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出産記録―計画無痛分娩からの緊急帝王切開―

●はじめに
痛いのが怖いという理由で計画無痛分娩を進めていた、妊娠糖尿病と診断された妊婦(35歳)の出産記録です。

無痛分娩で産む気満々で入院したものの、色々あって緊急帝王切開で出産しました。その「色々あって」のところをまとめたものです。
計画無痛分娩を希望している方、あるいは無痛分娩で出産予定の方、帝王切開がどんなものか知りたいという方のお役に立てれば幸いです。


●入院初日(無痛分娩前日)
9時に入院。尿検査などの検査の後、背中に麻酔を入れるためのカテーテルを挿入。
その後の内診の結果、子宮口が指一本分しか開いていないため、子宮口を広げる、ラミナリアという棒を10本入れた。

昼食後、時折、軽い生理痛に似た痛みを感じるが、スマホで映画を見られるほど余裕だった。

夕方にはラミナリアの入れ替えを実施。15本に増える。この時の器具の挿入がやたらに痛い。
入れ替え後は不規則な痛みが続いたが、夕食は完食。夜も不規則な痛みが継続するので、眠りが浅くなる。


●無痛分娩1日目
午前5時頃からNSTを装着し、誘発剤を服用する。
お腹が張るものの、子宮口が開いていないのでバルーンを挿入。これがもうめちゃくちゃ痛い。妊娠したのを後悔したほど。あまりの痛みに麻酔を開始してもらう。
そのまま点滴で促進剤を打ったが、赤ちゃんの位置が下がってきたものの、子宮口の開きが良くないので分娩に移行できない。「早く下りてきてー」と思いながら、分娩台で促進剤を投与し続ける。

医師からは「このまま促進剤を投与すれば4〜5時間後には生まれるだろう」と言われるが、子宮口に変化なし。
助産師からは「初産だと3日くらいかかる妊婦さんもいるから、長期戦になるかもね」と言われる。
「へーそうなんだー私は違うだろうけど」などと思っていたら、まさか私がその長期戦に臨む人になるとは思いもしなかった。

夕飯を終えても子宮口の開きがイマイチなので、部屋に戻って就寝。この日はそれなりに眠れた。


●無痛分娩2日目
この日も午前5時頃からNSTを装着。朝食後に誘発剤の服用と促進剤の点滴。この日は、お腹の張りに耐えられなくなるまで我慢してから麻酔を開始してもらった。

昼頃から不規則な陣痛が始まり、子宮口も4センチくらいまで開いた。赤ちゃんが昨日よりも下りてきてるようにも感じるが、破水しないのでお産が進まない。

夕方、医師からは「明日で3日目になるから、明日は色々試してみて、それでもお産が進まなければ帝王切開も視野に入れましょう」と言われる。
この時も「そんなこと言っても、まぁ帝王切開にはならないだろう」と高を括っていた。最終的には緊急帝王切開になったというのに、この時、どうしてそんな自信があったのか、未だに不明である。

妊娠糖尿病なので、入院してから毎日血糖値を計測していたが、食後血糖値の基準は全てオーバーしていた。
そのため、この日の昼ご飯あたりから、献立に書いてある品数より1品少なく配膳された。自宅では1日6食にして血糖値の上昇をおさえていたが、産院でそれは難しかったらしい。
ご飯が美味しい産院だったので、品数の減少は地味にショックだった。とくに晩ご飯のデザートが減らされていた時には、ショックで膝から崩れ落ちそうになった。
分娩が終われば食事制限とも血糖値の測定ともおさらばできるとわかっていても、妊娠糖尿病であることを恨んだ。

夜、寝ているときに血とか水のようなものが漏れる感覚があった。おしるしかなぁと思いながら就寝。

●無痛分娩3日目
この日も午前5時頃にNSTを装着し、誘発剤を服用した。

朝の診察時に「深夜、水のようなものが漏れていたようだ」と話し、破水検査をしたところ、破水だったと判明。この時に破水した量は多くないこと、子宮口のあたりの卵膜がしっかりしていることから、高位破水と判断された。
ただ、この卵膜を赤ちゃんが破れば破水するし、お産が進むらしいので、それを祈りながら病室で朝食をとる。

