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洗いたくはない

食べる人には申し訳ないけど、毎日めんどくせえなあと思いながら晩御飯を作っている。お鍋なら3日くらい持つでしょと思って作ったら1食で食べつくされてしまって途方にくれたりもする。

献立を考えたり買い物したり料理したりするのも面倒なんだけど、それ以上に、これを生活していく限りずっとやり続けるということを考えてしまって、ああ~めんどくせ~!となっている。別に買って来てもいいし外食してもいいんだけど、食べる人と私の経済面とか健康面とか家族親族からの目とか(これも結構大きな要素ではある)を鑑みたら、家で料理をして食べるということは一定の頻度で不可欠なわけで、生きている限り未来永劫この課題を抱えて生き続けることがもう面倒くさい。ドラえもんの道具で、なんか木の実みたいなのをカパッと開けたらオムライスとか牛丼とか出て来るのなかったっけ。毎日あれを出したい。

食べて満足した後に洗い物があるのも苦しい。食べた後の食器を持ってシンクに行って毎日絶望している。私の頭の中のT-BOLANが「こんなに…everyday…every night…」と歌い出す。くら寿司とかにある、食べたお皿を入れられる穴が欲しい。

倉田タカシさんの『あなたは月面に倒れている』を読んだ。

シュールで淡々として静謐なSF幻想短編集。去年読んだ本の中で一番好きだった、サラ・ピンスカーの『いずれすべては海の中に』を思い出させるような、この世の果ての人間の、熱く静かな営みを感じる作品集。

一番好きだったのは、その中でも少し異質な中盤の中編『再突入』。音のない真っ暗な宇宙に溶け出すピアニストの様子は美しくて恐ろしくて、サラ・ピンスカーというよりもアンナ・カヴァンを彷彿とさせる、シュールな終末という雰囲気だった。

実験的に書かれたような短編もあったりして、これからどんな新しいことをしていくのか楽しみな作家さん。今後新作を追って行きたい。

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