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失われつつある若さが恋しくてオルタナティブを探す路地裏(なんでもない日に短歌でタイトルをつける日記01/20~01/26)

好きな歌集から短歌を、毎日の日記のタイトルに頂いて、一週間分の日記を書いています。2月以降の職探しに頭を悩ませる毎日です。

21日

絶滅の鳥の姿で現れていちばんほしいことばをくれる

『水上バス浅草行き』岡本真帆

髪を切り、派遣会社に行き、ジムで筋トレをして、なかなかいい休日を過ごした。派遣会社では、データ入力の仕事について話を聞く。これまでオペレーターの仕事ばかりだったこともあり、よくわからないが、データ入力の仕事は人気で競争率も高い、そうだ。とはいえ、決まらなかったときの保険のようなことばが重ねられることはよくあることで、今日はその手のプロトコルをひとしきり取り行った。

何の気なしに向かった派遣会社の登録会だったが、仕事内容は思いのほかおもしろそうだし、できれば早く決まってほしいし、早く決めたい。が、そもそものモチベーションが底辺だったため、今日の態度をすでに後悔している。十中八九、不採用だろう。結果発表は週明け月曜日か火曜日らしい。

そのとき、いちばんほしいことばをくれるとしたら、その鳥はどんな姿だろうか。あっさり結果だけ伝えてくれるハトか、説教してくるような口うるさいカラスか、どこか思わせぶりで神秘的なフクロウか。あるいは、ぼくを圧倒してくれるような絶滅した鳥だろうか。

22日

人肉と人工肉の違いってたった三画だけなんですね

『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』岡野大嗣、木下龍也

「だから、何だ?」と問われればそれまでだが、人肉と人工肉の字面の近さに気づき、それをそのまま短歌にするというのがいい。些細な発見を基にした短歌は、それだけ日常の中に短歌が深く根付いているということの証左である。

職場で、月末の退職の際の贈り物は何がいいか?と聞かれ、プロテインと答えてしまった。最近の頭の中は、筋トレ一色である。ただ、いつも自分が買うものを買ってもらうのも悪いし、味気ないので、EAAをリクエストしてみた。むやみにモノを増やすのは避けたいし、菓子類も最近は食べないようにしているので、冗談のようで案外悪くないリクエストだったのではないか、と思う。もらったEAAは筋肉となり、その後長くぼくとともに在り続けるのだから。筋肉はなかなかつかないが、脳筋になりつつあるかもしれない(笑)。
気をつけたい。

日常のなかにある小さな変化には注意深くありたい。体の変化や筋肥大に気づき、それを短歌にする……というのは、あまり風情がないかもしれないけど。

23日

ラジオっていいねふとんをかぶっても聴けるしふとんは裏切らないし

『音楽』岡野大嗣

有給休暇のお供はFODとふとん、Podcast、歌集。FODで見たのは『ウソ婚』と『エルピス』。『ウソ婚』は見終わった。『エルピス』は半分。
みんな、裏切らない。裏切らないけれど、寂しさもある。

『ウソ婚』はむかし見た『恋仲』と『逃げ恥』を足して2で割ったようなドラマ。1話30分もないため、イッキ見におすすめしやすい。

先週、応募した派遣先の仕事は案の定、不採用となり、ちょっと焦らなければならなくなってきた。その仕事はぼやっとした理由で応募したものの、よくよく話を聞くと、案外いい内容だったこともあり、若干のショックはある。今日は風の音を聞くだけで、外出する気が失せる1日だった。とりあえず、明日だな。明日考えよう。来週以降の仕事は。

24日

お湯になるまでに流してしまう水 涙にもその段階がある

『音楽』岡野大嗣

日中は仕事の休憩中に、2月以降の派遣先の仕事探し。仕事終わりにジムに寄ったが、筋トレはあまり集中できなかったため、30分程度で切り上げて帰宅。最近は読書も気が進まず、時間を取れていない。早くストレスなく、筋トレと読書に邁進できるように体勢を整えなければならない。が、一方で、長く同じ仕事を続けるというのもストレスがたまり、1年程度でこうして職探しをすることになる。難儀な性格である。

