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戦車走ってた!

「戦車いた!」「戦車走ってた!」

イベントに出展する機動戦闘車(MCV)

ミリタリー好きの人たちの間では鉄板となりつつあるネタだが、なぜこのようなネタが出来上がったのかを考えると、機動戦闘車導入によって得られたメリットが見えてくる。

ミリタリーや自衛隊のことを知らない人が「機動戦闘車」という言葉を知らないのは当然のこと。高速道路やサービスエリアなどで機動戦闘車を見かけたら「戦車がいた」とツイートするのは自然なことだろう。

それに対し、突然現れたマニアが「これは機動戦闘車といって、戦車とは違って・・・」と求められてもいな講釈を垂れるのは無粋と言わざるを得ない。

こういった「迷惑なマニア」を揶揄するように「明らかに戦車と機動戦闘車を見分けられる人」があえて機動戦闘車の画像とともに「戦車いた」とツイートする事例が増えてきた。さらにそのリプライ欄で分かっている者同士が突っ込みしあうのも、テンプレとなっている。

過度に機動戦闘車と戦車を区別し、全く別物として扱う考え方へのアンチテーゼとして敢えて機動戦闘車を「戦車」と呼ぶ方もいるが、そこは置いておく。


広報とMCVの関係という視点

前提として、機動戦闘車(MCV)はタイヤで走行し、一般道や高速道路さえも自走することが可能である。また、従来の戦車のように大口径砲と砲塔を搭載し、インパクトのある装備品となっている。

従来の戦車は自走して高速道路を走ることはしてこなかったし、陸路を長距離機動させることは少なかった。
自衛隊の戦略の変化とそれに合わせた装備の導入により、「自衛隊装備品の名前を覚えていない普通の市民」が「インパクトのある装備」と出会う機会が格段に増えたといえよう。

また、駐屯地祭以外のイベントに機動戦闘車が登場することも多い。様々なイベントの自衛隊ブースには高機動車や軽装甲機動車、偵察オートなどが置かれることが多かったが、最近は展示の目玉として機動戦闘車が一緒に置かれることも多い。

高機動車には「気軽に車両に乗ってもらえる」と言う広報上のメリットもある


従来のトレーラー移動が必須だった戦車ではここまで気軽にイベントに展示することは難しかっただろう。

明らかに「兵器」だとわかり、ついSNSに投稿したくなる装備品が日常生活の中に現れやすくなると言う現象はMCV導入以降明らかに増加している。これは自衛隊の国防組織としての側面を直接的・間接的に広報しているとも言える。

もう一歩踏み込むと、同じ事が有事にも起きると思われる。有事の際は高速道路を車列を組んで移動するMCVが各地で目撃されることになるだろう。もちろん、OSINT対策等で様々な秘匿作業は行われる可能性もあるが。
実際、2021年の陸上自衛隊演習の際は高速道路を移動したりサービスエリアで休憩するMCVの様子が多くツイートされていた。

MCVの活動は「緊張が高まっている」「何かあった」そう言った社会情勢やそれに対応する自衛隊の活動を示す象徴となりうるだろう。


MCVは自衛隊の活動の象徴となりうる

MCVが持つ自走できると言う特性は、結果的に平時・有事共に自衛隊の活動を広く市民に広報する事ができると言う副産物を生み出した。

MCV導入のメリットとして
・調達、維持コストが安い
・戦略機動性が高まった
と言う点がよく挙げられるが、「自衛隊広報の顔となりうる」という点もMCV導入のメリットとして挙げられるのでは無いだろうか。

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