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Mircrosoftのアクティビジョン買収に関して(Sonyの未来とサブスクリプション)

さて、ニュース。
https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20220118082/

 ニュースの大きさに対していまさら書くのかよ感のあるニュースであるが、内容的に意外と深堀がされていないという印象があったので記事化しときたいなという感想で書いている。

 自分の感想は相当ソニーがまずくなった、という印象だ。ただ、それは独占タイトルが・・・・とかの話ではない。そもそも、ここ数年、Mcirosoft/Tencent/Sonyの3社は、チャンスがあればとりあえず買うというくらいの勢いでゲーム会社を買っており、そういう意味ではこのニュースもサイズが大きいだけである。だが、

1.クリエイターの価値の向上と、プラットフォーマの権威の衰退
2.コンソールゲーム市場とPC市場の関係性


 
という、この話を語るべきで知っておかなければならない背景というのが、意外と知られれていないのではないか。と思ったので今回はそれを書きたいと思う。 

① クリエイターの価値の向上と、プラットフォーマの権威の衰退

 まずは一つ目。そもそも大きな流れとして、ゲームを作れる人への投資が相対的に増しているという事実がある。理由はいくつかあるが主なところでは以下。

i ) ゲーム開発エンジンの汎用化(Unity, Unreal Engine の存在)
ii) デジタル化による流通の容易化
iii) デジタル世界の拡大
iv) 販売ノウハウの陳腐化

 ゲーム開発エンジンの汎用化(Unity, Unreal Engine の存在)が、クリエイターの企業間の移動を容易にしたという話。今から20年前はそもそもゲームを開発するために必要な開発ツールを独自に開発し、各ゲーム会社の社員は各社独自のノウハウをベースに仕事をしてきた。S社だったらS社のツールのS社ノウハウ、T社ならT社ツールのT社ノウハウ。こういった感じで他社に移動すればツールの再勉強が必要で、クリエイターの移動が難しかった時代があったといえる。
 ところが、共通の開発ツール(Unity, Unreal Engine)が誕生して、ノウハウが各社依存ではなくなった。つまり転職が簡単にできるようになり、クリエイターの能力の優劣が分かりやすくなった=クリエイターがPriceless(値段をつけられない)な時代から値段を付けられる世界になったという動きがある。

 次にデジタル化による流通の容易化。これはSteamとパッケージゲームの2つを比較した際に、明らかに物理流通に依存している方(パッケージ流通)が難易度が高いという話で、デジタルが広まると流通は容易になるよって話。コンビニに商品を並べてもらうよりも、メルカリに並べてもらう方が簡単なことは誰でもわかる。物理の商品棚よりデジタルの商品棚のほうが純粋に広いのは明らかだ。
 
 デジタル世界の拡大
も明らかで、20年前と比較するとインターネットに接続している人は明らかに増えた。デジタル機器が増大した。これは先進国よりも後進国と呼ばれる国の方が影響は大きい。増えるとどうなるだろうか?デジタルの影響力が増す=相対的にフィジカルの影響力が落ちる。ii)の現象がより深刻になる。シンプルだ。
 
 販売ノウハウの陳腐化も割愛。世界の裏側のニュースなどを簡単に知るようにできるようになったように、情報の伝達速度が明らかにあがったのはもはや言うまでもない。そうなるとどうなるだろうか。ある特異的なビジネスの成功事例が多くの人に研究されやすくなる=つまりノウハウが陳腐化しやすくなる。

 これらの現象をまとめると結論から出てくることは、ゲーム制作における最大の難点が、流通からゲームを制作することへの移り変わってきたことといえる。そして、流通を抑えてきた人=プラットフォーマーの力が弱まり、制作サイド=パブリッシャーの力が強まってきた。ということだ。これを象徴する事件が、Epic vs Appleの手数料裁判であり、フォートナイトのクロスプレイ告発事件だったりするわけである。

