手始めに

読者の皆様、はじめまして。
日本の鉄道模型を輸出しているModellbahn JPの中の人です。

こちらのnoteでは、Twitterに投稿している日々の営業風景以外に、私が業務を通じて見聞きしたこと、感じたことを書き綴っていく主旨の下、投稿をしていこうと考えております。

まず記念すべき初投稿として、手始めに何故「日本型鉄道模型の輸出業」を始めたのかについて、自己紹介を兼ねてお話ししようと考えております。



元々は、先代(私の父)が、1992年03月28日に始めました「Modellbahn 東京店」と言うヨーロッパ型鉄道模型を販売する店からスタートいたしました。

1992年10月に私が生まれているので、今年で30歳になる私と同い年の店です。

更にその源流は、1986年10月に兵庫県宝塚市の雲雀丘花屋敷にオープンした「Modellbahn 本店」になります。
先代は当初、顧客として出入りをしていたそうですが、これまでにない鉄道模型店のスタイルに魅力を感じ、Modellbahnが東京店出店に伴い、フランチャイジーとして名乗りを上げました。

と言うのも当時、日本で販売しているヨーロッパ型の鉄道模型と言えば、ドイツの「メルクリン社」の模型が主で、それ以外のヨーロッパ型を販売している所といえば、銀座の天賞堂、大阪梅田の阪急百貨店くらいだったそうです。

東京店が開店して以降のことはご存じの方も多いかと思います。
それまで銀座の天賞堂にはなかった製品を並べていたこと、「雑誌で見たことあるし、欲しいと思っていたけれど、日本国内に販売業者がいない」と言った潜在的需要を取り込んでいったこともあり、自分達が言うのもなんではありますが、一躍有名店の仲間入りを果たしました。
(同時に2chで先代は「NゲージをバカにするHOゲージ主義者」「殿様商売」等の悪名も轟いていました笑)

そんな中、東京店がオープンして以来、2000年代初頭までは売り上げを順調に伸ばしておりましたが、2008年頃、リーマンショックやギリシャ危機の波にヨーロッパの鉄道模型メーカーが飲み込まれ、更にインターネットを通じた海外通販が普及し、わざわざ国内の代理店を通して買うよりも現地の値段で簡単に買えるようになったこともあり、徐々に段々と売り上げが頭打ちになっていきます。

そこで、ふと先代が「日本人がヨーロッパの真鍮製模型を買うのだから、日本の真鍮製模型を買う外国人が居るんじゃないか?」と発想を転換し、Youtubeに真鍮製の新幹線の動画を載せました。
最初は再生回数も大して伸びず、「まぁ、こんなもんだろう」と悠長に構えておりましたが、アップロードをしてから2年後、ある日突然

「この新幹線はまだ売っていて、カナダへ送ってもらえるのか?」

とコメントが入りました。

それまでにも何件か問い合わせのコメントが入ることがありましたが、返信をしてもどれも音信不通になり、「今回もどうせ音信不通になるんだろうな・・・」と半分なげやりに「これ、真鍮製で高いけど大丈夫?」とコメントを返したところ

「友達が持っているから知っている。16両で日本円で100万円くらいするんだろう?どうしても欲しくなって、メーカーには勿論、色んなところに問い合わせたが、全く返答を得られなかった。だからもし売ってくれるのなら、いいニュースを待っている。」

と返信がありました。

その後も「DCCの搭載はしてもらえるのか」「配送方法はどの業者か」「支払いはどうするのか」と言った質問が続き、粗方先方の疑問が晴れたところで

「わかった。自宅のコレクションケースが12両だから、それに収まるように編成を組んで、その請求書と支払先を教えてほしい。1週間以内に振り込む。」

当初先代とは「本当か・・・?」と疑心暗鬼でしたが、ちょうど1週間後に支払先に指定した銀行から電話で

「カナダから100万円弱の振り込みがありますが、身に覚えがありますか?」

この電話がかかってきた瞬間、先代は一瞬、電話口で固まったそうです笑

私も当時大学生で、店舗が大学の近くにあったこともあり、授業の空きコマに顔を出しに行ったら、「カナダ人、本当に振り込んできたぞ!」と聞いた瞬間、「え・・・噓でしょ・・・」と面喰いました。

その後、大慌てで発注、DCC化改造、発送準備をこなし、無事カナダへ出荷した約1週間後、無事先方から着荷のメールが届き、こちらも一安心していたところ、そのメールにはこんな文で締めくくられいました。

