消したくない黒歴史。
今思えば恥ずかしくなる思い出、いわゆる黒歴史。
過去をどんどん忘却し、都合よく記憶から抹消していくわたしにも、一つや二つ…どころではなくいくつもある。
まったくため息ものだ。
しかし、その中で一つだけ、決して忘れたくない黒歴史がある。
「それって黒歴史と言わないのでは…」とも思うが、やはりちょっと痛々しい感じがするその思い出は、間違いなく黒歴史だろう。
今から10年以上前(!!←そんなに前かと自分で書いておきながら驚いた)わたしは宝塚歌劇にどっぷりはまっており、正真正銘のヅカヲタだった。
中でも某男役さんをご贔屓にしており、それは熱心にムラへ、ときには東宝へ足を運んだ。(※ここは北国。)
今ほど若いファンが多くなかった時代である。
ご贔屓にも、他のファンのお姉さま方にも、そして仲の良かった年上のお友達にも、たいそう可愛がってもらった。
はじめはご贔屓の歌に惚れてファンになったが、ファンを続けるうちに優しくて聡明なお人柄にも惚れこんだ。
わたしの方が3歳年下だったこともあり、他の人がおらず2人で話すときはいつもよりフランクに会話してくれた。
(※すでにご卒業されているので、すみれコードにはかからないと判断する。)
彼女がくれるポジティブな言葉にたくさん勇気をもらったし、小さな思いやりが心の支えになった。
だからいつの間にか、わたしにとって彼女はお姉ちゃんのような存在になっていた。
もちろん心の中でだけれど。
そんなわけで、大好きなご贔屓に関係する時間はすべて超特別。
形ないその時間をどうにかして残しておきたかったのだろう。
公演やお稽古の入り待ち出待ち、お茶飲み会にて、彼女とどんな会話をしたとか、どんな言葉をかけてもらっただとか、どんな気持ちでお手紙を作ったかだとか、どんな反応をしてくれたかだとか…当時のわたしが書き留めた、あまりに長文のWordファイルがわたしのPCに入っている。
どの一瞬もあまりに尊くて、絶対に忘れたくない!という強い気迫を感じるその文章は、何度読み返してもちょっと痛々しくて、ちょっとイカれていて、どこからどう見ても黒歴史なのだけれど、読むたびにあの頃を色鮮やかに思い出させてくれる。
何よりも過去のわたしの「すごく幸せ!!ご贔屓が大好き!!」という気持ちが強烈に伝わってきて、すっかり幸せな気持ちになってしまうのだ。
詳細はわたしの中だけに留めておきたいから、ここに書き記すことはしないけれど、あの黒歴史ほど苦しくて幸せで鮮やかな思い出はないかもしれない。
あの頃のわたしへ。
すさまじい熱量で、記憶の隅々まで書き残してくれてありがとう。
おかげで10年以上たった今も、あなたが望んだようにどの一瞬も忘れずに覚えているよ。
思い出は美化されるというのは本当だと思う。
時間によって磨かれたこの黒歴史は今、ダイヤモンドになってわたしの記憶に残り続けている。
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