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「守るべきもの」の存在は人を強くするのか?

今回も大好きなミスチルの歌詞から生まれたテーマで恐縮なのですが、

2018年リリースの19枚目のアルバム「重力と呼吸」に収録されている、
「SINGLES」という曲があります。
簡単にどんな歌詞か説明すると、付き合っていたカップルが別れてしまい、それぞれの、曲名の通り「SINGLES」それぞれの、1人ずつの人生を進んでいくというものです。
歌詞に「I have to go」「you’ll have to go」つまりは行かなくちゃ、と言い聞かせて歩き出す、哀愁漂う歌詞と曲調の曲になっています。

その曲の2番のサビに

守るべきものの数だけ 人は弱くなるんなら 
今の僕はあの日より   きっと強くなったろう

という歌詞があります。
最初に聴いた時には軽く受け流していましたが、何度か繰り返し聴いていると、
ん?と首を傾げました。

守るものの数だけ人は弱くなる?

普通逆じゃないか?

いや、そもそも普通って何だ?

ということで、考えました。

まず1つ目。
守るべきものとは何か。
それはやはり、恋人や家族、つまりは大事な人のことでしょう。

次に肝心の「その数だけ人は弱くなる」について。
一般的には、
「家族の存在に支えられて人は強くなる」という言説の方が圧倒的ではないでしょうか。
結婚や子どもの誕生を機に、大人としての責任が増し、強くなる。
その考え方が、僕も普通だと特に疑うこともなく思っていたので、
この歌詞を見た時には驚きました。
そしてやっぱり桜井さんは凄いなあと思いました。
そんな考え方があったか、と。

それではその、桜井さん的転回の
「守るべきものの存在が人を弱くする」パターンについて考えていきます。

このパターンでは、「守るべき人」という存在が重荷となっている?
あるいは自分の夢や目標の障壁となってしまっている状態が考えられると思います。

依存関係になったりして「弱くなる」こともあるのか?

「守りたい人」ではなく「守るべき」という義務感や使命感のようなものがその人の負荷になっているというニュアンスも込められているかも?

「SINGLES」のMVは若い男女の別れを描いているので、そのイメージも強いせいか、この曲の中での「守るべきもの」=夫婦や家族といった風には思えません。

考えれば考えるほど「これだ!」というスッキリする回答は得られません。

しかし、一般的な「守るべきもの」が夫婦や家族と仮定して話を進めていくと、
果たしてそれは「人を弱くする」要素になりうるのか。

行き止まりが見えた話を進めるために、
ここで次に守るべき人が人を「弱くする」とはどういうことか、このことについて考えてみます。

ここを考えてみるとまた新しい側面が見えてきます。
「弱くする」とは単純に人としてのパワー、能力、グレードやステータスといっった世俗的なものを「下落させる」事を連想しがちですが、

他にも、「人の脆い部分を露わにする」つまりは心の鎧を剥がす作用についても言えるのではないかと思うのです。

この人といると、何だか素の自分でいれる。飾らずにいれる。心が丸裸にされているような気分になる。
恋人関係や夫婦関係において、そういった感情になることはないでしょうか。

そういう意味での「弱さ」は、時にはプラスにもなり、時にはマイナスに作用することもあるでしょう。
つまりは一概に良いとも悪いとも言えなくなってくる。

そうなると、
歌詞の中で恋人と別れた主人公の、
守るべきものがいた=付き合っていた頃は弱い自分だったけれど、
別れた今の僕はあの日よりきっと強い。
この言葉も見え方が変わってきます。

今の僕はあの頃より強いんだ。という強がりにも聞こえるし、
進むしかない(I have to go)のだから、と自分に言い聞かせているようにも思えます。
この記事を読んだ上で、この曲を聴いたことが無い人は是非聴いてみてください。
メロディーもとても切なく哀愁漂うものになっています。

さて、今日は特に結論の出ない記事になってしまいましたが、
守るべき人の存在=人を強くする
という当然と思って疑わなかった考え方にメスをいれる我らが桜井和寿の文学センスにまたしても感嘆、といったところです。

あなたはどう思いますか?
守るべき人の存在は、人を強くすると思いますか?
それとも弱くすると思いますか?

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