『エルピス』を見終わった。フィクションとはいえ、このドラマで起きていることがわりと冗談にならないことは、最近の政治や芸能関連のニュースを見れば、よくわかる。物語の展開もまったくムリがなく、複数の人間の曖昧な責任感と意志によって転がっていくところにリアリティがある。
キャストの中では、眞栄田郷敦さんの序盤と中盤以降の変わり様が強烈に印象に残った。あまり知らなかった俳優ということもあり、おそらくこのドラマのイメージが長く残りそうな気がする。もちろんポジティブな意味だが、かなり影響力の大きなドラマだと思う。

人の欲の醜さを思うと、ぼくは地方に住んでいてよかった。それこそ、かつては都内で、あるいはメディアの中で働きたいと思っていたこともあるが、あの魑魅魍魎が跋扈するストレスが過剰な空間では、ぼくは人知れず鬱状態に陥り、いつのまにか消え去っていることだろう。

短歌は意味があるようで、おそらく深い意味はない。と思う(笑)。この短歌の意味について頭を悩ませるくらいが、ちょうどいいストレスである。

25日

奪われてゆくのでしょうね 時とともに強い拙いまばゆいちから

『てんとろり』笹井宏之

かつては少々寒くても、片道1時間の自転車通勤が苦ではなかった。満員電車が嫌いすぎて、その密集に乗り込むくらいなら自転車の方が100倍マシだった。が、この冬はかなり電車通勤の頻度が上がっている。こうやって若さを失っていくんだろうな。もとより、さほど強くもまばゆくもないが、それでも振り返って見れば、若さはいつも強く拙くまばゆい。

26日

日だまりの菜の花の絵を描くためにひとりの夜の色を集める

『あなたのための短歌集』

「黄色」をキーワードに選んだ一首。菜の花には、花としての印象は特にない。黄色の小さな花というだけだ。花というより、おひたしとしての、つまり食べ物としてのイメージが強い。よく食べるわけでもないが。
花言葉を調べてみた。「小さな幸せ」「快活な愛」「明るさ」とある。色も花言葉も、ひとりの夜からは集まらない気がするが、どうだろうか。

今日は、たのしみにしていたOVER THE SUNのイベント、「幸せの黄色い私たち」のライブビューイングを見に、ららぽーと福岡に行く。ららぽーと福岡はオープン当時に何度か行って以来の利用になる。フードコートのテーブル席が広く開かれていて、食べ終わった後でも居座りやすい。ムダにカフェなどに入らずにのんびりできるのはいいところだと思う。開始15分前に映画館の前に行くと、かなりの行列になっている。熱気がすごい。35歳の男ひとりの入場は番組のメインターゲットから考えると、少数派であることは百も承知だったが、急に緊張してきた。

変な言い訳をするみたいだが、OVER THE SUNのイベントがたのしみというのもあるが、Podcastのイベントがたのしみという意味合いが大きい。そもそも狭い人間関係の中で生きていてPodcastの話をする人がまったくいないし、関連のイベントも福岡では少ない。Podcast界隈の活況を福岡で体感できると思い、会場のチケットが1月上旬時点でわずかに残っていたから、配信ではなくライブビューイングにした。残りわずかのタイミングだったこともあり、席が最前列で出入りしやすいところだったことは、結果的にかなり助かった。観覧後、そそくさと退散するのにいい席だった。

内容について書くのは野暮というか、日頃からPodcastを聴いていてこそのものだと思うので割愛するが、とりあえずパワーはもらったし、ひとりの夜にも「小さな幸せ」も「快活な愛」も「明るさ」もあったし、黄色だった。
職探し、がんばろう。

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