少女

新宿方丈記・13「小憎らしい」

おそらく世の中のほとんどの人形にとって、「かわいい」というのは最高の褒め言葉だと思う。私も人様が作る「かわいい」人形は大好きだ。しかし自分がつくる人形においては、どうしても「かわいい」とか「愛らしい」とかいう形容詞がつくのは苦手である。正面向いて屈託無くにっこり笑った人形が作れないのだ。単に私が捻くれまくっているだけなのだと思うが、いわゆる正統派の「かわいい」がどうしてもダメ。不服そうに何か言いたげな表情とか、寂しげにうっすら微笑んでいるとか、その辺りが好きで、私には「かわいい」人形は作れないし作りたくもない、と宣言してしまおうと思う。それでも人形なんて見る人の主観でどうにでも見える。無愛想な私の人形をかわいいと思う人が存在するのも確かだ。まあ「かわいい」というのは非常に便利な言葉なので、挨拶みたいな褒め言葉だと思って気にしないことにはしている。

今回製作中なのは、初めての日本髪の少女の人形。日本的な顔立ちで、初々しくて、芯が強くて、と目指すところを書き出していくうち、どうにも気に入らなくて、1日かけて顔の大手術と相成ってしまった。足りないのは「小憎らしさ」。だから何?みたいなふてぶてしさ。それが全開じゃなくて、滲み出てくるようなさじ加減が難しいし、楽しいのだけれど。ほどよく小憎らしくはなったので、一応満足して今日の作業は終わりにする。外は冬が戻ってきたような冷たい雨。さして暖かくもない部屋で、インスタントコーヒーにアイリッシュウイスキーを足した、適当なアイリッシュコーヒーを飲んでいる。雨音しか聞こえない部屋の中、夜が深まっていく。




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