センセイの鞄

難しそうな本は私には無理かなぁ…と思いつつぶらぶらと長時間本屋を漂い手にした1冊。川上弘美の名前は学生の頃に知っていたのに、その代表作を読んでいなかったなんて。

裏表紙の内容紹介を読むと私と同世代の女性と歳の離れた「センセイ」との恋愛?小説。とのこと。次の本はこれにしよう。

読み進めていくうちに、やわらかな優しい空気感に包まれふたりの日常がスルスルと頭に入ってくる。若い頃にありがちな熱く激しい熱情はないけれど、やわやわと心の奥を温め、時にチリリと胸を焦がすような大人の恋情に夢中になってしまう。

物を捨てられないセンセイが部屋で使い終わった電池達をテスターに繋げて針が細かく震えたり、止まったりするのを見て

「モーターを動かすほどの力はないが、ほんの少し生きている」「ほそぼそと生きているんですね」「そのうちに全部死に絶えるけどねぇ」とのんびりした遠い声で言い

「簞笥の中で、まっとうするんですねぇ」と答えるツキコさん。

ゆるゆると穏やかな時間。こんな恋愛もいいな、と思える1冊でした。

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