学位授与機構での法学士取得

 本日、学位授与機構の小論文試験を受けてきました。
 主に法科大学院への飛び級制度の利用を検討している方や、既に飛び級で入学している方をメインの対象としております。
 今後、学位授与機構による学士取得を目指す方の参考になれば幸いです。

1.経緯

 最近、法科大学院への飛び級制度の利用が増加していると思いますが、私も飛び級制度を利用しており、京都大学法学部から京都大学法科大学院に飛び級で進学しました。
 その際に、京都大学法学部を3回生で退学することになりました。
 その後、私は法科大学院を修了したので、法務博士の学位は取得していますが、学部で取得できる法学士の学位は取得していません。
 学位をとる事に何の意義があるかというと、主に海外留学(LL.M.等)です。
 LL.M.(1年間のロースクールのコース)に留学するにあたって、何の学位が必要かというと、それは向こうのロースクールによって様々で、法務博士を持っていれば法学士がなくてもいいよってところもあれば、法学士が必要だよってところもあります(場所によっては学位授与機構の学士ではダメってところもあります)。
 私としては、今後留学するかどうかもわかりませんが、なるべく将来の選択肢を多く残すべく、今回学位授与機構による法学士の取得を目指すことになりました。
 なので、学位授与機構による法学士の取得を頭の片隅に置いて頂きたい対象者は、主に飛び級により法科大学院への進学を検討している人(で早期卒業できず、また海外留学も考えている人)です。
 ※ 当時、内部生で飛び級制度を利用するには学部を退学するしかありませんでしたが、現在は、早期卒業制度があります。ただ、早期卒業制度ができたとしても、単位数が足りない場合には退学して飛び級することになりますし、外部生で早期卒業制度を利用できない場合には退学することになります。

2.学士を取る手続

(1)書類の取寄せ等
 「学位授与申請書類」を取り寄せる。ここに個人別の受験者IDが記載されているため、これは必須。
 「新しい学士への途」は学士を取るための要件や必要な単位が記載されているが、ネットで閲覧できるため必須ではない。
 →学士取得当たって、何の単位が必要かが重要なのでこれは要チェックです。特に注意すべきこととしては、基礎法学4単位以上、国際関係法4単位以上の取得ですね(あとは、法学に係る単位が62単位以上、全科目の単位が124単位以上あることが必要になります)。
(2)学修成果(論文)の作成
 学修成果の詳細については後述します。
(3)学位審査手数料の払込み
 何と32,000円もします。。
(4)データ入力(学位授与電子申請システム)
 これは意外とめんどくさくて、これまで習得してきた単位を全てネット上で入力します。私は188単位分入力したので疲れました。
(5)申請書類等の郵送
 データ入力したものがPDFデータになるので、それをプリントアウトして、あとは大学・大学院等の成績証明書、学修成果を提出します。
(6)受験票受領
 学修成果が審査を通れば、試験の1カ月前くらいに受験票が届きます。
(7)学位授与試験の受験
 試験の詳細については後述します。
(8)合格通知・学位記を受領
 試験に合格していれば合格通知・学位記が届きます。

3.学修成果(論文)

 レポート形式ですね。ちょっとした論文を書くような感じです。
 自分でテーマを設定して、それについて40字×30行で10~17頁書きます。
 レポートとは別に、表紙1枚、レポートの要旨1枚を作成します。
 最後の1頁は、参考文献リストにしてよいため、実質9頁で大丈夫です。また、本文も9頁目に差し掛かっていればよいので、実質8頁とちょっとで大丈夫です。そう考えれば意外と書けそうですよね。
 ただ、自分自身の考察・結論を書かなければならないとされていますので、ただ学説状況の整理に終わるのではなく、私見を書かなければなりません。
 一応、自分の書いたレポートも参考までに載せておきますが、私は数日でパパっと書いちゃったので、内容に誤りがある可能性もありますのでご注意ください。
  また、自分の意見を書かなければならなかったので、ちょいちょい多数説とズレた私見をむりやり書いています。ここに記載されている私見は司法試験対策上は望ましくない見解もあるので、参考にしないでください。

4.小論文試験

 受験会場は、東京会場(学位授与機構 小平本館)と大阪会場(大阪経済大学 E館)の2つのみです。
 試験時間は1時間半(おそらく法学の人は10時半~12時)で、シャーペン・黒鉛筆でのみ答案用紙(30行が4頁)に記載できます。
 →ボールペンでの受験に慣れすぎて、シャーペンで書いたことを消しゴムで消すって作業がめんどくさかったです。

 自分の提出した学修成果(論文)をもとにした出題がなされるため、人によって問題が異なります。法学であれば、大体2問の出題だと思われます。

 私の学修成果に対する出題は以下の通りです。
 1 あなたは学修成果の中で、競業取引規制(会社法356条1項1号)と利益相反取引規制(同条1項2号)の「自己又は第三者のために」という文言について、名義説と計算説の読み方があると指摘していますが、競業取引規制と利益相反取引規制のそれぞれについて、両説で異なる結論となる簡単な事例を1つずつ挙げ、両説の違いを説明してください。
 2 あなたは学修成果の中で、純粋持株会社の取締役の競業取引規制に言及していました。肯定説の立場に立つと、純粋持株会社の取締役は役員でもない完全子会社の事業について競業取引を制限されることになりますが、なぜこのような解釈によって拡張しているのか、競業取引規制の趣旨に言及しつつ説明してください。


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