人生をやっていく
先週からトラブルが色々あって、自分の不注意というよりはこれは運、運が悪いとしか言いようがない、というようなことが続いている。気の流れみたいなのがもしあるとしたら、ここらでパーッと晴らしたほうが良いと思い、夫と買い物に行ってたくさんお金を使った。繕って使っていたリュックを良いものに買い換え、スーツ上下を買い、父の日のプレゼントを買い、お昼からイタリアンを食べてお酒を飲んだ。トラブルはまだ解決してないけど、気分はずいぶん晴れたし、これから解決していくぞという気持ちになれた。人生。
読んだ本。英国のラッパーによる自伝的社会批評。英国最貧困層での半生と、そこから見えた政治や社会システム。犯罪やアルコール・ドラッグ中毒から抜け出せない。教育制度が機能しない。そうして貧困はますます進む。そこには複雑なたくさんの要素が絡み合っていて、他者の介入も非常に難しい。これまで他者が知り得なかった(あるいは知った気になっていた)ことが、筆者という広く公に言語化できる当事者の出現によって衝撃的なほどリアルに、具に語られたとき、人々はおおいに関心を持って筆者の生い立ちや(悲惨な)家族の話を聞き始めた。しかし筆者が政治への提言を始めた途端、人々の興味は冷めていくとか。筆者はこれを「貧困をサファリパークのように眺める行為」だと言う。ポバティー・サファリ。半ば観光気分で安全なところから覗く貧困。日本にも格差はあるし、貧困層はいて、彼の語る問題は決して海の向こうの話ではなく、今ここ日本で起こっていること、これから起こっていくことに思えた。
無知は傲慢を生み、傲慢さは物事を過度に単純化してしまうから、自分の手の届くところから行動するためにも、複雑な要素に思いを寄せる思慮を持っていたいし、サファリを超えた理解に努めていたい。本書の最後で父親になった筆者が語る「今現在の自分の思い」は涙なしに読めなかった。出自や階層の上下や思想の左右を超えた、ひとりの人間の人生がそこにあった。すごく良い本だった。
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