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古典ハリウッド映画

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2022年10月の記事一覧

『歩道の終わる所』

監督:オットー・プレミンジャー

『孤独な場所で』の主人公、『飾窓の女』のプロット、主題は運命に抗えない男が呪いを解くまで。脚本が本当に面白い。全てが後の推理のヒントになるから目が離せない。冒頭から続く殺人シーンのあっけなさも恐ろしい。偽装のために絆創膏を貼った主人公は何かの罰を受けるかのように再び左頬に絆創膏を貼ることになる。保身と良心の間で揺れる主人公が手紙を署長に渡して罪を告白し、それを乗り

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『同志X』

監督:キング・ヴィダー

前半はルビッチの『ニノチカ』を感じながら、後半はまさかの戦場コメディになるヘンな映画。隊列なしてUターンする戦車がかわいい。『ニノチカ』に通ずるソ連描写に厭さを感じつつ、スパイコメディの部分は面白かった。

『パリのスキャンダル』

監督:ダグラス・サーク

聖ジョルジュとドラゴンの対比が後半に効いてくるが、少し無理矢理感も否めない。リシェが鏡を見るショットや、人気のないメリーゴーランドの回転など、舞台装置がいい仕事をする。財布を盗む、メリーゴーランド、反復の際で物語が進んでいく感じ。

『クラッシュ・バイ・ナイト/熱き夜の疼き』

監督:フリッツ・ラング

スタンウィックの視線の先にあるのは飛び立つ海猫であり、荒れ狂う波だ。安定を求めて流れで結婚したものの、いざ自分の性格と向き合うとこんなはずではないと思い始める。朝、夫にキスを求めたあとコーヒーを淹れながら涙を流し、そのあともつれるように間男とのキスに展開していくシークエンスが美しい。啖呵を切って夫が家を出て行ったあと、夜空→雲と繋いで再び浜辺に戻ってくるモンタージュに痺れ

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『眠りの館』

監督:ダグラス・サーク

執拗に映されていた天井と螺旋階段がやはりラストで機能する。『世代』といい、螺旋階段の銃撃戦って絶対真ん中からの落下で終わる気がする。夫がココアを飲んでみせるところ、ショットも割らずに唐突にアクションが起こるから観客もコルベールの驚きを共有することになる。結局無理をしただけだった、という真相もスマートじゃなくて良い。間男と別れる時のコルベールのあの一瞬の表情が、あっさりして

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『ショックプルーフ』

監督:ダグラス・サーク

なんだこのラスト、と思ったらスタジオ側が勝手に改変していたらしく納得した。フラーならこんな脚本は書かないだろうなーと思った。前半メロドラマ、後半ノワール風の構成ながらも、ヒロインの心情がなかなか読めないのがサスペンス要素にもなっていて面白かった。よく考えたらメロドラマ=階段、逃避行ノワール=車という象徴的装置がしっかり出てきていた。

『天使の顔』

監督:オットー・プレミンジャー

車大破シーンが二つともすごい迫力。ラストは一回焦らされてからの、、誰もが予想した結末。父親への近親相姦的な感情が継母への憎悪に繋がるのがなんとも闇が深い。メアリーがちゃんとしててよかった。

『疑惑の渦巻』

監督:オットー・プレミンジャー

ノワールに分類されるのか分からないが、ニューロティック映画の括りでもあると思う。設定は流石に都合良すぎるが、サスペンスとしては面白かった。最後はやる気なくなったのか、かなり雑に展開していた印象。妻が思い出す瞬間にあまりドラマがない。壁を使った空間の広がりと階段の落下は面白かった。レコードは結局破損してしまい、夫婦間の不信感が完全に無くなったかと言われるとどうもそう

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