下膳の時、病室スタッフから
「3日目なのに頑張ってて偉いね。分娩が進まなくて3日目くらいになるとね、泣き出すママもいるのよ。私のせいだって」
と言われる。
私は、下りてくるかどうかは赤ちゃん次第だと思っていたので、お産が進まなくても何とも思わなかった。そういう考えのママもいることに驚いたが、自分を責めるほど赤ちゃんのことを思っているということだから、ママの感情としては模範解答なのかもしれない。それに比べて、赤ちゃん次第などと考えている自分は薄情なのかもしれないと、違う意味で少し落ち込む。

その後、再度診察。
卵膜が頑丈なので、卵膜を切って破膜させることにした。卵膜を切った直後、人肌のお湯が股から大量に溢れ出てきた。
産科の先生が冷静に「これが破水」と言った。私は破水の感覚にびっくりして、「あっ…はい…」しか言えなかった。

その後、昼まで様子を見たが、
・赤ちゃんが産道に対して真っ直ぐ下りてきていない
・破水しても赤ちゃんの心音が変わらず元気である
・小児科医、麻酔医の勤務時間中で母子の安全確保が確実にできる
という理由で母体と赤ちゃんの安全を優先し、無痛分娩を中止して、緊急帝王切開することになった。


●緊急帝王切開
緊急帝王切開になったので、夫が病院に呼び出され、一緒に説明を受けた。

帝王切開では、胸から下だけ麻酔をかけるという。全身麻酔にすると赤ちゃんまで眠ってしまうかららしい。
帝王切開にかかる時間は約2時間。つまり、私は2時間の間、手術の音が全て聞こえる状態でいなくてはならない。しかし、現状では帝王切開が最も安全な出産方法だというので覚悟を決めざるを得なかった。

手術が始まった。
麻酔が効いていると、触られているのは何となくわかるが、もちろん痛みはない。
麻酔がかかっている部分が、体からなくなったかのようにも感じられる。
そして、麻酔がかかっている部分は温かい湯船に浸かっているかのよう。

不思議な感覚だと思っていたら、小さな声で「メス」と執刀医が言っているのが聞こえた。
あぁ、今、お腹が切られているのかと思っていたら、耳元で「今、赤ちゃんの頭が見えましたよ!」と声かけされた。
進行状況を教えてくれるのか、親切だなぁと思ったのだが、バースプランに「お産の進行状況を可能な限り教えてほしい」と書いていたのを思い出した。

そして私が返事をした時には「赤ちゃん出てきましたよ!」と言われ「えっ?」と声が出た。
と思ったら、元気な産声が耳に飛び込んできた。

そんなに早く出てくるのかと困惑していたら、生まれたばかりの赤ちゃんを見せてもらえた。これもバースプランに記入したとおり。

元気に泣いていたが、「出てくるの、早くない?」とか「すごい皮膚の色してるな」という方が勝ってしまって「あっ…あぁ…」しか言えなかった。

その後、摘出した胎盤を見せてもらい(これもバースプランに書いていた)、手術室の外で待っていた夫と、きれいにしてもらった赤ちゃんと合流して写真を撮ってもらった(これもバースプランどおり)。
ストレッチャーに乗っている私に、助産師さんが赤ちゃんを抱かせてくれた。
出生体重は、およそ3300グラム。ずしりとした重みが腕にかかった。そうか、この子が自分のお腹にいたのかと思うと泣きそうになった。
が、夫が隣でデレデレした表情で赤ちゃんを見ているのに気付いて、なぜか涙が引っ込んだ。

