最近読んだ韓国の小説(翻訳本)や、韓国を題材にした小説
最近、韓国の小説(日本語に翻訳されたもの)や、韓国を題材にした小説を何冊か読んで、どれも面白かったのでまとめておく。
1. ひとりだから楽しい仕事: 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活
まずは「ひとりだから楽しい仕事: 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活」。これは日本文学を韓国語に訳している、翻訳家のクォン・ナミさんによるエッセイ。
第1章の「今日は仕事を頑張るつもりだったのに」を読むと、国籍や職業や年齢が違っても、人間は同じようなことを思いついて、同じように挫折してるんだなーと思うのであった。
私も仕事で日英の開発ドキュメントを書いているので、翻訳するときに「どこまで訳すべきか…注釈はどの程度付けるべきか…」と迷う下りは頷きながら読んだ。
2. 月まで行こう
次は韓国でもベストセラーになったという「月まで行こう」。チャン・リュジンさんによる仮想通貨に投資する若い女性をテーマにした小説。
先月、はじめて韓国に行く機会があったので、そのときにこの本を持っていった。翻訳本をその本の舞台となる現地で読むの、すごくよかった。話の中で出てくる地名とか、コーヒーを買ってるシーンとか、もらってる給料の金額が「ああ、昨日行ったあの場所か」「たしかにカフェがめちゃくちゃ多いし、みんなコーヒー買ってるな」「なるほど、この給与額だとたしかに厳しそう」みたいに、書いてあることに+αの情報や実感を持って迫ってくる。面白い。
ソウルに住んでいる人から見て、済州島ってこういう立ち位置なのねー。東京から見た沖縄みたいな感じかなー、というのも想像できて良かった。
3. 僕の狂ったフェミ彼女
次はミン・ジヒョンさんの「僕の狂ったフェミ彼女」。口に出すのも躊躇われるすごいタイトルだけど、これも面白かった。
やむを得ない事情で泣く泣く別れた初恋の彼女に偶然再会したら、可愛かった彼女は髪をショートにして、黒ずくめの服を着て、デモに参加するようなフェミニストになっていた……!という話。
話自体はずっと男性側の視点で進むんだけど、読み手の私としては両方の視点を行ったり来たりできるので、「まあそう感じるよな」「でもしんどいよな」と両方に感情移入しながら読んでた。
4. 流れる星をつかまえに
こちらは日本の作家、吉川トリコさんの「流れる星をつかまえに」。短編集なんだけど、さっきの話で脇役だった人が次の話で主役に、という感じで世界観は本全体で繋がっている。
2つめの短編、「私の名前はキムスンエ」は、日本人で普通に生まれて普通に育ってきたのに、16歳になるとき自分が「在日韓国人の三世である」と突然親から告げられて、その事実を飲み込んでいくまでの話。
仁寺洞などの地名や、東大門でナイトショッピングなどの話題が出てくるので、韓国旅行から帰ってきたばかりのタイミングで読んで「おおお」となったのであった。
この本の中で出てきた「82年生まれ、キム・ジヨン」も買ってみたので、今度読んでみる。こうやって本から次の本に繋がるのよい。
5. 仕事の喜びと哀しみ
最後はチャン・リュジンさんの「仕事の喜びと哀しみ」。これは韓国にいる同僚が「日本語訳版もありますよ」と勧めてくれたので読んでみた。
この話の中に「法律で決められてるから仕方なく作ったオブジェ」が出てくるので調べてみたら、韓国には「1% for Arts」というルールがあるらしい。ざっくり言うと、大きなビルを建てるときは建築費用の1%相当を美術作品の設置に充てること、という制度。
たしかに明洞を歩いていたときに、どうしてどの建物の下にもだいたいオブジェやアートがあるんだろう?と少し不思議に思っていたので、これを知って納得。見たものと知識が繋がる瞬間は楽しいですね。
英語から日本語に翻訳された小説はあんまり得意じゃなかったんだけど、現代を舞台にした韓国語から日本語への翻訳本だと、違和感が殆どなくて普通に読めるし普通に面白い。文化とか物の感じ方に差異が多いか少ないかの違いなのかなー。
韓国旅行自体も楽しかったし、考えることも多かったので、それはそれでnote書きたいと思ってる。
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