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【047】月曜日の朝ご飯【あの】

 月曜日。一週間のはじまりであり、一週間の中で恐らく一番憎まれている曜日である。たまたま2日の休みから切り替えの日、というだけなのに、なんとも不憫だ。相対的に愛されている金曜や日曜のことを、彼はどう思っているのだろう。

 かくいう私も、やはり月曜は気が滅入る。最も授業が重いからである。重いといっても、3コマ連続で自分の専攻の授業があるだけで、本当に忙しい人からしてみれば舐めてんのかというレベルだが、私の時間割の中では詰め詰めなのである。舐めている自覚はある。


 ところで、大変な毎日の中で、人はなにから日々の糧を得るのだろうか。趣味、推し、仕事、といろいろあると思うが、私の場合は文字通り「食」がエネルギーの源である。

 食事は生きていく上で必要不可欠な行為だ。大学一年くらいまでは食べることに無頓着で、むしろ面倒だから光合成で栄養を得られるようになりたい、とか考えていた。それが今では、食事を通して一日に3回も幸せを実感できている。作る幸せも含めれば6回だ(もちろん料理が面倒なときもあるが)。

 つまり、このちょっと頑張らなければならない月曜日には、元気の出る朝ご飯が食べたい。メニューはもう決まっている。昨日YouTubeで見かけたトーストが、一晩中ずっと頭から離れなかった。


 材料はたった3つ。
 冷蔵庫から、スライスチーズとホワイトチョコのを取り出す。フィルムを剥がし、チーズを食パンに乗せる。フィルムからのチーズの剥がれ方でその日の運勢を見るスライスチーズ占い、今日は大吉である。

 ホワイトチョコは、いつかなにかしらのお菓子に使おうと考え数ヶ月前に買ったまま、冷蔵庫の奥底で放置されていた。ここまで来たらもう使うまい、と贅沢にも丸々一枚使う。そのままでは乗らないので、ぱきぱきと折ってパンの上に並べる。ひとかけらあまった。食べてしまう。

 トースターに放り込み、とりあえず3分。待っているあいだに、口の中のチョコを味わう。ひさしぶりにホワイトチョコを食べたが、けっこうおいしい。寝起きの糖が不足したからだには、一際その甘さが染み渡る。


 あっというまに焼きあがった。ホワイトチョコチーズトーストの完成である。ホワイトチョコの盛り上がった四角に焼き目がついていて、見ているだけでよだれが出てくる。動画ではチーズケーキのような味と言っていたが、どうだろうか。早速囓りつく。

 以前ヨーグルトと豆腐を使ったチーズケーキを作ったことがあるが、それより遥かにチーズケーキである。おいしい。ホワイトチョコとチーズが、こんなに相性抜群とは。朝からこんな贅沢、許されるのだろうか。許されるのである。一人暮らしにルールは存在しない。

 このトーストを食べる上で、一つ注意点がある。チョコがめちゃくちゃ熱いので、少し冷ましてから食べるといい。やけどで口蓋の皮が少しめくれた私は、歯磨きでかなり苦しんだ。ミルクチョコとマシュマロを乗せたスモアトーストを作ったときも、同じ過ちを犯した気がする。学習しない人間である。


 食べ終えてふと、まだ今日の授業の予習が終わっていないことを思い出した。いや、ずっと頭の隅に「やらなければ」という意識はあったが、行動に踏み切れなかった。現実逃避ばかりしていた。こんなことがもう何度目かもわからない。

 精神的にも物理的にも満たされた今、「やらなければ」を実行に移せる気力が湧いてきた。今からやったとしても間に合う気はしないが、なにもやらないよりはマシだろう。このトーストのために、またホワイトチョコを買ってこようと思う。


2022.04.18 あの

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