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バストダーツをアームホールに逃した時の身巾変化part2

前回の技術投稿から随分時がたってしまいましたが、今回は以前投稿致しました「バストダーツをアームホールに逃した時の身巾変化」の続きになります。寒さが苦手な私がようやく動き出せる、梅がすっかりきれいに咲く時期になりましたね。

パタンメイキングのオンラインレッスン「Studio di Felice」を主宰しています坂元です。では始めます。

★お知らせ★
このシリーズの記事を投稿してから3年が経ちますが、私のnoteでは常に一番多いアクセスを頂いています。
バストダーツをアームホールに逃した際の身頃バランスやそれに伴うアームホールの描き方等に、時代をこえて関心が高い様子を感じています。
このシリーズを更に詳しく完全版としてStudio di Feliceではレッスン用に作成しましたテキスト販売を不定期に行っています。
直近のお申込み受付は2024年2月6日(火)〜20(火)となっています。
タイトル「バストダーツをアームホールに逃す操作方法〜身頃続きの袖へのプロローグ〜」に加えて続編の「身頃続きの袖へのアプローチ」の同時販売となります。
各種製図方式、ドレイピングから求められた「原型」からでも応用可能となります様に、パターンのもつ「傾向と法則」そしてそれらが導き出された「プロセス」の全てを書き記してあります。
「傾向と法則」を用いることは、パタンメイキングの時間短縮・高い再現性となります。
お申し込みはStudio di Feliceホームページ専用フォームからとなりますので、ご希望の方は上記受付期間中に是非お申し込み下さい。


1.身巾バランスを考えずに、、、

早速ですが、まず下の写真をご覧ください。
★各トワルは脇面を下ろした腕に押された状態を再現する為に前後「要」の位置
 をピンで留めてあります

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これは、身巾のバランスを取らずにバストダーツをアームホールに逃して、アームホールをなんとなく繋ぎ直しただけのパターンです。

この様に、ただ単に身巾バランスを取らずにバストダーツをアームホールに逃すだけだと、アームホールが崩れてしまいます。そして、どの様なラインでアームホールを描こうとも、脇面からみると鎌巾が広くなります。それはアームホールが身体から離れることを意味します。

アームホールが身体から離れると、袖が付かない場合、アームから肌が覗く様になります。また、袖をつける場合、身体から離れたアームホールに袖付けが始まりますので、少しの動作でも見頃を引っ張る格好になります。

2.身巾バランスを加えてみる

では、前回投稿しました「バストダーツをアームホールに逃した時の身巾変化」の中で、バストダーツをアームホールに逃すことにより、脇面の方向が変化する。そのことにより、脇線に対しての寸法が不足すると言うことを記しました。この脇面の変化を原型・身巾バランスを変えずに全量アームホールへ逃す・身巾バランスを取り半量・身巾バランスを取り全量バストダーツを逃すの比較を見てみます。

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写真は上から撮ったものですが、身巾バランスを取らずにアームホールにダーツを逃しただけだとバストポイントから脇面の方向が原型から比べると身体から離れているのが分かります(言い換えれば鎌巾が広がっています)

では、次にそれぞれを横から(脇面)から見てみます。

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如何でしょうか?

身巾バランスを取った状態で、アームホールにバストダーツを逃しても身頃の崩れは起こらず、そして、原型の鎌巾バランスを保っています。言い換えれば、鎌巾バランスを保つ様に身巾を補う事がどうやらポイントになりそうです。

では、そのバランスを見て行きます。

注)肩先で浮いているように「ゆとり」が多く感じられるかも知れませんが、意図的にそうしています「肩甲上腕リズム」と言う、ある一定の角度よりも腕を上げた時に肩先が持ち上がる事を加味してあります。詳しくはまたの機会に、、、

3.身巾バランスの目安

バストダーツをアームホールに逃した場合に、脇の面が変わると言う事と、それに伴い身巾寸法が不足する目安をみてみます。勿論、デザインや仕上がり指示寸法の制約により、これに限りませんが、概念として捉えてください。

