見出し画像

読了「現代思想入門」千葉雅也 講談社現代新書

今年読んだ本の中でBEST5にいれた。ありがとう、千葉さん。

すでにメジャーでしかない一冊。正直SNSでも拝見して「ふーん」という感じで気にも留めなかった。たまたまオーディブルで無料だから聞いたのがきっかけ。

耳から聞いても掴みが上手いし、根底にほのぼのとした光を感じる。それは、多分後書きで拝見した筆者の「飽和」を外部化する際に意図されたオーラであり、「諦め」とは「明らかにする」ということそのもの、たくさんの方々にあかりを灯せる哲学を知って欲しかったのだなあ、と。明るすぎるのでもなく、今夜の晩酌と肴が美味しく見えるような、ちょうどいい明るさを。

個人的にこの長い数年の悲喜交々の形を変えようとした夜にわざわざ本を求めて読み直した。

耳で聞くのとはまた違う文字の踊り方があった。

哲学は若い頃、まったく身に染まなかった。
ロラン=バルト が好きだったくらいで(哲学者と厳密に言っていいのか、個人的にはためらう)
90年代の、フランス文学科の隅で落ちこぼれた自分にとっては遅れてきた青春である。

また、私が同じ世代であるがゆえに感じるのは、実体験が伴ったからこそ「哲学はこんなに現実を回せるのか…!」という実感だ。十九の時に読んでいたとしても私自身の幼さから、何も理解できなかったと思う。書籍内に示されていたいくつかの参考入門書を読んでみようと思った。本来は若い方向けに書かれた本であろうが、私にとっては避けてきた世界のこと、逆に今、知ることができてよかった。なんとはなく、勝手に誤解していて仲違いした友達とばったりと出会ってお茶ができたみたいな嬉しさが心に満ちている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?