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初めてのガン/大腸癌その2

人体実験というと大袈裟ですが、、、

家のすぐ近くに中核病院があるのは知っていましたが、私はそこへは行かずに敢えて、同じ地域内にある小さな病院を探すことにしました。いわゆる『かかりつけ医』的な病院です。紹介状もなく、いきなり大きな病院に行って、安いとは言えない初診料を払い、結構待たされて、たまたまその日担当の外来の先生に診てもらい『おばあちゃん、風邪ですね、薬出しときましょ。』みたいな話を聞いたことがあります。当時の私の症状では即入院で大きな手術になるだろうと素人ながら思っていたので、直接、中核病院に行ってもよかったのですが、『地域医療連携』というものをどうせなら私の身体でちょっと試してみようと思ったのです。小さな病院がここでは治療できないと判断した患者をどんな病院にバトンタッチするのか、私はHPを見てとりあえず、内視鏡カメラがある病院、誠実そうな病院、信頼できそうな病院、怖くなさそうな先生の病院など、独断と偏見で選び、近くの胃腸肛門科のクリニックに決めました。

よし、病院へ行こう! 

病院の待合室にいきなり大腸のポスターが目に入りました。大きな腫瘍が大腸を塞いでいました。私もこんな風になっているのかなと怯えつつ、問診表を書きました。さほど待つこともなく、診察室に呼ばれました。感じのいい40代の先生とベテラン風の優しそうな看護師さんがいました。先生から問診と診察ベッドに横になっての指診で、診察はすぐに終わりました。『えッ!これでもう終わり!?』と思っていたら先生から「午前中にちょっとした手術があるので、午後からまた来てもらえますか、内視鏡カメラで診たいので時間はありますか?」と言われました。その日私は、午後から大事な仕事が入っていたので、「夕方前になりますが、、、」「待ってます。」ということで、私は病院を出ました。

初めての内視鏡カメラ

午後の仕事を済まして、私はまたその病院に戻りました。待合室には患者さんは誰もいなく、病院は私を待っていたかのようでした。ベテラン風の優しい看護師さんに促され診察室に入りました。先生から「普通なら2リットルの下剤を飲んで腸をキレイにしてからカメラを入れるんですが、多分下剤を飲むともどしてしまうか、腸が破裂するかもしれません。いきなりカメラを入れます。」と言われ、すぐに診察ベッドに寝かされてズボンを下ろし、パンツも下ろし、恐怖と羞恥の私にベテラン風の優しい看護師さんはにっこり笑顔で、私の腰にタオルをかけてくれました。まずは触診でした。指を肛門に入れられました。思わず私は変な声を出してしまいました。直腸を調べたんだと思います。看護師さんは、笑顔で私の肩をさすってくれました。そして次にカメラが入ってきました。先生が「モニターを観れますか?」と言われましたが、私はさっきよりももっと変な声を出し続けて、残念ながらモニターを観る余裕はありませんでした。「おかしいなぁ、あるはずなんだけど・・・」と先生の呟きが聞こえました。「大丈夫ですか、もうすぐ終わりますからね、我慢してください、もうすぐですから。」と先生は私に言いながらカメラは奥に入っていく気がしました。「あった!やっぱりあった!モニター見れますか!」先生の声にびっくりし、私は頑張ってモニターを観ました。確かにありました!病院の待合室のあの大腸がんのポスターとまったく同じ、大きな腫瘍らしきものがドンと腸を塞いでいました。生体検査に出すため細胞を採り、内視鏡カメラの検査は終わりました。もう恐怖心はありませんでしたが、羞恥心が多少残りました。

病院紹介

先生は〈ガン〉とは言いませんでした。生体検査の結果が一週間程かかると言われましたが、すぐに入院しなければいけないと言われ、3つの中核病院を挙げました。私はその中から、自宅から近い病院を選びました。すると先生自ら、その場でその病院に電話され、「○○先生お願いします」と先生を名指し、私に「明日、行けますか?」私「明後日なら行けます。」と応え、トントントンと先生が予約を取ってくれました。その間、ベテラン看護師は、片づけながらずっと優しい笑顔でした。画像とカルテと紹介状を持って自宅に帰りました。恐怖と羞恥の一日のあらましを妻に告白しました。

次回、入院・治療のお話を

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