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分散型スポーツマネジメントボンドについての一考察

 前回概説をしました「分散型Social Impact Bond構想」について、意外にも多くの方々から好意的な御評価や御連絡をいただいて嬉しい限りですが(誰も検証できないからそう書いてみるw)、さて、今回は、真面目な分散型金融(DeFi)とJPYCのユースケース(活用事例)をさらに増やせないかということで、「分散型スポーツマネジメントボンド」について考えてみたいと思います。下の引用は、「明治大学スポーツ推進ステイトメント」に基づき、大学におけるスポーツの位置付けについて、カレッジスポーツによるユニバーシティ・アイデンティティ醸成のため、学生・教職員のみならず父母校友や「明大スポーツファン」による応援の輪が広がる体育会活動の仕組みづくりを推進するのだ、と明治大学体育会46団体が共通ビジョンとして掲げているものです(出所 「明治大学スポーツ推進ステイトメント」, https://www.meiji.ac.jp/campus/circle/sports.html ) 。

 今回の考察は、ここにDeFi(分散型金融)×NFTの仕組みで貢献できないか、ドネーションモデルの実現は可能かを探ってみたい、というものであります。

明治大学スポーツ推進ステイトメント
明治大学の体育会は,1905年に5団体の運動部が創設されて以来,現在は46団体を擁するまでに発展し,1世紀以上にわたり日本のカレッジスポーツとともに歩んでまいりました。この間,他の大学とともに数多くの新たなスポーツを日本に紹介し,その振興及び普及に尽力するとともに,オリンピアンをはじめとする国際的なアスリートを多数輩出してきました。
明治大学体育会は今後も日本のカレッジスポーツをリードし,その発展に貢献するとともに,さらにはスポーツを通じた社会・地域・国際貢献のモデルとなるという社会的使命を担います。この社会的使命を全うし,カレッジスポーツ全体のインテグリティの維持,向上を図るために,明治大学はここに「明治大学スポーツ振興の基本方針」を策定し,この方針に沿って具体的な活動を展開していくとともに,その実現のための諸環境の整備,関係各部署との調整に邁進することを宣言します。
大学におけるスポーツの位置付け
明治大学は,カレッジスポーツによるユニバーシティ・アイデンティティ醸成のため,学生・教職員のみならず,父母,校友や「明大スポーツファン」による応援の輪が広がる体育会活動の仕組みづくりを推進します。

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 さて、上の図「Meijiswap(仮称)DEXイメージ」を概説していきます。左上から五十音順で、明治大学体育会46団体が表示され、各団体は「JPYC建ての価値提供」を行うものとしています。すなわち、「JPYC建ての体育会●●部応援TOKEN」として各団体がNFT(●●部を応援すると●●の価値があるTOKENですよ)化し、支援者(教職員のみならず,父母,校友や「明大スポーツファン」など)は、JPYCでそれと交換することで、各部には育成環境充実費などの名目で、アスリート育成をはじめとする活動充実のための資金が提供される仕組みであります。このJPYCを活用した仕組みについては、筆者の「分散型 Social Impact Bond 素案を発表」の当該箇所をご覧ください(*ちなみにJPYC社岡部社長とお話しすることが決まり、非常に楽しみです♪)。さて、今回のイメージはDeFiにおけるDEX機能ですので交換が主です。後ほど説明しますが、寄付に近い概念ですので、流動性提供の機能はそぐわないと思料します。

 より具体的に、このDEXで行われる価値交換により、何が生まれるのかを見ていきましょう。それが下の図です。読み辛いので分解した図も掲載しておきます。

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 まず、下の分解図で、価値の提供者=事例は体育会拳法部について概観します。大まかに4つの提供価値があります。①と③について、JPYC建てで発行された拳法部TOKENは、拳法部の支援者である「応援証明NFT」となります。そのNFT所有者には、「明大TOPSHOT~拳法部~記念NFT」が、定期的に届くことになります。明大TOPSHOTNFTをもらった支援者は記念電子アルバムみたいに楽しむ人もいるでしょうし、汎用NFTプラットフォームで転売する人もいるでしょう。筆者の一案ですが、この記念NFTとなる写真を、いつも素晴らしい名場面を取材、撮影をしている「明大スポーツ新聞部」が提供するとした場合、転売がなされた時には、スマートコントラクトにより「拳法部と明大スポーツ新聞部の双方に一定割合がロイヤリティとして活動支援金として分配される、ということも可能でしょう。

 ここで明大TOPSHOTNFTについて、分かりやすいイメージとしてNBAのTOPSHOTシリーズについてご紹介しておきます(出所 NBA TOPSHOT 公式サイト https://nbatopshot.com/ )。このような迫力ある名シーンがNFTとなって世界中のファンが楽しんでいます。筆者としては、大学スポーツ界から後のスーパースターが生まれたりするわけで、彼らの学生時代からの価値の最大化とブランディングにも寄与しますし、お宝にもなり得る面白さもありますから、各大学TOPSHOTが存在して然るべきと思料します。

