月曜モカ子の私的モチーフ vol.177「再生」
オリンピックの演出総括が野村萬斎さんとなった。
スッキリ!でウエンツさんが、野村萬斎さんや山崎さん、佐々木さんそして、リオ閉会式の素晴らしきメンバーの続投など、このセンスある人たちを配置したセンスある人は誰なんだろう、ということを言っておられて、
まさに、と思っている。
日々 “古き悪しき人間たち” のニュースでワイドショーは持ちきり、東京オリンピックもシンボルマーク? の時に悪い噂も多少流れたので、
変な方向の人選にならねばいいがと、いち国民として思っていたのだが、予想を上回る真っ当な人選にホッとしている。
萬斎さんは「鎮魂と再生」がテーマとおっしゃった。
先日恒例の旅として富士王朝の麓に行ってきたのだが、
帰ってきて昨日たまたまテレビをつけたらWOWOWで「君の名は」をやっていて因果めいたものを感じる(わたしたちが参拝している祠は、あの口噛み酒を供える水宮神社のご神体の中の祠とウリふたつなので、改めて驚く)。
[ 8/15水曜日の追記/ この写真はエンディングに出てくる四谷の須賀神社のもの。終戦記念日の本日に、先ほど参拝]
ここ作品にも「鎮魂と再生」そして「統べる(統合)」があるなあと思ったりなんかして。
さて、かくいうわたしも退院して一週間、再生の真っ只中なのだが、再生もなかなか簡単ではないことを実感中。
入院前と比べたら当然150倍ほども「室温管理」「食事管理」に気を配っているにもかかわらず、ほんのすこしの加減がずれただけで、お腹を壊して下痢になってしまう。これは肉とかお酒とか、まだまだ遠い未来なのね、と遠い目。笑。
そんなわけで世はお盆ですが、今回実家には帰らず東京で静養の日々。
(本当は16日に人間ドッグ入っていましたがその前に入院したため、ドッグはとりやめとなりました)
プロになってから特に文章をうまくまとめてしまう癖があるので、
今日は「なんとなく繋がってる感じがするもの」を、ちょん、ちょん、とただ並べてみる。木、金、と社会復帰してみたが、いろんな人に「やつれた」と言われると思いきや「つるんとして良くなった」と。つるんとして、とはなんか“憑きもの”が落ちた感じという事らしい。自然体になった、とか、親しい人には「中島桃果子じゃなくてスギタアキコ(本名)がいる感じだね」とか、言われる。
中島桃果子はデビュー10年目。知らず知らずにいろんなもの(塵とか埃みたいなもの)がその名前に乗っかっていたのかしら?
入院中に同じくデビュー10年目の同期作家の千早茜姫から連絡もらってしばしやりとり。その流れで「ガーデン」という彼女の著書を遅ればせながら病院のベッドで読んだ。わたしには“緑の手”がないので、植物と会話し交流するのがとても苦手なので、ガーデンの主人公が家の中に小さなジャングルのような場所を持っていて植物の呼吸を聞きながら生きている、というのに強く惹かれた。
なのにその矢先にわたしは、我が家の「賢いポインセチア」を病気にしてしまったのである。
入院前から冷蔵庫に入れてあったミネラルウォーターを退院後、
当然自分は口にせず捨てたのであるが、捨てる時、冷たく冷えていて透明のこの液体がまるで腐っているようにとても思えなかったわたしは、
あろうことかそれを、賢いポインセチアにあげてしまった。(泣)
生検の結果はまだ出ていないけれど、緊急入院に繋がった細菌というか雑菌というかウイルスのようなものはきっと存在していて、それは入院当日、思わずラッパ飲みしてしまったミネラルウォーターを通じて、ポインセチアの鉢に感染してしまったのだ。
どうして「人間が感染して入院するような水」を植物にかけてしまったのだろう、植物は大丈夫、と思ってしまったのだろう、同じ生き物なのに。
じぶんの浅はかさを反省しながら、栄養剤などを投入したり陽に当てたりしつつポインセチアの様子を見る。
最終的に萎びた葉はもう生き返らず、それらを全て切り取って、ポインセチアは5月の頭に思い切って剪定した時と同じような姿になった。
じぶんがとても苦しんだので、寝ても覚めてもポインセチアの様子が気になる。
わたしみたいな育て下手の人間とうまく2年ほど過ごしてくれている“賢い”ポインセチアをわたしはとうとう病気にしてしまった。
葉を切り取ったが、いつも出てくる白い液体は出なかった。
白い液体は植物が自然治癒をしようとして分泌するもの。
不意に「ガーデン」の一節が思い出される。
「植物は自分の身体に異常がおきると、その部分に養分がいかないようにして、枯らして切り離してしまう。迷うことも痛がることもせず。(中略)自分の身体の余分なものをすべてそぎ落として生きているんだ」
緑の手がないわたしは主人公のこの言葉を頼りにする。
ということは生きるために葉を枯らしたのよね、と、そんな風に。
なんだろう、じぶんの過失で起こしてしまったこの事故は、
一つの大きなメッセージとなった。なんというのかな、わたしの体にも同じくらいの大きな現象が起きていたんだよ、と改めて警告するような。
だってあの水は、そもそもわたしが飲んでいたものなのだ。
退院2日目から「ヨガもすぐ再開したいな」とか「さっと社会復帰して」とか、安易に考えていたけど、それは違うぞモカコ、いやアキコ、という感じ。
病院では温度から食事から全部管理されていて、しかも栄養価の高い点滴を抗生剤と一緒に4つも毎日投与されていたから、思ったより全然元気で、仕事もできたり、したのである。
大切なのはこの酷く暑かったり、急に寒かったり、乾燥したり多湿になったりするこの日本の夏の中に、すこしづつ体を慣らしていくことなのだ。
“再生”というのは培うものであって、ある日突然出現するものではないことを改めて思い知る。
(モチーフvol.177「再生」)
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☆モチーフとは動機、理由、主題という意味のフランス語の単語です。
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