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最終回 国産対艦誘導弾の歴史をざっくり追おうの会


今回は第一回第二回で追いきれなかった国産対艦誘導について見ていこうと思います。(その他で括ってごめんね)

国産対艦誘導弾の系譜(筆者調べ)

ASM-3

XASM-3(Wikimedia Commons)より引用

特徴的なミサイル

ASM-3の特徴は何といってもその速度です。推進方法としてラムジェットエンジンを採用し、国産対艦誘導弾として初めて音速を超える速度で飛翔することを前提とした誘導弾となっています。
さらに、終末誘導の方式として初めてパッシブレーダー方式を併用しています。様々な新機軸を採用し、現代の防空機能を突破しうる新たな対艦誘導弾を目指して開発されたミサイルです。

紆余曲折

新空対艦誘導弾(XASM-3)の事業は平成22年に本試作が開始平成28年に試験完了というスケジュールの予定でした。しかし、ご存じの通り現時点でASM-3は装備化されていません。
ASM-3は装備化に至らず、最新艦艇の防空能力に適合したASM-3(改)が開発されることとなりました。こちらは現在も開発中ですが、令和5年度予算にてASM-3A(改ではない)の調達予算が計上されました。ASM-3AはASM-3(改)の研究結果を一部流用し、射程を延長させたものとなります。

国産且つ戦闘機で運用できる見通しが立っている超音速対艦ミサイルはASM-3しか無いのが現状です。艦艇の防空能力強化が著しい中、ASM-3もまた将来に渡って運用されるものと思います。

潜水艦発射型誘導弾


令和4年度 政策評価書(事前の事業評価)より引用

潜水艦発射型誘導弾については現時点でかなり情報が少ない誘導弾の一つです。政策評価書の中では魚雷発射管からの水平発射方式が前提であると述べられているのでサイズ等に大きな制限が加えられるものと思われます。

報道等で潜水艦へのVLS、12SSM-ER、島嶼防衛用高速滑空弾の搭載などが噂された時期もあり、「潜水艦にどのような誘導弾を搭載するのか」自体、いまだ不明な部分も多いです。

本事業は令和5年にスタートし令和9年に完了する予定となっています。12SSM-ERのダウンサイズバージョン説や17式SSM派生型説など様々な意見がありますが、どれも決定的とは言えないでしょう。

番外編 目標観測弾

令和4年度 政策評価書(事前の事業評価)より引用

正確には誘導弾ではなく偵察用UAVでしょうが、国産対艦ミサイルと深く関わりがある装備品なので紹介しておきます。
目標観測弾は海上および地上の目標情報を収集するための装備です。12SSM-ERまたは新対艦誘導弾をもとに作成されることとなっています。この装備は陸上自衛隊の野戦特科に装備されるため、地上発射型の装備品となります。
対艦ミサイルの弾頭を情報収集用のユニットに変更し、翼を大型化した装備となる予定です。誘導弾と共通化させることで、誘導弾と同じ生存性を獲得し、運用・開発におけるコスト圧縮が見込めます。
誘導弾の長射程化に伴ったISRT機能強化のため、重要な装備品となるでしょう。

おわりに

三回にわたって国産対艦ミサイルについて駆け足で紹介してきました。今回紹介したほかにも極超音速誘導弾の研究や島嶼防衛用高速滑空弾、JSMやJASSM-ERといった海外製対地・対艦誘導弾の調達が防衛省の予算で実施されています。今後の防衛政策上重要な装備となる対艦・対地ミサイルには様々な意見・議論が投げかけられています。正しい知識に基づいた有意義な議論が展開されることを祈っています。

おまけ
防衛省・自衛隊:令和4年度 事前の事業評価 評価書一覧 (mod.go.jp)
防衛省・自衛隊:「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」 (mod.go.jp)
防衛装備庁 : 研究開発ビジョンについて (mod.go.jp)
誘導武器の開発・調達の現状


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