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④その他「応援証明NFT」所有者を部の記念イベント等に招待などの価値を提供することも考えらます。また、ここで注目すべきは、②であります。筆者は「分散型 Social Impact Bond 素案を発表」の記事で、DeFiにおける経済的利得以外をインセンティブとする新たな価値創造について考察をしてきました。この②は、「拳法部を応援していただくことによる、選手(&支える部員たちも)が輝き、すなわち部員のアスリート的・人間的成長こそが価値である」ということであります。このDeFiに参加することで明大生の人間的成長に寄与できる、という論法であります。筆者はこれもDeFiにおける経済的利得以外のインセンティブであり、新たな価値創造ではないか、と思料するわけであります。(*余談ですが、某大学が大学出身経営者に対し、「リターンは学生の成長と母校の永続です(o^―^o)ニコ」、という利息0の永久債の購入のお願いをした恐ろしい論法があります。今回はより親しみやすい価値創造の論法ではないでしょうか?( ̄▽ ̄;))

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 続いて支援者の視点で概観していきます。①はMeijiswap(仮称)DEXへの参加により、拳法部を応援することで、選手(&支える部員たちも)が輝き、すなわち部員のアスリート的・人間的成長する姿を目の当たりにできる、という価値の楽しみ方です。②は先述した明大TOPSHOTNFTの楽しみ方であります。転売をする方は、場合によって将来的にすごい価格が付くことがあるかもしれません。値が付かなくても、既に学生の成長を楽しんでいますし、記念電子アルバムの思い出としていつまでもその価値は残ります。続く③は、「応援証明NFT」所有者の特典として、応援している拳法部との様々な交流=タッチポイントを楽しむことができます。そしてここでも注目は④です。このMeijiswap(仮称)DEXに参加することが、大学スポーツ全体の振興に寄与し、時代を変革する人材育成に寄与し、親御さんからも感謝されることになります。すなわち、社会をより善くすることに貢献できる、という俯瞰的な楽しみ方であります。

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 さて、このカレッジスポーツによるユニバーシティ・アイデンティティ醸成のため、学生・教職員のみならず、父母、校友や「明大スポーツファン」による応援の輪が広がる体育会活動の仕組みづくりを推進する、というひとつの方策として、DeFi(分散型金融)×NFT「Meijiswap(仮称)DEX」の可能性を考察し、そこでやはりJPYCを活用することで実現できるのでは、とこれまで見てきたわけですが、筆者が分散型スポーツマネジメントボンド構想に至ったきっかけは、いつも通り現場の課題から、実現可能性の高い新たな価値創造ができないかなーと(*誰にも頼まれないのに)考えていることに起因します。そして今回の現場の素材は、明治大学の積年の課題のひとつである「寄付戦略」であります。(寄付戦略の課題についても誰にも頼まれないのにレポートをまとめてありますが、ここでは割愛しますw)

 現在、明治大学には、「未来サポーター募金」という寄付制度があります(出所 未来サポーター募金について https://www.meiji.ac.jp/bokin/supporter.html )。そして、その中身は下図の通り大きく5つの使途が分かれて指定寄付ができるようになっており、その中の「スポーツサポート資金」として、体育会46団体に対して指定寄付ができるようになっているのです(出所 未来サポーター募金(各資金の概要) https://www.meiji.ac.jp/bokin/supporter/outline.html#title2-4-1 )。

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 当然ながら、学校法人を介したこれらの寄付制度では、寄付者は法律で定められた寄付控除を受けることができます。つまり、ここで考察したいのは、DeFi(分散型金融)×NFT「Meijiswap(仮称)DEX」において、JPYCを活用して寄付控除が適用される形で実現ができるか、という命題であります。すなわち、下のB-2の可能性を探りたいのであります。

A.現行の未来サポーター募金(スポーツサポート資金)における寄付の流れ
 ●寄付者→学校法人明治大学(寄付控除摘要)→体育会各団体に入金   B.分散型スポーツマネジメントボンドを生み出すDeFi(分散型金融)×NFT「Meijiswap(仮称)DEX」における寄付の流れ
 -1.●寄付者(JPYC提供者)→JPYC建て価値TOKEN提供者(体育会各団体)※寄付控除摘要無しが見込まれる。
 -2.●寄付者(JPYC提供者)→学校法人明治大学(寄付控除摘要)を介したJPYC建て各体育会口(*分配先の意)付きスマートコントラクト摘要口座→JPYC建て価値TOKEN提供者(体育会各団体)※寄付控除摘要が見込まれる。

