドネックポイントを起点として衿上端を、前後身頃衿ぐり中心線に衿の前後中心が沿う様に切り開く事になりそうです。

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では、切り開いてみます。

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これで、後中心衿付け線を第七頸椎につけた状態で前衿付け線も身頃衿ぐりにつきました。
では、この衿を見てみます。

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衿付け線が前中心側で下がる形状は、バックネックポイントを第七頸椎に設定しサイドネックポイントが山なりのときに、衿上端側を切り開く事により、この形状になる事が確認出来ました。

しかし、このままでは、前衿上端が首から離れた格好になる為、前中心側で衿上端を少したたんでみます。

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このように、バックネックポイントを第七頸椎に設定しながら、サイドネックの山なりを乗り越えて、首に沿わせると、緩やかな「S字」を描くような衿になりました。

5.今回のまとめ

ここで、改めてこれらの3種類の衿形状を並べてみます。

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これら衿の形状は衿ぐりを横から見た時の状態の影響を受ける事が確認できました。
スタイルブックやテキスト等でよく見かける1.の前中心側で衿付け線が上がる衿形状が成り立つ条件は身頃と密接な関係が確認できましたが、如何でしたでしょうか。また、2.や3.の様な形状は「テーラーカラー」でも見受けられます。
こちらはシリーズで検証して行きたいと思います。

今回のことから、バックネックポイントは条件によって変えても良い、又は変えなければならない時があると考えられます。
これは製図からのアプローチであっても、また任意のボディからドレイピングで原型を起こすにしてもバックネックポイントが第七頸椎にしなくてはならないという縛りから解放しないといけないと思います。
また、個々の骨格や肉付きにより、横からの姿勢を観察をして、衿ぐりの設定により衿の形状を設定するという事になります。
★サイドネックポイントがバックネックポイントよりも高い場合でも、サイド ネック付近で衿ぐりが広く、第七頸椎から通る衿ぐり線が横から見た時に一直 線に通る場合は、衿付け線が一直線の帯形状で付ける事が可能という事になり ます。逆にいうと、第七頸椎をバックネックポイントとして、前中心側で衿先 が上がる製図はサイドネックポイントで横に広くすれば良い、しなければらな いという事になります。

そして、第七頸椎をバックネックポイントとした時に、後中心で衿の首への沿わせ具合によっても前中心川の衿付け線の下がり方も変わってきます。
下の図をご覧ください。
後中心で衿の首への沿わし具合を色ごとに表しています。それぞれ、後中心(縦地の目)に対して、横地の目は直角に通るように沿わす為に写真のように首から衿上端を離す程、前中心では衿付け線が下がる傾向になります。

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今回はここまでに致します。
次回は、この台襟に「羽」をつけたシャツカラーについて投稿しようと思います。シャツカラーで良くある「後衿付け線が覗く」についても触れてみたいと思っています。

また、私は身頃衿ぐり寸法よりも衿の衿付け寸法を長く設定します。
その理由も交えながら、縫い代の付け方を含めた内容を考えていますので、是非楽しみにしてお待ちください。

今回も最後までお読み下さり、ありがとうございました。
ゴールデンウィークを目前に4月25日に3度目の緊急事態宣言が発出され、今まで以上に外出がままならい状況ですが、そんな中で空いた時間や何かの合間にお読みくださり、この投稿がパタンメイキングを楽しむきっかけの一つに成りましたら幸いです。

                             Studio di Felice
                               坂元 孝史

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