これはバストダーツの半量をアームホールに逃した時のバランスです。目安はアームホールにバストダーツを逃した際にアームホールで口が開いた寸法(a)が「脇面が離れる距離=不足分量」と捉え、その分量を脇で出します。そして、肩巾で2/3a、要の位置では水平に2/3aを通り、アームホール底のバランスを取るためにaの分量を繰り下げてアームホールを描き直します。肩巾はデザインによりこの限りでは有りませんが、肩先での繋がりを考慮してこの様にしました。要の位置で2/3aとすると、脇面側に1/3aを残すことになります。後ろ身頃でも同様の配分にしますので、前後で1/3aずつ鎌巾がでることになり、結果鎌巾には2/3aの配分になります。すなわち、前・脇・後の身巾バランス配分は均等にされる事になります★身巾を大きくしたくない場合は、元の鎌巾と同じ分量になる様に、脇で2/3aを目安に、元の鎌巾より狭くならないように調整します。

ですから、アームホールにバストダーツを逃した際に開いた口の真ん中を通る様なアームホールラインを描くと、脇面が広くなる傾向になりますので、結果的にバランスが崩れてしまいます。

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次にアームホールにバストダーツを全量逃した場合のバランスを同様に見てみます。

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次に、後ろ身頃を見てみます。後ろ身頃は前見頃でアームホールにバストダーツを逃すことにより、アームホールの縦の距離が長くなります。そのバランスを取るために、肩ダーツを前身頃のアームホールで垂直に開いた口の高さ寸法を開きます。

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続いて前見頃でバストダーツを全量開いた場合及び、肩ダーツ分量だけでは高さが足りない場合のアームホールの高さ調査になります。

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こうする事により、前後アームホールの高さバランスを一定に保ちながら、鎌巾が原型(身体)からあまり広くならないバランスを与えながら身巾を出すと身頃の崩れを防ぐ事になります。

★今回は前後アームホールの高さを揃えるために後ろで不足した分を片先で上げる方法を選択していますが、アームホールに逃したバストダーツと肩ダーツの
 高さの「差」の半分を肩線を前に並行移動(縫い目移動)してバランスを取る
 方法も有りますが次回の「完結編」にてご紹介いたします。
そしてStudio di Feliceでは本編を発展させたオリジナルテキスト「バストダーツをアームホールに逃す操作方法〜身頃続きの袖へのプロローグ〜」を使用したパーソナルレッスンも行っています。
※オリジナルテキストは不定期ですが販売受付も行っています。
ご希望の方はホームページよりお問い合わせ下さい。

また、アームホールにバストダーツを逃す、もしくはゆとりの多い場合、肩周りから「ドレープ」が現れます。「ダキ」と表現される事もあるのでしょうか。この「ドレープ」はいわゆる「シワ」ではなく、縦方向に重力に逆らう事無く「キモノスリーブ」や「ラグランスリーブ」のように自然に流れる様に現れるのが理想の様に思います。

バストダーツをアームホールに逃す事により、身巾を出す必要性は身頃シルエットを崩さないと言う事と、バランスを保つ為に鎌巾を原型(身体)からあまり離れないように注意すると言う2つのポイントが挙げられるのでは無いかと思います。そして、これはバストダーツ分量に左右されますのでバストダーツ分量が多い場合、全量を逃す事が困難になるケースも考えられますので与えられた条件との相談になります。

次回はテーラーカラーとテーラーカラーの表衿の展開に付いて投稿したいと考えています。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。この投稿が何かの形でお役に立てれば嬉しく思います。

写真はそろそろ花びらが顔を覗かせてくれる「さくらんぼの木」の蕾です。桜のような花が咲き、目を楽しませてくれたあとには、甘酸っぱいさくらんぼ🍒の身を付け、今度は舌を楽しませてくれます。

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