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雑記:鉄道会社での仕事について【就職・就活】

鉄道会社での仕事がどのようなものなのか、待遇などについても述べていきます。新卒就活・転職を考えている方の参考になればと思います。私は総合職採用ですが、非総合職採用についても触れていきます。あまり大きな声で言えない内容は有料記事にして隠しています。ご理解ください。
ご質問などは質問箱へ→ https://peing.net/ja/b64441ef65a735

筆者の情報

  • 会社:大手私鉄(関東)

  • 採用:新卒 総合職(技術) 入社10年程度

  • 経歴:駅→乗務→現場(電気)→本社(電気)

業界雑感

まず業界の構造についてざっくりとまとめると、国土交通省がトップにあり、国交省系の組織である地方運輸局が各エリアの鉄道会社を監督しています。また鉄道会社にもカテゴリー分けがあります(下図参照)。

鉄道業界の構造(筆者作成)

各社に序列はありませんが、事業規模・技術力・売上高などに基づく影響力の強さという意味では、JRでは東・東海・西、私鉄では東急・近鉄が代表的位置にいる感覚です。コロナ禍を受けて鉄道全社が収益減の大打撃を受けましたが、結局もともと強い会社の方が切れるカードが多いため、既存事業改革・新規事業開発においてはトップとボトムの差が開いてしまった感じがします。特に地方中小が置かれる環境は非常に厳しく、人・モノ・カネの全てが足りない状況です。そんな中でも災害に見舞われたり設備故障で事故が起こるなど追い打ち事象が発生し、廃線論議がされるまでの事態に発展している企業もあります。

同じ鉄道業界でも各社の戦略は様々です。JR東海は営業収益の6割以上が東海道新幹線の運輸収入です。また東京メトロは営業利益の9割が運輸収入です。逆にJR九州は運輸収入は3割程度、残りは不動産や流通で稼いでいます。銚子電鉄は物販を頑張りすぎて帝国データバンクから「米菓製造業」と区分されているなんて話もあります。人口減少やリモートワーク普及によって運輸収入は減少傾向ですので、今後は各社関連事業に積極的に取り組んでいくことになると考えられます。

業務内容

▶駅関係

駅員として駅勤務するパターンと、本社系オフィスで事務仕事をするパターンがあります。

  • 現場系(駅)
    駅員として出改札・ホーム整理・旅客対応などを担当します。基本的には時間ごとに決められた人員配置計画表があり、それに従って「○~×時は改札・×~△はホーム整理」というように仕事をすることになります。

  • 本社系
    オフィスにおいて駅に関連する事務業務を担当します。運輸収入事務が適切に行われたかのチェック・企画乗車券作成などの旅客誘致施策立案・駅構内工事調整などの仕事があります。

▶乗務関係

乗務員として乗務するパターン・オフィス等で内勤するパターン・指令員として指令所勤務するパターンがあります。

  • 現場系(乗務員)
    乗務員(車掌・運転士)として列車に乗務し、運転取扱いを担当します。何時にどの列車を担当するかが決められておりそれに従って勤務しますが、ダイヤ乱れ時にはイレギュラー対応を求められます。また人身事故など発生時には対処しなければなりません。

  • 本社系
    運転事務室・オフィスにおいて運転関係事務を担当します。ダイヤ乱れ時の乗務員運用調整・ダイヤ作成・乗務員養成計画作成・運転関係設備工事調整・昼夜の試運転計画調整などの仕事があります。

  • 指令所
    指令所において指令業務を担当します。運転指令・電力指令・施設指令など役割別に設けられています。通常運行の確認・ダイヤ乱れ時の運転整理・異常時対応の全体統括などをします。

▶技術関係

作業員として現場勤務するパターン・オフィス勤務するパターンがあります。

  • 現場系(作業員)
    技術作業員として設備保守・修繕・工事監理などを担当します。作業着を着て工具を持って昼夜の駅構内・線路内で作業をします。設備故障時には当該箇所に急行して対応します。

  • 本社系
    オフィスで保守・工事に関する計画・調整・設計・契約業務を担当します。大きな運転支障が発生する設備故障時には情報収集や取引先との調整などをする場合もあります。

▶関連事業系

飲食・ホテル・小売・不動産などの関連事業に関する業務を担当します。オフィスだけでなく店舗勤務になることもあります。駅構内・直結の施設もありますが、全く別のエリアで行われることもあります。グループ会社化しているところだと出向することもあります。

▶一般事務系

人事・経理・総務・法務などの一般事務を担当します。基本的に現場はなく全員オフィス勤務です。

▷業務具体例

工事関連業務がイメージしにくいかと思いますので、ホームドア設置工事(ホームドア→以下HD)を題材に説明します。
企画
2016年に国土交通省よりHD設置の必要性の判断基準として、「1日10万人以上が利用する駅についてHDを原則2020年度までに設置すること」という内容のお触れが出されました。これに基づき鉄道会社は自社駅の利用人数から整備対象駅を決定します。導入可否については議論の余地はありませんが、2020年までの大まかな工事時期や補助金活用などの資金面での調整がおこなわれます。

工事計画
どんなHDを・どの時期に・いくらかけて導入していくのかといった検討をします。HDにもハーフハイト・フルハイト・ロープ式など種類がありますので、路線・予算に合わせて選択します。また設置にはホーム自体の補強や車両改造(HDと車両ドアを連動させる場合)なども必要になるので、電気以外の部署との調整も必要です。すべての工事の工程作成・費用計算を行い、最終的な計画とします。