病室に戻って、ようやくお産が終わったと思ったら、急に疲れがどっと出た。眠くて仕方ないので寝たいと夫に言い、そのまま眠る。

が、震えで目覚める。
寒いわけではないのに、震えが止まらない。歯がガチガチ鳴る。
様子を見に来た看護師にそれを伝えると「麻酔の副作用ですねぇ。この後、発熱しますよぉ」と言われる。
実際、夜中には38.9℃を記録した。発熱は翌日の夕方には落ち着いた。

●術後の食事
帝王切開当日は絶飲食なので、どれほどお腹がすいても何も食べられないし、何も飲めない。夜中にお腹がすいて目覚めたし、美味しいご飯を食べる夢を見た。

翌朝はポカリを飲むところから始まった。お腹を切っているので、いきなり常食にはできないらしい。
ペットボトル1本分のポカリをもらえると思ったら、コップ1杯のポカリだったので肩透かしをくらう。しかし、絶飲食だった体には、コップ1杯でちょうどよかった。

私の場合、ポカリも飲めたし、その後の昼食や夕食を完食したので、翌日には常食に戻れた。
今度は品数が減っていないご飯。美味しいものを食べる喜びで、自然と笑顔になる。

●術後の体
帝王切開の直後から点滴が続いた。私は血管が出にくい体質らしく、看護師さんたちは点滴のルート確保に苦労していた。
しかも、4時間くらいで点滴針の周辺が腫れ上ってしまうので、別のルートを確保しなくてはならない。
私の両腕には合計5箇所の点滴跡と、針は刺したがルート確保できなかった場所が3箇所ある。
最後の点滴をするために看護師さんが3人入れ替わった時は、3人それぞれに謝られてしまった。私の体質の問題なので、本当に申し訳なくなった。

採血と尿検査もした。こちらの結果は何の問題もなかった。貧血も起こしていないという。むしろ血の気が多いくらいだと看護師さんが言っていた。

どの分娩方法でも、分娩後から子宮の収縮が始まる。これがまた辛い。痛み止めが手放せない。
子宮の収縮に問題はないと言われたが、それでも屈んだり、横になったり、寝返りを打つのが辛い。それに加えて帝王切開の場合は、傷口も痛む。
この状態で手術翌日から動けと言われる。血栓防止と、腸の活動を促すためらしい。動かないとマズいので、何とか歩くがやはり痛い。

この痛みのピークは産後3〜4日目にやってくる。経膣分娩だったら退院する頃である。
ただ、帝王切開の場合、入院期間が長いので、子宮収縮が最も辛い時期に病院でケアを受けられる。
一方、自然分娩や無痛分娩の場合は、子宮収縮が最も辛い時期に退院し、自宅での育児がスタートしてしま
う。
正直、この点においては帝王切開で良かったなと思った。


●まとめ
この記事を書いているのは退院の2日後である。
子宮収縮のピークは過ぎ、普通に歩けるようになった。しかし、くしゃみや咳をすると、手術の傷口に痛みが走るし、日によっては少し痛む時もあるので、まだ以前のようには動けない。このような状態で、赤ちゃんのお世話をしないといけない。

夫には、あまり動けないことを説明して、ほとんどの家事をやってもらっている。
私は赤ちゃんのお世話と、体に負担のない範囲で夫がやる家事の手伝い(洗濯機のスイッチを押すとか、電子レンジのボタンを押すとか)をしている。
産後2週間くらいしたら、少しずつ家事を始めていくといいらしいので、それまでは全力で休むことにした。協力してくれている夫には感謝しかない。

最終的には緊急帝王切開での出産となったが、バースプランに書いたことが全て実現したし、他の分娩方法よりも長く産後のケアを受けられたので、結果オーライだと思っている。
帝王切開は怖いかもしれないが、良いこともあるというのは、声を大にして言っておきたい。

今後、noteでは育児日記を更新していく予定である。帝王切開の傷口のことや術後の経過にも触れると思う。気になる方は記事を見てみてほしい。

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