サウナ旅③ エストニア共和国(Eesti Vabariik)編
列だけ見ると、およそ3時間はかかりそうな流れの中、僕らの搭乗時間まであと12分。各々の知恵を駆使して(苦笑)、なんとか手荷物検査を抜ける事ができた僕達は、ボスの提案で祝杯をあげる事に。そりゃそうだ!ベルリンはビールの聖地なのだから。
LCC に乗ってベルリンを発った僕達は、初上陸の地エストニア共和国へ!
話に聞く電子立国だとか、公国だとか、全く予備知識もないままエストニアの首都「タリン(Tallinn)」に到着。
タリンには足を止めず、陸路「ヴォル(Võru)」へ向かう。
ヴォルはユネスコ無形文化遺産としてスモークサウナが登録された地域。
ひとまずお迎えの車に乗り、3時間かけて移動する。ホテルなどないこの地域に前乗りする為、僕らがこの夜ステイしたのは、ホリデーセンター。もはや無理やりサウナとベッドを用意してもらった感じの宿に到着。先ずはサウナか‼️と、ひとサウナを浴びに。
そして晩ご飯は、日本から遥々15,000キロを旅してきて、やっと日の目を浴びた「サッポロ一番」。途中空港のキヨスクで仕入れたベーコンをチャーシュー代わりに、日本で言うところの昭和40年代によくあったような花柄の鍋で、飲食業界のレジェンド、先輩が自ら炊いたラーメンをみんなで分けあって食べる!Great time❗️
黒霧島EX お湯割を飲みながら、今回のサウナ旅では考えられない程の夜更かし。タリンの空港からここに来るまで道中3時間爆睡した事が良かったのか、夜中の3時まで大人の修学旅行、昔話や笑い話に花を咲かせた。
翌朝。
7:00からトライアスリート(僕は幽霊部員)。先輩2人と青学駅伝部仕込みのレイヤートレーニング。スクワットを重ねてハーフマラソン相当の運動をこなしたあと、ロッジを出発し、エストニアでのメインの目的地、「モースカファーム(Mooska Farm)」へ。
2016年からの本格的なサウナブームが始まる前に、雑誌「Coyote」の表紙を飾ったこの場所。ユネスコ無形文化遺産にふさわしいオーラをまとった施設で、Googleマップは勿論、現地のベテランドライバーでさえ迷うなんの標識もない森の中にある。
入り口に着くと、オーナー家族と4匹の犬たちがお出迎え。これまでの様にお母さんに一通り案内された後、スモークサウナに入った僕達は、これまでに体験した事のない、プリミティブでスピリチュアルなサウナ体験をする事になる。
最初に、アヴァント(氷の湖に飛び込む事)しろと言われる。初めは冗談かと思って僕らも笑っていたけれど、お母さんは真剣。僕らは凍えながら意を決して湖に入る。後から考えればあれは「ブレッシング(Blessing)」お清めだ。
彼らにとってサウナは儀式でもあり、宇宙、大地、先祖と繋がる大切な場所だったのだ。
氷の湖から震える身体を引き上げ、築120年のスモークサウナに入った。
全員が座ると、動物の皮を伸ばして木で組んだ、原始的なタンバリンのような太鼓を叩き、何語か分からないお経やお祈りの様な唄を唄いながら、ゆっくりゆっくりロウリュしていく。どういう意味なのかと聞くと、そこにある石や、薪となり石を温め灰に変わった樹々、蒸気、精霊、そして先祖(Ancestor)への祈りのようなものらしい。
1ターン目は身体を温めるために。
素晴らしい仕上がりのサウナストーンはロウリュ時の音が低音で深い。
遠赤外線の熱は、お腹や身体の芯から。ロウリュによるスチームは、天井からゆっくりゆっくり降りて来る。
だんだん魔女みたいに見えてきたお母さんは、「今日は満月。満月は考えている事を現実化させてしまう。だから暗い事を考えないでね」って。
もみの木の葉っぱに熱湯を掛けながら行うロウリュは、ナチュラルでスモーキーになった嗅覚をリフレッシュしてくれる。
芯から温まると、先ほどの氷が張った湖でアヴァント。足湯をしながら、原始的な風景と共に外気で整い、薪ストーブのある休憩室に戻る。
2ターン目はクリーンアップ。
塩をふんだんに身体にすり込み、身体を洗う。スチームと塩と汗でトロトロになってきた皮膚に、次にかけろとお母さん、茶色いパウダーを渡す。胡椒の様な香りだ。
???俺たち食べられるやつ?
そう、宮澤賢治のあれ。「注文の多い料理店」。
なんてなー!なんつって笑いながら、2ターン目は終わり、同じ様に足湯で外気浴。
3ターン目はパック。
温まってきた頃に、蜂蜜をたっぷりと身体に塗り込む。お母さんは、これでもか!というくらい蜂蜜をくれる。塩コショウを揉み込んだ後の蜂蜜???スペアリブのレシピじゃないか!!