工事細部の設計、発注
HDの設置位置から配線ルート・電線の種類・接続する端子の番号などの細部まですべてを決めて図面を作成します。HD工事程の大規模工事であれば設計会社に外注することが多いです。鉄道会社としては、図面作成上必要な現場調査を行ったり、成果物の図面をチェックしたりします。詳細設計の結果費用の増減が見込まれる場合は、何らかの調整が発生することもあります。また工事に支障がありそうな既存設備などについても、移設などの対応をする場合があります。図面ができれば契約書類を作成し、工事施工会社に工事を発注します。

施工監理
工事が発注されると、施工会社が現場に入って施工を行います。発注段階ではまだ「何月何日何時にどこの駅で何をするか」までは決まっていないので、他工事・作業との兼ね合いを見て作業日を決めていきます。また搬入経路や作業当日の人員配置などについても都度調整します。作業日には監督員として現場に行くこともありますが、施工会社だけ現場に行き、作業後にチェックシートや写真を提出してもらう場合もあります。

試運転
HDは車両や信号と連動している場合もあり運行に直接関係する設備なので、試運転をします。運転・車両などと調整し、夜間に走行してHD開閉などの機能確認を実施します。機能確認の方法はメーカーなどと協力して手順書を作成します。すべてのチェックが完了したら工事完成検査を行い、供用開始です。

保守、管理、修理
HDは屋外に晒されたり旅客の破壊行為を受けるなどしてどんどんボロくなっていきます。それでも機能が保たれているか、修理が必要な状況ではないかなどを定期的にチェックし、必要な対応を取りながら使用していきます。営業時間帯に開閉しなくなったりした場合は現場に急行し、点検や対処を行います。

以下はまた更新のための企画・計画とループしていきます。

勤務形態

本社系はカレンダー通りの休みですが、現場系は休みは土日ではないことが多いです。ただし基本的に2日連続休みが毎週取れるような勤務構成になっています。なお祝日は関係なく、盆暮れ正月も普通に出勤です。

▶本社・オフィス系

基本的にはよくある9-17時のような勤務形態です。たまに現場で設備を見に行ったりします。最近は各社テレワーク制度が整備され、在宅で仕事ができる日も増えています。

▶駅関連・現場系(駅)

宿泊勤務(8:30~翌8:30など)と日勤(8:30~17:00など)があり、月単位で勤務予定が設定されます。下記に週間予定例を示します。非番は1日フリーですが大体眠いので昼寝して終わりです。

▶乗務関係・現場系(乗務)

宿泊勤務(15:00~終車+翌始発など)と日勤(7:00~15:00など)があり、月単位で勤務予定が設定されます。下記に週間予定例を示します。出勤時間が毎日バラバラだったりするので不規則ではあります。

▶技術系

宿泊勤務(8:30~翌8:30など)と日勤(8:30~17:00など)があり、月単位で勤務予定が設定されます。出退勤時間は駅とほぼ同じですが、仮眠タイミングと夜間作業が違います。

キャリア

所属に関係なく係職→監督職→管理職と昇進していきます。総合職と非総合職は昇進スピードに差があります。下記に例を示します。総合職はジョブローテーションで部署間移動をすることも多いため、以下では主に非総合職のキャリアについて述べ、最後に総合職について述べます。

▶駅関係

係職として現場で駅員の経験を積み、途中で本社部署への異動なども経験しながら管理職を目指します。監督職以上はあまり客先に出ることはなく、駅事務室で各種事務作業をすることが多くなります。駅員は採用数が多いので管理職になる倍率が高いです。大半は監督職でキャリアを終えます。
また途中で乗務員になる人もいます。社内試験をクリアし養成課程を終えると乗務員になれますが、精神機能検査・身体機能検査で落ちることもあるので全員がなれるわけではありません。 

▶乗務関係

車掌・運転士として乗務し、途中で本社部署への異動なども経験しながら管理職を目指します。駅と同様に監督職は内勤になることが多くなります。人員配置の問題で特に問題が無くても駅配属される場合もあります。また定期的に行われる精神機能・身体機能検査をクリアできずに乗務できなくなる場合もあります。

▶技術系

現場作業員として勤務し、計画・設計部署なども経験しながら管理職を目指します。係職のうちはルーティンワークの点検などがメインで、年次が上がるにつれて工事調整などを担当するようになります。

▶関連事業系

鉄道以外の飲食・ホテル・小売・不動産などの現場からバックオフィスまでを幅広く経験しながら管理職を目指します。若手のうちは店舗に出ることもあります。また他社出向してそこの事業を学んで自社で展開するような流れもあり得ます。

▶事務系

人事・経理・総務・法務などの事務を経験して管理職を目指します。資格を取ったりして専門性を高めていき特化していくことが多いです。

▶総合職

将来的に管理職以上となって事業企画・経営に関する業務に携わる枠です。そのため1つの分野に詳しくなるというよりもマネジメント力が求められていく採用枠で、広く浅く会社を知るために部署異動が2年ごとくらいで行われます。とは言え電気系の人は電気系の現場・オフィスがメインで、事業企画や一般管理、他社出向も経験していきます。以前はゼネラリスト志向の採用枠でしたが、近年はポータブルスキルが重要視されるようになり、ゼネラリストでありながら得意分野を持つような人材像が求められ始めています。


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