見出し画像

やっぱりローラ・ダーンの出てる映画は傑作しかない。『若草物語』をみて確信しました。

グレタ・ガーウィクの若草物語、つまり『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』をみました。なんだ、この邦題?

って、思ってたのですが、見終わったあとに言いえて妙で、良いタイトルだなーとおもいました。ごめんなさい。

そして大傑作。女性の多様な「マイライフ」を、メタ舞台としての若草物語の上で提示しつつも、それが創作でしかないという自虐的なしかけ。でも、それらをまったくトリッキーにはせず、だからこそ観ているこちらが、四姉妹やそれを取り巻く人たちにじっくり寄り添える。いい映画だ。おれ、おっさんだけど。

おっさんにも響くのは巨匠の貫禄があるから?

おそらく、子持ちのリストラ親父な自分とは一番遠いところがターゲットだと思う映画なんだけど、それでも「ずっとこの世界につかっておきたいな」とおもうくらいな名作。かろやかなヴィスコンティ、動きの多いアイボリー、そんな巨匠感すら感じるグレタ映画。

レディ・バードからも感じてましたが、この作家性の高さだからこそ、ターゲットからドハズレしてる自分も魅了されてしまうんだな。自分の、いや世界中の人のどこかに響く映画が作れてるんだろうなと思いました。マンブルコアの女王からついにここまでの監督になったグレタ・ガーウィグ。今後がほんとに楽しみです。もちろんパートナーのノア・バームバックも早くマリッジストーリーの次を撮って欲しいし、『フランシス・ハ』とか『20センチュリー・ウーマン』での女優としてグレタの大ファンでもあるので、出るほうでも次回作が見てみたい。いずれにしても、この夫婦のことを話しはじめると切りがないのでこのへんで。。。

あ、ちなみに最近は本格派の傑作映画がコンスタントに出てくるなーと思ってます。この『若草物語』もそうだけど、『ROMA』や『マリッジストーリー』『アイリッシュマン』『Da 5 bloods』などなどNetfixが作家にしっかりと自主性を渡して作るからこそ、作家性をベースにした本格的な映画ができる。あと、作家性を重視している(と、私が勝手に思っている)A24の映画が賞レース的にも興行的にも成功してるのがその傾向に拍車をかけていて、「あと30分切らないと公開しねぞー!!」とマーケット側から怒鳴る人たちの時代が完璧に終わった気がします。『若草物語』はNetflixでもA24でもないけど、そのながれのなかで作家性を全面に出した映画として傑作になってるのかな、と思いました。

そして、そこにはローラ・ダーンがいる。必ず。

グレタの『若草物語』はすごい。これはもう、どうしようもない事実なので、彼女については、またあらためてじっくり考えるとして、今回、「ああ、またいるんだ!」と思ったのがローラ・ダーン。最近の傑作にはだいたい彼女がいる。

『若草物語』では、4姉妹の母親役として。優しく、気品高く、でも堅苦しくない人間らしい母親を演じてるんですが、いつもにこやかで穏やかなキャラだけど「私は、ずーっと怒ってたのよ」というセリフと優しい笑顔で、この作品がもう一つ深くなるというか、そういう重要なパーツをローラ・ダーンが占めている。

どこが傑作だよ!と言われるかもしれませんが、私にとってはスター・ウォーズシリーズの最高傑作、『エピソード8 最後のジェダイ』も、しっかりとローラ・ダーンが出てる。

あまり詳しく役どころを話すとネタバレになるんですが、臨時に反乱軍の指揮を取ることになった上級軍人としての役回り。これがまた、ローラ・ダーンらしい。心に何かを秘めながらも、キッチリと仲間に寄り添うむつかしい役どころ。

ライアン・ジョンソンという役者のケレン味を全面に出す監督ですが(『ブリック』のジョセフ・ゴードン=レヴィット、『ルーパー』のブルース・ウィルス、『最後のジェダイ』でもマーク・ハミル、アダム・ドライバーにキレキレの演出してます。『ナイブズアウト』のダニエル・クレイグもキレてた)、キッチリとベテランになってからのローラ・ダーンの存在を物語のキーに持ってきている。もし、この役が彼女でなかったなら、作品全体の悲壮感と高揚感はこれほどではなかったろうなーと。観た人、、、わかりますよね?『最後のジェダイ』の物語のドライブはローラ・ダーンのあのシーンからアクセルが踏まれるのです。

https://amzn.to/2Z33OoG

パートナーのノア・バームバックの最新作『マリッジストーリー』でもアカデミー賞をとるほどの強烈な演技。

ハリウッドの有名な離婚弁護士という熾烈な冷血ビジネス人間であるのに、依頼者に優しく寄り添う二面性。こういう矛盾したものをスッキリとひとつの人格におさめて、素振り、セリフにまったく違和感がない。こういう複雑なことを任せられるのがローラ・ダーンなんだろうなと。

https://www.youtube.com/watch?v=zRL2bivKtjo&t=14s

彼女といえば、『ブルー・ベルベット』『インランド・エンパイア』などでデビット・リンチのイメージも強いけど、これからグレタ、ノア・バーンバックの二人の監督の作品に欠かせない役者になりそう。

ちなみにリンチの映画のローラ・ダーンは『ワイルド・アット・ハート』がエキセントリックで最強だと思います。とくに、ロードサイドでカーラジオから流れる音楽にノリながらニコラス・ケイジと一緒に踊りまくるシーンは脳裏にこびりつくダンスシーン・ベスト3に入ります。このときからエキセントリックなのに上品みたいな矛盾する側面を違和感なく1つに人格にいれるのがうまかったなーと思った次第。

ほかにも、リサ・ウェザースプーンの『わたしに会うまでの1600キロ』の母親役、『ザ・マスター』での信者など、ここ10年のなかで映画のキーとなる役どころを軒並みやっているので、ほんとに名作の影にローラあり。

もちろん彼女がいなくても映画は成り立つかもしれないんだけど、彼女が抜ける、違う役者になると致命的に映画が薄っぺらくなる、そのくらいの存在感(といってもぜんぜん全面に出てこない)をもってる。

そんなローラ・ダーンに注目して、いろんな作品を見直すのもなかなか面白いです。

若草物語は、シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン以上に、ローラ・ダーンが最高な映画でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?