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虎の子日記    熊本ロマン飛行②

熊本に旅行に行ったがケータイが壊れて宿の名前も連絡先もわからずメモを取ってこなかった自分を力いっぱい責めたお話の続き。

ケータイが壊れた!電話すらかけれない。今日泊る宿の連絡先も、地図も消えてしまった!どうしよう・・・
こうなったら明るいうちに意地でもたどり着かねば野宿!(んなアホな)
熊本城を観光なんてしている場合ではない。

まてよ、そういえば25年ほど前にフーテンの一人旅をしたときには、車のナビはもちろん、ケータイは電話以外の機能はついてなかったぞ?
当時の私はどうやって目的地にたどり着いていた?

幸い、市電の降りる電停だけは覚えていた。たしか「呉服町」だったはず。
そしてチンチン電車に飛び乗り、めざせ呉服町!ああ神様どうか辿りつけますように。

呉服町で降りたはいいが、普通ならここで地図アプリを開いてナビで探すところ、ケータイは依然フリーズ。
よし、と電停前の時計屋さんに飛び込んだ。
白髪の紳士に道をきく。あ、宿の名前、覚えてない・・・
「たしか”中”なんとかという名前なんですが、染め物の、女性専用の宿・・」
紳士はああ・・とあたりをつけてくれ、町地図を持ってきてくれた。
「今いるのここね。たぶんだけど探してるのこの辺だと思うよ。」
と紳士が指さしたところは紙からはみでていた。
この地図にのっとらんのかーい!
しかし、唯一の手掛かり。行けるとこまで行ってみよう。

かれこれ歩く事、道行く人に尋ねる事30分。
着いた!ここだ!
なんだ、ケータイなんか無くてもちゃんと辿り着いたじゃん♪
私ってばすごーい、と安堵感から店先で心の声が隠し切れない。

染め物と宿の中島屋

一泊3000円ほどの素泊まりの宿だし、と期待はしていなかったが、女性専用とあって、インテリアやトイレ風呂の共用部分まで、おかみさんの心遣いが行き届いている。今日はすいているから、と無料で部屋のグレードアップまでしていただき、屋上テラスから熊本城を眺めながら、あービール買ってくれば良かったあ~などと、先ほどまで迷子だったことは無かった事のように女子旅名人を気取った。

さてお楽しみの地元メシ♪ やっぱり熊本に来たからには馬刺しが食べたい!いや、絶対食べる!
ケータイが無くてググれなかったが、ここは持ち前の野生の勘で、大人女子一人で入れて、びっくりするほど高くなく、でも味と雰囲気は良い店アンテナを張る。
お、生け簀発見。ということは絶対魚は美味しいはず。はて、馬刺しはあるか?とうろうろしているところへ「いかがですか?魚うまいですよ」とウド鈴木似のお兄さん。馬刺しがあることを確認し、店内へ。
当たり当たり、大当たり♪
味よし、雰囲気よし、もてなしよし。
馬刺しとビールと松茸土瓶蒸しをいただき、上機嫌で店をあとにする。

すると一人の外国人の女性に腕を掴まれた。
スカーフを頭に巻いて籠を持ち、さながらマッチ売りの少女アジア版のよう。日本語で書いたカードを見せられ、「お金、ない。お菓子買ってください。」とカタコトで言うのだ。
籠の中には何語かわからない言葉で書いた、チョコレートやクッキーが入っている。ナッツやポテチなら考えるが私は甘い物は買ってまでは食べない。
断ろうとしたが、彼女は人間観察に長けているのだろう、この酔っ払いなら落とせる、とふんだのか、まんまと500円で買う羽目になった。

ま、いいか。少しだけど人助けになったかもしれない。
去り行く私に彼女が言った。
「貴女に良いことがありますように。」
心なしかさっきより日本語が流暢だった気がした。

ボーイズよ、困難に備えて野生の勘は鍛えておこう。

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