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#007 シンガポールはなぜチャンギ国際空港に滝を作ったのか

こんにちは、社会科コンテンツクリエイターのモチオカです。

今日は、シンガポールのチャンギ国際空港にある、大迫力の人工の滝についてお話ししたいと思います。

2019年、チャンギ空港に「ジュエル」という巨大な複合施設がオープンしました。目玉となっているのが、ドーム型の建物の中央にある滝です。多くの方が、テレビやYouTubeで一度は目にしたことがあるかもしれません。この滝は、建物の最上部から水が流れ落ちてくるという、非常に印象的なもので、旅行者にとっても大きな魅力になっています。

でも、こんなにお金がかかりそうなものを、なぜ作ったんだろう?そんな疑問を感じませんか?今回は、その理由について考えてみました。

シンガポールがこの滝を作った理由の一つは、チャンギ国際空港をハブ空港として、より盤石な地位にしたかったからだと思います。

ハブ空港とは

ハブ空港というのは、他の空港から乗客や貨物を集めて、目的地に向かうための中継地点となる空港のことです。例えば、静岡空港からロサンゼルスに近いアメリカの小さな空港に直行便を飛ばすのは非効率です。静岡空港からアメリカの小さな空港に移動する需要が小さいからです。需要が小さい路線もすべて直行便で用意のはムダが多い。

それよりも、利用者が多くて様々な用途で使われる羽田空港とロサンゼルス空港を拠点空港に位置付け、拠点空港間で直行便で多く飛ばし、拠点空港からの小さな移動は別に用意した方が全体の路線数を少なくすることができて効率的です。

このような拠点空港のことをハブ空港と言います。シンガポールのチャンギ空港も、世界各地を結ぶ重要なハブ空港として機能しています。

ハブ空港のメリット

ハブ空港になると、人が集まり、経済効果が生まれます。空港内で消費活動が活発になり、観光やホテル宿泊にもつながり、国全体の経済に貢献します。また、大規模な国際会議やイベントも開催しやすくなるため、さらに多くの人々が集まるようになります。

シンガポールのライバル

しかし、シンガポールには強力なライバル空港が存在します。例えばバンコクのスワンナプーム空港。中東の空港は特に強力です。

中東の空港は地理的に非常に有利な位置にあります。オーストラリア大陸以外の4大陸に、12時間以内で到達できる絶好の位置にあります。さらに、オイルマネーによる豪華な施設や航空機のサービスも強みです。シンガポールはこれらの競争相手に対して、危機感を抱いていたのではないかと思います。

シンガポールのチャンギ空港は、ロンドンとシドニーを結ぶ中継地点として特に重要です。オーストラリアはもともとイギリスの植民地でしたから、今でもイギリスと関係が深い。ロンドンとシドニー間を移動する人が結構います。

ですが、ロンドンとシドニーはかなり離れているので、直行便を設定するのが困難でした。そこで一旦、シンガポールのチャンギ国際空港で降りて、別の飛行機に乗り換えてシドニーに向かうという方法が取られていました。

しかし、中継地点は別にシンガポールでなくてもいい。中東でもいいわけです。中東の空港(とエアライン)が急速に成長する中で、シンガポールがハブ空港としての地位を今後も維持できるか危機感を抱いたとしても不思議ではありません。

さらに、航空機の性能向上も、チャンギ空港にとっては脅威です。燃費が良くなり、長距離便が直接飛べるようになると、中継地点としての需要が減る可能性があるからです。

実際、オーストラリアの航空会社カンタス航空が、2025年末からロンドン・シドニー間の直行便を飛ばすことを計画しています。炭素繊維強化プラスチックを使った機体や、ロールス・ロイスの高性能なエンジンが登場し、長距離便が可能になったわけです。こうなると、ハブ空港の意義は薄れてしまいます。

そうした状況を見越して、シンガポールはもっと魅力的な空港にするため、あの巨大な滝を作ったのではないでしょうか。

ということで、今日は「なぜチャンギ国際空港に大迫力の人工の滝が作られたのか」についてお話ししました。次回は、ハブ空港になるために必要な他の要素や、日本の羽田空港や成田空港が今どんな状況なのかについて話したいと思います。


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