あの日倒した鼻の名前を僕はまだ覚えている
コロナ禍が発生してからどのくらいの月日が経っただろうか。
もう随分と長いこと閉じ籠もっている気もするし、ここまで瞬く間の光陰であった気もする。
ともかく、世は混沌を極め戦後最大か、少なくとも2番目に大きな人類の危機がやってきているのは間違いなさそうだ。
さすがにずっと引き篭もっているのは体に悪い、という理由でもないが、とにかく買い物や何やらと生活に必要な外出を余儀なくされた。
外は実にのどかであった。
ひさかたの 光のどけき春の日に いづくあまたの コロナ散るらん
春というには遅い時期であるが、その割には体感気温が随分と低く感じる。
燦々と太陽が照りつける中、公園やスーパーは人でごった返しており、一見なんの変哲もない休日に見えなくもない。
しかしマスク率は9割を超え、スーパーは感染対策に消毒用アルコールと手袋、それにレジ隔離シートを垂らしてそこそこ厳重と言えなくもない警戒はしているようだ。
本当はAUTOMATIC TELLER MACHINEでお金をおろす予定であったが、三密を避けてとりあえず後日に回すこととし、もう一つの予定であったコーラのボトルを手に入れ書斎へ。
今後の見通しを考える。
身近に感染者が出たという話を全く聞かず、周辺住民の意識の緩さは仕方がないにしても、これは収束するものなのかそれとも日和見感染症となって共存するものなのか全く見当が付かない。
アメリカはこの災いを中国のせいにしようと躍起になっており、それが調査で断定された場合どういう行動に出るか予想がつかない。
仕事はなくなり、このまま生活が立ち行かなくなれば自分で自分を吊るすという選択肢もありうる。
先行き不透明どころか、深淵が口を開けて待っているのが誰の目にも明らかではないだろうか。
ツイッターの混沌ぶりは見ていて楽しいかもしれないが、それは現実逃避にほかならない。
だから忘れよう。
飲んで忘れよう。
酒ッ!飲まずにはいられないッ!
ジャックダニエルを先程のペプシで割って安く酔う。
今はそれが精一杯。
世の中の変化は明確だ。
オンライン化。
会議は踊る。ZOOMで踊る。ネットで踊る。平野綾も踊る。
教育はオンラインが当たり前になる。全ての高校生がN高校ゼロ高校生徒になる。物理的な学校はなくなる。
準BI化。
全ての国民に最低限の生活補助金が出る。出てほしい。でなければせめて安楽死させてくれ。
コロナによって強制的に引き起こされた先進化だ。
見ようによっては戦争で技術革新が起こるのと大差ない。
こうやって歴史の一端を垣間見たところで、僕は満足して眠りに就くのだ。
おわり。
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