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Dyson (ダイソン) 掃除機 DC62分解 モータ巻線設計の不思議

Dyson DC62のモータを分解してみると、不思議な設計をしていることに気が付く。DC62は発売されたのは、もう10年ほど前のことだが、モータ設計について詳しい記事がなかったので、自分で分解するしかなかった。DC62のモータ駆動回路について1年以上前に記事を書いたが、今回追加の記事を書くことにした。

Dyson DC62は、モータ巻線設計に特徴がみられる。モータ巻線は鉄心に銅線を巻くことで電磁石になり、簡単に説明するとマグネットの磁極NSと巻線の電磁石による磁極 NSの吸引力、反発力で回転動作を行うことができる。

DC62の巻線設計

DC62のモータ巻線は、巻き始めと巻き終わりが同じ端子に接続されている。そして、中間点が別の端子に接続されている。これは通常のモータ構造では見られない巻線方法だ。通常は巻線の巻き始めを一つの端子に、巻き終わりを別の端子に接続する。

とても面白い設計だ。興味が沸いてきた。
これは、モータ巻線のインダクタンスに関係すると推測している。
また、モータ巻線に発生する逆起電力に関係していると推測している。

Dyson DC62は、1分間に110,000回転(110,000 r/min)という高速回転を行う。このような高速回転には、モータ駆動回路設計上の課題(制約)がいくつかあるが、大きくは下の2つが挙げられる。

①モータ制御信号に対するモータの応答性
②逆起電力により回転数に上限がある

▪️上記①のモータ応答性について説明
モータの応答性を上げるためには、モータ巻線(コイル)のインダクタンスを小さくする必要がある。インダクタンスは、電流の変化を妨げようとする特性のことで、インダクタンスが大きいとモータ巻線に流れる電流の立ち上がり時間が長くなり、高速回転させようとするとモータ巻線に必要な電流を流すことができなくなる。結果、高速回転に上限値が現れることになる。

インダクタンスを小さくするためには、モータ巻線の巻き数を減らす必要がある。インダクタンスは、巻き数の2乗に比例する。

一方で、モータ巻線を電磁石として磁力を発生させるには、巻き数は増やした方が良いので、インダクタンスを小さくすることは、電磁石の性能を低下させることになる。モータ巻線の起磁力は、(巻き数)X(電流)なので、巻き数を減らして同じ起磁力を発生させるには、電流を多く流すことになる。これはバッテリーの性能に影響される。

▪️上記②の逆起電力の問題についての説明
逆起電力は、マグネットの磁界の変化により、起電力がモータ巻線に発生するもので、ファラデーの電磁誘導の法則で説明される。起電力の発生する向きが、磁界の変化を妨げる方向に発生するので逆起電力と言っているが、高速回転させようとすると、逆起電力がモータの駆動電圧よりも高くなり、モータ巻線に逆向きに電流が流れてしまう。これは、回転を止めようとする逆向きトルクのブレーキになり、高速回転に上限値が現れる。

高速回転の上限値を向上させるためには、モータ駆動電圧を高くするか、逆起電力を小さくするかになる。モータ駆動電圧を高くするには、バッテリー電圧は、その他回路構成の耐電圧などにより制約がある。逆起電力を小さくするには、モータ巻線の巻き数を減らす必要がある。

モータ巻線の巻き数を減らすことは、逆起電力を小さくするだけでなく、インダクタンスを減らす効果もある。

▪️巻線構造の説明

巻線構造の説明

上写真の端子2と端子4は、プリント基板上で短絡(ショート)されている。各端子は端子の金属部分に挟まれているだけに見えるが、この接続方法で銅線表面の絶縁被膜を破って接続が確保されるのかは疑問だ。何か隠れた設計や接続工法がされているのかもしれない。
プリント基板との接続に180度回転しても取り付けられるように設計的な配慮がされている。ホールセンサーは1個だが、180度回転しても収まるように、2箇所に収まる箇所がある。

以下は、200円の有料記事とさせて頂きます。Dysonモータの技術に興味のある方向けになります。コンビニのコーヒー☕️代プラス程度ですので、ご容赦願います。モータ巻線部の回路図を使って、Dysonモータの特徴を説明します。モータの駆動電圧(実測値)なども記載しています。

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