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曽野綾子 人間らしさ

だから

人間は、

卑怯を自認しつつ正義を行いうるものであり、

間違いつつ正しさを模索しうるものであり、

受けながら与えることもできるもの

なのである。

人間は複雑なので

正反対の事柄の心情が

同時に成立するのだ。

最初からためらいがない人、
心が揺らがない人、
前言を取り消さない人、

だからこそ

その正反対の事柄の心情の揺らぎが

始めからない人というのは

人間の複雑な存在から離れているので

むしろ

異常だというのだ。


しかし

この複雑な感覚を言うことで

社会からはじかれる要素となる。


異常な社会であるので

理解されないことが多くある。

というのは

だから

人間としては

むしろ異常だ

ということを私は知ったのである。
その緩やかな時の流れを

認められない人は、
つまり、
人間らしくない、
と言ってもいいのかもしれない。

人間とは

複雑な揺らぎがあって当然であるというのだ。

むしろ

揺らぎがあることが人間なのだ。


単純化することで理解しようとするので

複雑さは

理解に苦しむ。


ならば

複雑であるということをそのまま認め合う。


だってそれが

人間だもの。

『悲しくて明るい場所』

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