わかりやすさと正確さのトレードオフ(知財がテーマのコンテンツ)
光栄にも今年も「弁理士の日記念ブログ企画2023」にお誘いいただきました。今年のテーマは「知財がテーマのコンテンツ」。
今年注目の知財コンテンツである「それってパクリじゃないですか?(通称:それパク)」は、もちろん楽しく拝見しました!
そこで感じた感想から、「わかりやすさと正確さってトレードオフの関係あるよね?」をテーマに、今年の弁理士の日記念ブログ企画に参加したいと思います。
それパクのすごいところ
弁理士や企業知財が大々的に取り上げられた作品がドラマになることは珍しく、知財界隈は何だかお祭りみたいな騒ぎだった♪
特に我が家は、2人の子どもも少し大きく成長しているので、一緒にドラマを見てくれて、「冒認出願!」「いや、先行技術がある!」とか、言ってたりしたのは、嬉しい以外の何物でもない。
『百聞は一見に如かず』で、具体的な事例を通じて、なんとなーく、こういう仕事をしているというのを、感じ取ってくれたんじゃないかと思う。
#踊ってみた の企画も凄かった! さすがは、かねぽん!
特にこの関西有名弁理士お3名のダンス動画が、とっても素敵でした♪
細かいところが気になる気質
と、個人的には超エンジョイしていた それパク について、周囲のツイートや配信記事を拝見すると「ドラマで出てきた、あの点について、誤解されないか心配」というような話を、ちょいちょい見かけた気がする。
確かに、私も気になった点が一つもなかった訳ではない。
一方で、このドラマの主目的は何だろう? ということが頭をよぎる。
間違いなくエンタメだと思う。少なくとも主目的が教育ではないと思う。
なので「あんまし細かいところばっか気にしちゃいけない」という気持ちで見ていたが、他方、「細かいところにも気を向けられる」ことは、私たちの職業柄としては、とても大事である。
めんどくさい、という言葉を何度も飲み込んで、膨大な資料を読み込んだりしながら権利範囲を正確に読み、細かいところまでしっかり踏まえて判断していく、そういう仕事が求められる職業なのだ。
なので、それパクを見ていて「弁理士の方々のツッコミが細かすぎる」とツイートしていた方には、ごめんなさいね、そういう気質が求められる仕事だから、ある程度は仕方ないのよ・・・と思ったりしている。
(人間、そう簡単には気質を変えられない・・・。)
「わかりやすさ」と「正確さ」のトレードオフ
このように、それパクでは、エンタメとしての面白さ・わかりやすさと、弁理士からみた正確さで、行き違う部分もあったのだと思う。
でもそれって、決してエンタメだけの問題でもない。
かつて、知財業界以外の方に向けて知財の教育用資料を作ったことがある。ものすごく大変な仕事だった。
(あの時は、沢山の人に泣き言を言っていた。あの時、色々聞いてくれた皆さん、ありがとうございます!)
何が大変かというと、知財ってものすごく専門的で、知らない人から見たら最初の用語の定義から難しいことだらけ。聞いているとすごく眠い。そういう内容だと、自分でも分かっているから・・・。
だから「少しでも分かりやすくしたい」と思って資料づくりに励む訳です。
そうすると、新たな敵が現れるのだ・・・。
分かりやすくする → 簡略化する → 若干の不正確さを含む
こんな感じで、どんどん用語を簡単にしたり、省略したりしていると、出来上がった資料を見たときに、知財業界の人からしたら「不正確」というハンコが押されるものになったりする。
どうすりゃいいんだーーーー!!!
てなる訳です。
分かりにくい知財の用語たち
例えば、分かりやすいところで言うと
「特許申請」なんて用語をTwitterで私が使おうものなら、多分、秒で大量のツッコミが入るでしょう。
でもね・・・でも。
「出願」という言葉、一般に知財を知らない人が見たら、
そんなの大学に入るとか、受験の時にしか使わない言葉じゃない?
と言われるかもしれない。
あとは、
「拒絶理由通知」
なんてのもある。
私なんて拒絶理由という言葉に慣れ過ぎていて何の違和感もないのだが
知らない人からみたら「拒絶!?・・・どういうことです!!?」ってなるらしいです。
(確かに、人から拒絶なんてされたら、軽く一週間以上凹むかもしれない。)
目的に応じたせめぎ合い
こんな風に、「分かりやすく伝えたい」という強い思いと、「用語の正確さ」を大切にしなければならない業界風土とが、大いなる戦いを繰り広げているのが、この業界なのである。
この両者のバランスをとることは、本当に本当に難しい。
でもやっぱり、難しくて分かりにくい資料ばかりなのはイヤなのだ。
(だって、私自身が難しい資料よく分からないし・・・。)
だから分かりやすさと正確さのトレードオフとは、今後も戦い続けていきたい。
みなさんも、この戦いに一緒に参加しませんか?
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