法科大学院への飛び級について

 最近、法科大学院への飛び級制度の利用が活発になってきていますので、今回は、法科大学院への飛び級についてあれこれ書こうと思います。
 飛び級制度について書いているブログで参考になるものとして、「こころの答案置き場」の記事もあります。
 こころの答案置き場さんの方と内容が被らないように色々と書いてみようと思います。
 何をどれくらい書けばいいのかよくわかっていないので、「これについても書いてほしい!」「ここのところをもっと詳しく書いてほしい!」「個人的に飛び級するかどうか悩んでいるので相談に乗ってほしい!」ということがあれば、Twitterの方にいつでもご連絡ください。

1.制度概要

 飛び級は、大学3年生が終了した後、大学4年生を経由せずに法科大学院へ入学するものです。大学に早期卒業制度がある場合には、要卒単位や早期卒業の条件を満たすことで大学を3年生で卒業したうえで法科大学院へ進学することもできますが、大学に早期卒業制度がない場合には、大学を3年生で退学したうえで法科大学院へ進学することになります。
 早期卒業すれば大学から「学士」という学位が貰えますが、早期卒業がなく大学を退学した場合には「学士」は貰えず、ただの高卒・大学中退の人になります。ですが、法科大学院を修了すれば「法務博士」という学位を貰えますし、「学士」についても学位授与機構から取得することが可能です(学位授与機構による学士取得・その意義についてはこちらのnoteをご参照ください)。
 ※ 個人的には、留学を考えていないのであれば、学士はなくてもデメリットはないと思います(飲み会のネタになってむしろ面白いと考えてました)。
 飛び級のロー入試でどの科目が必要なのかは、ロースクールによって異なりますが、京大LSの場合は、憲法、民法、刑法、商法ですね。詳しくは募集要項をご覧ください(出願資格についても募集要項をご覧ください)。
 配点としては、憲法・民法・刑法が100点〔設問2つ〕、商法が50点〔設問1つ〕、書類点400点(、当時存在していた適性試験50点)の計750点(当時800点)でした。飛び級でない普通の入試よりも、書類点が占める割合が高いので、学部成績が高い方が有利です。
 ※ 書類点について
 京大内部生は、ロー入試に向けて成績の平均点を気にしていると思います。その平均点がなぜ重要かというと、ここの書類点に超影響するからです。書類点は、大体100点満点で「平均点-15.2~15.4」することにより決まります。そして、この100点満点の書類点に4を掛けることによって400点満点の配点の点数が決まります。つまり、学部の平均点が1点変われば、ロー入試の書類点で4点差もついてしまうということです。

2.飛び級入試に向けた勉強

 私が受験した当時は京大LSの飛び級は制度が始まって2年目で志願者が少なかったので、倍率がかなり低かったです。ですが、最近では飛び級の志願者数も増えてきて、倍率も高くなってきているので、私が受験した当時よりは合格が難しくなっているとは思います。
 ※ 私のときは飛び級合格率は61.9%(実質合格率約60%)、令和2年度では飛び級合格率46.9%(実質合格率約37%)って感じです(京大LSのHPに記載されている「志願者数」は、書類選考に落ちた後の人数になっていますので、書類審査を申し込んだ人数ベース(推測値)で計算すると実質合格率になると思います)。
 
 上記のように、現在の状況と私が受験した当時の状況は少し違うことに注意は必要ですが、私が飛び級入試を意識しだしたのは2回生の終わりの2月からで、ロー入試の9カ月前とかですね。そこから飛び級入試に向けた対策をスタートしました。具体的には下記のとおりです。

 ①2月3月(2回生春休み)
 2月3月の間に2回生で習った科目(憲法、刑法、民法総則、物権・担保物権法)の総復習とまとめノートの作成(これは期末試験にときにある程度まとめたものをベースにして)をしました。そして、友人3人と自主ゼミを組み、京大LSのHPから入手したロー入試の過去問をやりました(具体的には答案を書いて、それを印刷したものをメンバーに配布し、それをもとに解答の筋を議論)。
 この時期は、とっつきやすそうな刑法の過去問をやっていました。

 ②4月~7月(3回生前期)
 3回生前期では、ロー入試で必要な債権総論と会社法の授業があったので、それに全力を費やしました。そのために、行政法総論・作用法の授業と民事訴訟法の授業は一応出てはいたけど単位はとりませんでした。また、会社法が条文多くてとっつきにくそうってイメージがあったので、3回生前期では会社法のゼミに所属しました。債権総論と会社法の授業の復習は時間をかけて、ノートもまとめていました。
 そして、春休みから始めた自主ゼミでは、民法の債権法と会社法をまだ授業で習っていなかったことから、憲法の過去問をやっていました。ただ、期末試験が近づいてきたあたりで、小林・北村「事例研究会社法」の問題をやっていました。

 ③8月9月(3回生夏休み)
 割とロー入試も近づいてきたあたりですが、当時の京大のカリキュラムでは、まだ債権各論(契約法、不当利得、不法行為)を習っていない段階だったので、まず最初に債権各論を独学で勉強しました(このときの使用教材は、潮見佳男「基本講義 債権各論Ⅰ・Ⅱ」です)。
 それが終わった後は、自分の勉強として半年前にやって放置していた刑法・憲法の復習やノートのまとめ作業をやっていました。
 それと同時に自主ゼミの方では、引き続き事例研究会社法の問題演習をやり、その後9月くらいから民法のロー入試過去問をやりました。