 明治大学の経営財務に対する評価である格付けについて、株式会社格付投資情報センター(R&I)による格付けは「AA(安定的)」を維持(出所 株式会社格付投資情報センター(R&I)公式サイト 明治大学格付)しており、高い評価となっています。つまり、「Meijiswap(仮称)DEX」の発起人としては信頼に足る主体であると見込めることになるでしょう。それはすなわち、DeFiにおけるリスクをひとつ軽減できるということになります。では、寄付者に寄付控除が適用される条件とは何でしょうか。個人と法人の場合で条件はことなります。個人については、個人が直接に学校法人に対して支出した寄付金であっても、「特定公益増進法人に対する寄付金」に該当するものは、同様に寄付金控除の適用を受けることができる、とされているので道が見えそうです。一方、法人についてはどうでしょうか。学校法人明治大学の場合、日本私立学校振興・共済事業団(以下事業団という)の受配者指定寄付金制度が重要となります(出所 文部科学省「受配者指定寄付金制度について」、https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/003/002.htm )。つまり、

1寄付の募集前に、募集対象事業等を特定する必要はないこと      
2寄付の募集期間について、期間を制限せず、常時受け入れることを可能とすること
3寄付者から直接事業団に対し入金できること
4審査は、原則として、寄付者がその寄付により特別の利益を受けるものではないこと及び寄付金が学校の教育研究に必要な費用又は基金に充てられるものであることの確認ができること

 これらの項目が満たされることが、会社等法人が事業団に対して支出した寄付金が全額損金扱いとなるために必要な条件となります。これらを勘案すると、法人による寄付については、「Meijiswap(仮称)DEX」を活用するのではなく、従来型の未来サポーター募金を活用していただくのが現実的かもしれませんね。いずれにしても、このように考察を重ねておくことは、本件についても多様な立場と視点から対話をすることで、また見えてくることがあるかもしれませんので、考えることを止めないことが重要であると思料します。もっとも、法人が「明大TOPSHOT NFT」を受け取って活用する場面より、個人の多くのサポーターが「明大TOPSHOT NFTを楽しむ未来」の方が想像しやすいのではないでしょうか。・・・と考えている内に、企業の中には、CSR活動として、「社会貢献クラブ」などを設置して自社の社員による社会貢献活動を促進しているところもあり、社員の希望によって給与の一部を天引きして寄付する仕組みなども存在することを思い出しました。つまり、「大学でこんなスポーツ振興の取り組みがあるよ。●●大学TOPSHOT NFTももらえるし、興味がある人はどうぞご利用ください」というように、明大だけでなく、大学スポーツ界全体を考えると、多様な大学のTOPSHOT NFT御礼付き寄付メニューが、企業で紹介されることによって、「法人内で個人サポーターが増えていく」という構図は成り立つかもしれません。したがって、個人サポーターによる寄付控除が認められる形でJPYCを活用する手法が考えられれば、大学スポーツ界全体が、『大学スポーツ全体の振興に寄与し、時代を変革する人材育成に寄与することをインセンティブとする「DeFi×NFT」』によって活性化する、という新しい価値創造につながる可能性があると言えるのではないでしょうか。

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 さて、今回は前回に続き、経済的利得のみをインセンティブとしない設計での、分散型金融(DeFi)とJPYCのユースケース(活用事例)をさらに増やせないかということで、『大学スポーツ全体の振興に寄与し、時代を変革する人材育成に寄与することをインセンティブとする「DeFi×NFT」』について概観してきました。最後にまとめとして、「分散型スポーツマネジメントボンド」について考察しておきたいと思います。先述した通り、今回は「Meijiswap(仮称)DEX」ですので、多少の交換手数料が発生し、その一定の手数料は、「分散型スポーツマネジメントボンド」として積み立てることができると思料します。この時のHealthy Governanceがどのようになされるかで投票行為の手法は変わるかもしれませんが、例えばその大学が重点強化をしなければいけないスポーツ団体に分配されるのはいかがでしょうか。また、例えば46団体もあると、競技人口やOBOG(校友)総数の多寡により、寄付が集まりにくい団体が出てくる可能性がありますので、「活動に懸命に注力しているものの寄付が集まっていない部」に分配されるなどの選択肢も考えられるかもしれません。なぜなら、「Meijiswap(仮称)DEX」は大学スポーツ全体の振興に寄与し、時代を変革する人材育成に寄与することをビジョンに掲げているわけであり、そこに団体間の優劣は存在しないからであります。あるべき姿(To be)に向かってエシカルに設計されることが、経済的利得のみをインセンティブとしない設計での、分散型金融(DeFi)とJPYCのグッドプラクティスにつながるのではないでしょうか。

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 今回の考察に関すること、あるいはその他気になる点やご質問など、筆者と対話をしてみたいという方いらっしゃる場合は、お気軽に下記までご一報ください。グラミン日本の活動について興味がある方も大歓迎です。末筆ながら、今回のご縁をいただきました関係各位に心より感謝申し上げます。

筆者連絡先:toshiaki.mochizuki-grameen.jp (-を@に変換)

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