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着丈バランスの目安は計算で出せる?

★お知らせ★
私のnoteでは常に一番多いアクセスを頂いています。
バストダーツをアームホールに逃した際の身頃バランスやそれに伴うアームホールの描き方。そして、そこから発展させた身頃続きの各種袖のアプローチは時代をこえて関心が高い様子を感じています。
Studio di Feliceではレッスン用に作成しましたテキスト販売を不定期に行っています。
直近のお申込み受付は2024年2月6日(火)〜20(火)となっています。
タイトル「バストダーツをアームホールに逃す操作方法〜身頃続きの袖へのプロローグ〜」に加えて続編の「身頃続きの袖へのアプローチ」の同時販売となります。
各種製図方式、ドレイピングから求められた「原型」からでも応用可能となります様に、パターンのもつ「傾向と法則」そしてそれらが導き出された「プロセス」の全てを書き記してあります。
「傾向と法則」を用いることは、パタンメイキングの時間短縮・高い再現性となります。
身近に相談できる人がいない、一人でパターンを悩んでいる方は是非お申し込みをご検討下さい。
お申し込みはStudio di Feliceホームページ専用フォームからとなりますので、ご希望の方は上記受付期間中に是非お申し込み下さい。

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今回は前回の続きをと思っていましたが、着丈を決めるのに悩んでらっしゃるかたから相談がありましたので、着丈についてまとめてみました。洋服の着丈を決めるとき悩みますよね。デザイナーの意向を汲みとりながら、デザイナーが望む以上の絶妙なバランスとなると迷いが深まるばかり、、、

こんにちは、パタンナーのパーソナルレッスントレーナー。
オンラインパタンメイキングレッスン「Studio di Felice」主宰の坂元です。


パタンナーの皆さん、そして発信者のデザイナーさんも着丈を決める時はどのようにして決められていますか?

私もイラストの段階まではイメージで良いんですが、パタンメイキングの時に何か目安になる良いバランスは無いかと色々探しました。

すると、人の身体にはある一定のバランス法則(カノン又はキャノンとも表現される理想的な人体比率)が存在していて、両手を広げた長さがその人の身長に等しい。また、肘から手首までの長さが足の大きさに等しい。肘の位置がウエストの位置に等しいetc...パタンメイキングにおいても出来上がり身巾寸法の約半分の寸法がアームホール寸法に近しい等、何かしらのバランス法則が存在するようです。

話はそれますが、あなたはプレタ(既製品)とオーダーの違いと共通点をどんな風に考ていますか?私はパタンメイキングをする場合、その基になる原型にあると考えています。

その違いは、プレタ=誰にもぴったり合わないけれども、誰にでもなんとなくハマる洋服。プレタは不特定多数の方に合わせるためにファジィな要素を持ち合わせ主に、任意に選定したボディ(人台)に合わせて原型が作られます。オーダー=その人の体型、寸法にピッタリと合った原型を作ると考えています。そして、それらそれぞれの原型からパタンメイキングされます。

また、共通点として原型にはその基になるボディや体型の抜け殻の要素がそのまま含まれていると言うことになります。

乱暴な表現になりますが、選ぶボディ(人台)、体型のバランスが悪ければ、あまり格好の良く無い洋服が出来上がってしまうと言うことになります。言い換えれば、ボディ(人台)を選定するにしても、それらの各所寸法、体型、姿勢(正体・反身体・屈伸体)は「平均値」でしょうから、ブランドイメージや審美的バランスをパタンメイキングの原型設計段階で加える事によって、身体に合わせながらも、よりイメージに合った美しいバランスの洋服を作る事が期待出来るのではないでしょうか。むしろ、オーダーの原型にこそ身体に合わせ過ぎずに審美的バランスを加える必要がある様に思います。