 ④10月11月(ロー入試直前期)
 ここから後期の授業もスタートしました。債権各論と行政救済法と刑事訴訟法と商法総則・手形小切手法の授業ですね。どの授業も大事で面白かったので、授業に出て割とちゃんと授業の復習もしながら、ロー入試対策をすることになりました。
 この時期からは答案は一切書かなくなりました。これまでまとめてきたノートをひたすら見直すか、演習書等を答案を書かずに問題文と解説を読むようにしていました。

3.入試から入学まで

 ロー入試の合格発表が12月中旬くらいにあって、そこで合格していれば一安心です。ただ、京大の飛び級であれば、2月中旬か下旬に「履修免除試験」として行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法の試験を受けなければなりません。
 履修免除試験で不合格となった科目については、ローに既修者として入学しても不合格科目に係る基礎科目(未修者の授業)を履修しなければならなくなります。すなわち、落とした数だけ要卒単位が増え、2年次の負担が大きくなります。
 試験の難易度的にはロー入試と同等だと思いますが、合否しか出ませんし、合格率は各科目80%~90%くらいだと思います。
 私は、この履修免除試験に1科目でも落ちれば、飛び級で進学するのはやめようと考えていました。そこで、ロー入試の合格発表後も行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法の科目のノートをまとめるなり演習書を使用するなりして勉強しました(ロー入試過去問も参考になると思います)。
 行政救済法と刑事訴訟法はちょうど期末試験もあったのでタイミングがよかったです。

4.入学後の勉強

 さて、ローに入学した後の勉強についても不安がありますよね。特に履修免除試験とかいうよくわからない試験に向けた勉強しかしていない状態でローに入学して、いきなり他の既修者と一緒に行政法とか民事訴訟法とか刑事訴訟法の授業を受けてテストも受けるわけです。単純に不利だと思います。京大LSの場合は、2年次前期に行政救済法、刑事訴訟法(捜査法)、2年次後期に行政作用法、刑事訴訟法(公訴権・証拠法)、民事訴訟法(処分権主義・弁論主義あたり)、3年次前期に民事訴訟法(既判力、複雑訴訟あたり)の授業があります。ロースクールで一番しんどい2年次後期に、あまり勉強していない行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法の授業がゴリゴリにやってくるのです。
 なので、ローに入学する直前の春休みや2年次の夏休みの時間で、行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法の勉強をした方がいいと思います。
 予備試験を受験される場合には、ロー入学前の春休みで全科目について勉強しておいた方がいいと思いますね。そうじゃないと私みたいに予備論文の民事訴訟法でFをとることになります。

5.飛び級と司法試験

 飛び級した人が既修者全体の中でどのように分布しているのか気になりますよね。飛び級って何か賢そうやし、みんな既修者の上位層にいるのかなぁとか思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。
 既修者全体の成績分布と飛び級の人の成績分布はほぼ同じだと思います。みんな上位層というわけではなく、既修者全体と同じだという意味です(まあ飛び級の人らは1年縮めて既修者全体と同じレベルにいるという点で優秀だとは思います)。
 なので、既修者の司法試験合格率とその中における飛び級の司法試験合格率はほぼ同じです。また、ロー修了時の席次トップ3のうち2位と3位が飛び級生でした。

6.飛び級と就活

 飛び級すれば法律事務所の就活で有利だというイメージが割とあると思いますが、実際は全然そんなことはないです。まあ多少は考慮されているとは思いますが、結局飛び級であることよりもローの成績の方が重視されていると思います。なので、飛び級したうえでローの成績もいいのであれば就活上メリットもデメリットもないのですが、飛び級したことによりローの成績が著しく下がってしまうのであれば飛び級したことにより就活上不利になっているといえます。
 裁判官・検察官への就活でもローの成績や司法試験の成績は見られると思うので、同じことが言えます。

7.最後に

 飛び級を受けるべきか
 →勉強のモチベーション維持になりますし、翌年のロー入試の練習になる(同じ採点官に答案を採点してもらえる良い機会)、飛び級するかどうかあまり考えていなくてもとりあえず選択肢を広げておく、という観点から飛び級入試それ自体は受けた方がいいのだと思います(私は同様の理由から予備試験も受験しています)。

 仮に合格したとして飛び級するべきか
 →ここは本当に人それぞれだと思います。何が何でも1年早く受験資格を手に入れたいし1年でも早く実務家になりたいということであればぜひ飛び級すればよいと思います。ですが、ローに入って授業についていけるかとか、就活のことを見据えたりすると、必ずしも飛び級することが正しいというわけではありません。
 なので、私は後輩に対していつも「ロー入試の成績を開示して、順位とか法律科目の点数を見てから決めた方がいいと思うよ」とアドバイスしています(私は先輩から「ロー入試で58点あれば優秀そうで、ローでは全く問題なく授業についていけるで」と言われ、実際全く問題はなかったと思います。58点はなかったとしてもできれば54点くらいは欲しいかもしれないですね)。
 ※ ちなみにロー入試の成績開示の方法としては、京大LSの場合は、ローの教務窓口に行って、「ロー入試の成績開示したい」旨伝えれば、申請書をくださいます。そして、1か月後くらいに開示書類を取りに来てくださいと言われると思います。
 ※ 私のロー入試の成績は、憲法58点、民法65点、刑法64点、商法30点、書類点68.850点、適性試験40.333点、総合得点532.733(1位)でした。一応全科目58点のラインは超えることができました。

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