 それではそれに対して、プラットフォーマーはどうするべきであろうか?答えは単純で、自社にとりこんでしまえばいい。そして、これこそが最近の買収の動きの根底にあるものである。
 プラットフォーマにとって他社の買収は死活問題である。上記の問題は一過性のものではなく長期にわたっているトレンドで、
自社のパワーが落ちてきている中で、買収をしないこと=死なのである。

 なお、個人的な意見としては、テンセントだけはプラットフォーマーとしての動きというよりは、投資対象としてクリエイターを買いあさっている印象がある。これは中国のゲーム規制の問題と絡んでいて、簡単に言えば国内への投資ができないので国外に投資をしようとする動きである。

② コンソール機とPCの境界線の曖昧化、そしてブランドをどう継承していくのか

 さて、①だけであるならば、まだパワーバランスの話で済む話だ。パワーバランスが傾きすぎると独占禁止法が登場するのは世の常である。

 
ところが、もう一個ソニーにとって都合の悪い事象がある。そもそもPCがあるのにコンソール機は必要か?という問題だ。これは、ここ20年においてはコンソール機の方が優位性があったという答えになる。
 
 元々ゲームはPCで開発されているのだから、PCゲームを作る方がよっぽど自然だ。ではなぜPCゲームは家庭用ゲームの隅に追いやられた存在であったのだろうか?答えは海賊版だ。2000年代~2010年代頭にかけて、PCゲームは絶滅しかかっていた。 
 
 海賊版問題については、結果だけ述べると、Steamがほぼ海賊版を駆逐したと言っていい。なぜ駆逐できたのかこれも色々と諸説あるが、大きな意味ではライブラリ機能であると言われている。
 
 ライブラリ機能とは何かというと、基本的には2つの要素で構成される。1 遊びたいと思ったゲームを検索したら見つかる機能
2 ゲームを推奨してくれる機能だ(流行なども含めて)

 特に2つ目の機能は、ゲームに詳しくない大多数の人間には影響が大きく、これはゲームより海賊版がひどかった音楽シーンにおいてSpotifyが広がった理由でもある。

 話をもどそう。大事なことは、PC市場が復活したことだ。その他にもPC市場がコンソール市場よりも優位である理由(SonyのCPU撤退、TVの衰退(ライフスタイルの変化)、映像美の限界)はいくつかあるが、このままだとコンソール市場は消滅する可能性が高いというのが結論になる(PS6,Xbox ??? は果たして発売されるのか?)
 なお、コンソールの強みとして、チートに強いという強みがある。可能性は低いがPUBGが衰退したようにチートの影響力は馬鹿にならないので、その方向性から今後も継続する可能性はあるが、恐らく厳しいだろう。

 ハードが衰退した場合、SonyやMicrosoftが取るべき手段は何であろうか。そもそもSonyもMicrosoftもハード自体は赤字で、それ自体で儲けたいというわけでもないである。それでも生産する理由はPlayStation、Xboxがゲームの代表格という評判=ブランドである。つまり、大事なのはどうやってハードなくてもブランドを維持していくべきか。それこそがSonyとMicrosoftの課題である。

 そして、それは既に用意されている。それはライブラリ機能であり、つまるところ、サブスクリプションサービスになるのである。 

 
さて、ここから現状分析となる、残念な話であるが、Xbox Pass と PlayStation Plus を比較したらどうなるだろうか?実は既にユーザ数ですらXbox Passが上なのである。

ダウンロード (9)

※Red Dead Redemption 2 MAUs (Xbox and PlayStation)  New Zoo出展
 
 これ以外にもXbox Passの方がMAUが多いだろうという補佐するデータは色々があるが、探すのがめんどくさいので割愛する。なお、サービスとしてもXboxの方が良いと個人的にも思う。

 2022年1月21日にフィル・スペンサーがCall of DutyシリーズをPSフォーマットで出すことを述べたが、これが意味するのはなにだろうか。PlayStationで出すか出さないか、そんなことは彼にとってどうでもいいことなのだろうと自分は考えている。

 果たしてソニーは大丈夫なのか?不安があるとしか言いようがない。  
 
※なお、個人的な見解として、そもそも独占禁止法云々は筋違いだと考えている。なぜならPCでも販売する可能性が高いからだ。

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