続いてもう1種類のタレ。
蜂蜜にレモンとハーブを混ぜたものを渡される。こちらもたっぷりと、ふんだんに身体中に塗り込む。
4ターン目はウィスキング。
フレッシュなヴィヒタで身体を叩いていく。お母さんは静かにお祈りを始めた。段々とテンポが上がり、声も大きくなっていく。それに合せてヴィヒタを打つ強さも上がっていく。3、4分打ち続けていると、もはやシバかれている感じで楽しくなってきた。
最後は呼吸を整える。鼻から吸って口から吐く。口から吸って鼻から吐く。右の鼻から吸って左から吐く。左の鼻から吸って右から吐く。(←これがすごく気持ちいい)
この最終ターンのアヴァントは、さっき習った呼吸法を10回繰り返しながら水に浸かってと言われる。「長いって!」だけど最後に完璧に芯から整う。
完全に仕上がったおじさん達は、心配していたように食べられる事なく、お母さんの用意してくれた手作りのランチタイム。
スモークサウナを使って調理された、ハムやベーコン、豚の煮凝り。チキンのハンバーグ、紫キャベツのピクルスなど、ファームならではの手作り感溢れる沢山の料理。味付けも素晴らしく、今回の旅で一番美味しい食事だった。
下記は先輩のFacebookから抜粋
『 ストーブの中の薪にはかつて樹木が太陽から受け取った優しい生命のエネルギーが宿っている。この薪が燃えることによって、再び取り出されたエネルギーは、次に固く強く冷たい石に移動する。石の力で木の優しいエネルギーは凝縮され、強力なエネルギーとして蓄えられる。石は生命のない無機物に見えるが、実は寡黙な能力を秘めているのだ。それが石のもつ霊性の正体なのだと思う。この石にロウリュのための水が注がれた時、新たな変化が起きる。石が自ら呪文のような声を発する。そしてその石と水から風が生み出される。それと共に人体はこの蒸気の熱風にさらされ蒸気が体に触れて汗と交換されてゆく。この過程は全く神秘的な気づきに満ちている。すべてのものに宿る霊性や潜在的力の存在、そしてそれらが連動して一つの世界をつくり出していることに気づく厳粛なる儀式のようである。』
雑誌Coyoteより
確かに、1人でこのサウナを体験したら完全に持って行かれるのではないか?と思えるくらい、神秘的な体験をした。お母さんは満月の日、貴方達は新しい運命を手に入れたと言っていたけど。正に全部出た、そんな時間だった。
タリンまでの帰り道は、行き同様3時間。
すっかり満腹で、お母さんから飲ませてもらった蛇酒(エストニアに毒蛇は一種類だけだそう。なんでわざわざ(泣))でぐっすり眠る事が出来ました。
翌朝。
4時に起きて、ホテル部屋内のサウナを温める。
浴槽に水を張るけど、当然そんなに冷たくない。(アヴァントに慣れたせい。帰国した今となっては、エストニアの冬の水道水は充分に冷たいはず)
久しぶりに1人でサウナに入るので、ゆっくりこの旅を思い返す事にした。
初日のJALで食べた蔦のラーメン!熱々にしてくれてとっても美味しかった。
ヘルシンキで乗り換え、サウナ・キャピタルであるタンペレへ。市営サウナで初めてのアヴァントを経験した。
電車でヘルシンキに戻り、そこからクーサモへ。初めての本格スモークサウナ、絶景アヴァント、アイスサウナ、翌日はスノーモービルツーリングで国境を見渡し、焚き火ソーセージを堪能。(←キャンピングシェフには堪らない)ヴィラに戻ってからの七つ星サウナ。
クーサモ、ヘルシンキと乗り継ぎベルリンへ。ヴィバリ スパ(Vabali Spa)の衝撃!この世とは思えない桃源郷的な世界観。
エストニア、ヴォルのユネスコ無形文化遺産、モースカファームでの神秘体験。
文章で書けばあっという間の事だけど、途中なんと35のサウナを体験。吐き出すストレスがなくて整わないジレンマ、人生初のサ貯め。(身体がサウナを拒否してる(笑))
エストニアから、フィンエアーに乗りヘルシンキへ。するとそこには、サウナの神様からの最後のご褒美が。
フィンエアーのラウンジ「プラチナウイング(Platinum Wing)」にはなんと‼️サウナがある。
先輩のJALダイヤモンドステータスにご相伴させてもらい、プラチナウイングへと進む。デザインが最高にカッコいい。フィンエアーのロゴに使われているネイビーは、そもそも素晴らしいネイビーで元々大好きなのだけど、このラウンジの内装はパーフェクト‼️ネイビーの使い方、大理石の切り返し、木(モク)の立て方。完璧(今進めてる渋谷区幡ヶ谷プロジェクトはここからオマージュしよう!)と心に決めサウナを見学にいく。しかし、そこには非情にも「故障中(Out of order)」の張り紙が!?
まぁ仕方ないよな。と思いながら素晴らしく充実したフィンランドフードを楽しんでいると、「シャワーだけでも浴びてくる」と行った先輩が、ダッシュで帰ってきた。
「モッチー!サウナ直った!急いで入って来て!」
なんということでしょう。
サウナの神様からお土産を頂いた!
最後のサウナを、最新かつ超スタイリッシュなサウナで堪能させて頂き、(これが、機内での超爆睡に繋がる)キチンとサ納めする事が出来た。
思い残す事はない。
機内では爆睡!
朝の成田に着くのは、珍しくそのまま仕事に向かう僕にとって、最高のフライトタイム。
おっと、一つ忘れてる。そう、行きがけ食べた機内ラーメン。これは頼まなければと、到着間際にモゾモゾ。
「帰り便はどこのラーメンかな?」
メニューを見るとそこには、
「九州じゃんがらラーメン」
なんでやー!!
チクショウ!!!
だけど、食べたらとても美味しかった。
飛行機は降下に向かい、窓から早朝の房総半島を見下ろすと、日本は素晴らしい国だと改めて感じることが出来た。ガラガラの入国審査場を抜け、キャリーバックを受け取り屋外へ出ると、清々しい朝日を浴びながら車寄せに向かう。美しい国の美しい1日だ。
待機していたアルファードに乗った瞬間、僕は聞いた。
「サウナ寄る時間ある?」
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