「じゃあ次。この真鍮の新幹線が欲しいんだけど、これも12両でDCC化して送ってくれる?あと、英訳した説明書ありがとう。次の新幹線の代金と一緒にチップ払うよ。返信よろしく。」

私と先代が二人して「これはすごい金脈掘り当てたぞ!」とゴールドラッシュ時代の一攫千金を狙うアウトロー達さながらの心境でした。

そこから何本か、そのカナダ人へ送った後、少しばかりのトラブルがあり、新幹線が1本、店頭販売分として余ってしまいました。
(そのカナダ人はトラブル後も、また追加で注文をしてくださいました)

そこで「日本人に売っても仕方がないから、折角だし、最近始めたeBayにでも出してみようか」と軽い気持ちでアップロードしてみることにしました。

丁度そのカナダ人の一件以来、同時進行で「日本のNゲージも売れるだろうから、ジャンク品に近い中古品を適当に見繕って仕入れて、売ってみよう」という趣旨で世界最大フリマサイトのeBayにアカウントを作り、細々と海外通販をスタートしておりました。

金額も日本円で50万円を超えるものがフリマサイトで売れるという例を日本で余り聞いたことがありませんでしたが、日本円で20、30万円もするメルクリン社やアメリカのライオネル社のヴィンテージ品が捌けているのを見ていたので、可能性は十分にあると目論み、出品を決めました。

そこから1ヵ月近く経ったある日、ドイツから問い合わせのメッセージが届きました。

こちらのeBayも、先述のYoutubeの時と同じく、問い合わせは何通も来るが、いずれも冷やかしばかりで「また来たか・・・」程度の印象でした。

しかし「ライトはどんな色なのか」「箱の大きさはどれくらいなのか」「以前eBayで買い物をしたらパッキングが余りにも酷かったから、ちゃんとしてくれるのか」等ラリーが続き、問い合わせが始まってから暫くして、eBayから「Your item is solded!」の通知が届きました。
(因みにその当時、eBayのアプリで使われていた売れた際の通知音は、レジスターの「ガッシャーン!」「チャリーン!」と言ったコミカルな音でした)

そこから出荷が終わり、先方から無事に着いた旨のメールの文末にはこう書かれていました。

「実は真鍮製の南海ラピートがずっと欲しくて、メーカーやら色んなところに問い合わせをしたけれども、どこも返信をくれなかった。お金は用意できるから、送ってもらえるなら取り寄せてくれると嬉しい。」

私と先代は半笑いで「どこかで見たことがあるぞ。この展開・・・」と、不思議な気持ちになりました。

以上の一連の出来事から私と先代は確信しました。

「Nゲージだけではなく、日本型のプラスチック、更には真鍮製HOゲージは絶対にもっと売れる」

そこから宣伝方法としてSNSの世界シェア第1位であるFacebookにファンページや、日本型HOゲージのコミュニティグループ、eBayだけではなく、海外通販に対応しているECサイトなどを開設したり、日々の仕入れた物を宣伝し、「これを取り寄せられないか?」等の所謂「御用聞き」の依頼を取り込んだりと、まだ依然として対海外には閉ざされた市場である日本型鉄道模型の市場を開拓していくことにしました。

最後に、輸出業を始めて今年で3年目を迎え、まだまだ若輩者ではありますが、業務を通じて感じたことを少しだけ記して、この投稿は終わりにします。

このnoteをご覧のモデラーの方に、一番誇りに思って欲しいことは

「日本で生まれ、日本型鉄道模型と共に趣味の世界を広げてきた謂わば"日本型ネイティヴ"である」

ということです。

そして、

「"日本型ネイティヴ"は世界中の鉄道模型の市場で、一つのジャンルとして大きな勢力になり得る可能性を秘めている」

ということです。

私自身、日本型モデラー全員が無理に海外へ目を向けて欲しいとは思いません。
しかし、今までほぼ「西ヨーロッパ型」「イギリス型」「アメリカ型」しか存在していなかった鉄道模型の世界に、新しいジャンルとして世界規模に展開される可能性を秘めていることだけは、自負していいと確信しております。

これから、海外通販を通じて、その可能性をより広げる一躍を担えればと私と先代は考えております。

以上、長文となりましたが、こちらの自己紹介は一通りできたかと思います。

次からは、私たち親子が鉄道模型について見聞きしてきたこと、新しく知ったことをこちらに投稿していければと思いますので、お付き合いいただければと思います。

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