その審美的バランスにはどの様なものがあるのでしょう。

よく言われる「黄金比」「白銀比」「ルート矩型」等、これらの比率は「ピラミッド」「パルテノン神殿」などの建造物、はたまた「最後の晩餐」「モナリザ」「ミロのビーナス」などの絵画や彫刻の中にまで用いられてると言われています。人が無意識に「安定している」「美しい」と感じるバランスだそうです。なんでも人間の遺伝子を形作るDNAの螺旋構造の長さと幅の比率が1:1.62の「黄金比」のバランスで並んでいるとのことで、それが関係してるのかも知れませんね。

★用紙サイズの世界基準としてのA版は「白銀比」の1:√2を採用されています。B版は日本独自のA版より一回り小さいJIS企画となります。また、日本の建物は木造の歴史があり、丸太を無駄なく正方形に取り出すために、日本建築は√2で出来ているといわれています(ふすまや、着物の柄に格子が使われているのもその影響かも知れません)


そこで、着丈の話に戻りますが、人の縦方向の着丈にこれらの審美的バランスを応用したいと考えると「8頭身」と言う「憧れ」にも近いキーワードがあります。そして、その縦比率を横比率にも応用してみると。例えば、身長160cmの場合、頭は1/8になりますので160÷8=20cm。これを基準に身体の横方向に1/8の倍数で近しい寸法の肩巾に当てはめてみると、肩巾は約40cmで身長の2/8に当たります。そこで、肩巾を「1」とした同じ縦の比率「1」40cmを当てはめるとほぼウエストライン(背丈)辺りを囲む正方形ができあがり、ここから審美的バランスを探ってみます。

この肩巾、ウエストラインを囲む正方形に対しての対角線は「√2≒1.414」となります。この1(肩巾):√2(対角線)を「白銀比」といいます。そして、対角線の寸法を肩先から縦方向に取り、これを縦とする長方形を作り、また対角線を縦方向に繰り返しとっていきます(√2〜)これを「ルート矩型」と言います。

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★着丈は首の「第七頚椎」を基準にみています。因みに、背丈の約半分の位置は腕の付け根と見立てる事が出来ます。

すると、偶然でしょうか、√3の位置ではレディスでは良く好まれる「ヒップが隠れる位」のヒップ下付近、√5の位置では腿付近、√8付近で膝付近となりました。

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以前、私がニットデザイナーをしていた時に「ジャケットの着丈は54cmがよく売れる」「ハーフコートは98cm位が人気」と営業の方から言われていました。当時はただ単に統計的にそうなんだと思っていたのですが、この「ルート矩型」で見てみると、肩巾を基準とした「√2」と「√6」が何となくはまっている様に思います。勿論、デザイン要素として、肩巾が誇張されていたり、切り替え位置で肩巾が広く見える様な時はこの限りでは無いでしょうし、多少のプラスマイナスが必要とされる場合も有ると思いますが「なんとなく」や「当てずっぽう」時間を要する「経験値」よりも人が無意識に「安定している」「美しい」と感じるバランスを当てはめながら、その他の要素を加味すると見当違いにはならない様に思います。もちろん「計算」では無く「感覚的」に処理、表現出来る方もいらっしゃる事と思いますが、逆に言うと「美のバランスは計算できる」ということになるのでしょうか。このように、理想とする「8頭身」から導き出した肩巾を基に、洋服そのものの縦横バランスを取ることにより、実際に着用した人とのバランスを保つことが可能なように思います。

これらのバランスの取り方は着丈に限らず、デザインディテールにも応用できそうですね。むしろ工業製品では当たり前に使われていると思います。これからの時代、3D CAD等が更に発展していくと、着丈に限らずバランスの取り方がAIにとって代わられてしまう要素かも知れません。自ずとこれからパタンナーとして強化して行く要素がはっきりしてきた様にも思います。

こうして「幾何学」を洋服、パタンメイキングに取り入れてみる試みも新たな発見がありそうです。

今回も最後までお読みくださり有り難うございました。何かのヒントになり、引き出しが増え、また、すでにお持ちの引き出しが整理されて使いこなして頂けましたら幸いです。

では、また次回このnoteでお逢いしましょう。


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