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それがあるということに気づく

10日間の海外出張に出る当日の朝は、夫が空港まで車で送ってくれた。出張準備や出張期間中の仕事の段取りを前もってやっておくために、しばらく根を詰めて働いていたのと、少し前にちょっとした(交通事故ではない)事故にあったこともあって、精神的に少し不安定になっていた。

私は精神的に不安定になってくると不安神経症みたいな症状が出る。診察を受けたことがないから「不安神経症みたいな症状」としか言えないけど、多分そうだと思う。何かイベントごとや大きなプレゼンなどがあるとかなり細かくシミュレーションをして準備をする性格なのだが、当日が近づいてくるにつれてあらゆる失敗を想像したり、できていないことを無限に思いついたりして、準備してもしても不安で、あらゆることにイライラする。寝る前は息が浅くなって寝られず、ベッドで貧乏ゆすりをする。寝ている間も仕事をしている夢を見て、不安になったりイライラしたりして起きてしまう。これを長年繰り返している。とはいえ根は大雑把なところもあり、死ぬ訳じゃないしそれなりにやるしかないわな、と思っているし、仕事に行けないとか電車に乗れないとか、そこまでの症状が出たことはない。仕事に関してのみ出る症状なので、基本的には仕事して解決するしかないと思っている。

今回の海外出張にあたっても、トラブルが重なっていたこともあり、私は例のごとく根を詰めていた。相手から返信が来ないことに不安になり、あらゆる手配が漏れていないか不安になり、自分が担当者であることにすらこっそり不安になっていた。空港に着いて、夫が車を降りてトイレに行き、車内でひとりになった時、何気なくツイッターを開いて流れて来た韓国アイドルの新しいMVを見て、良いMVだなーと思ったその瞬間、涙がボロボロッとこぼれて止まらなくなってしまった。トイレから戻ってきた夫は、さっきまでヘラヘラしていた私がめちゃくちゃ泣いていたので、さぞ心配したことと思う。当然何があったか聞かれるが、わからんけどなんか不安になってしもた、としか言えなかった。

不安になるのもしんどいし、イライラしたり怒ったりしている自分はもっと嫌で、これまでかなり努力してイライラしないように、しても外に出さないようにしてきた。どんな理由であれ人を(言葉や態度で)攻撃してしまったかも知れないと感じた時に最も不安定になり、しばらく不安やイライラが続く。そういう性格なので工夫して付き合っていこうと思っていたが、不安神経症・強迫性障害という症状があると知って、これかも知れん、ていうかこれやろうな、と思った。例えば薬やカウンセリングで楽になるなら、受けてみても良いかも知れないと思い始めている。

作家の柴崎友香さんが書いたADHDに関する本を読んだ。ADHDと診断されて、投薬治療をして感じたこと、生きづらさや、世界の見え方などが丁寧に言葉を尽くして書かれている。自分はADHDかも知れないと思ったことはこれまでなかったし、読んだ後も「そういう傾向は多少あるかも」という程度だけど、生きてきてなんとなく困るなあと思っていたことがいくつも書かれていて、めちゃくちゃ頷きながら読んだ。例えば、目と耳から入ってくる情報全部が均等に意味を持って脳内に入ってきて、全部に感想が出てきて脳内が忙しい感覚。私はずっとこれに困っていたと気づいた。

「普通という異常」も少し前に読んだ。自分や他人が苦しむことを前提としてADHDやASDを病と呼ぶのであれば、定型発達の人間も、定型であるからこその特性において病と呼べるものがあるのではないかというようなことが書かれていた。

ADHDもASDも、不安神経症も強迫性障害も、皆に決まった症状が出るということではないようだし、程度の差や当事者の生活・環境における大変さの差はかなりある。私は自分のややこしい性格とそれなりに付き合っていこうと思いながら生きて来たけど、こういった言葉があると知って、少し自分の見え方が変わった。柴崎友香の本を読んで、言葉にするほどかどうか分からないしそもそも人と違うかどうかも分からない感覚が言語化されていたことで、それが「ある」ことに気づいた。「ある」ことに気づくだけで、解決はしないけどちょっとだけ肩の力を抜ける気はする。

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