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なんでMMTは景気刺激『呼び水』政策に否定的なんだろ

おつかれさまです。

今日はいわゆる積極財政派といわれる人たちが重視する財政出動、主流派的に言うと、呼び水政策に対して、MMTがおおむね否定的というのは、わりと有名な話で、積極財政派の人たちからすると、何でオリジナルMMTerとういうのは、こうも財政出動に乗り気でないのだろうと疑問に思っているんじゃないかなと。

で、これなんでなのかというと。

自分が思うに一番は経験則からなんじゃないかなぁ。(もちろん、理論的根拠もある)

つまり、過去に同じようなことをやって、それが上手くいかなかった歴史的経験があるんです。

この経験に基づいて、MMTではケインズ的呼び水政策に消極的なんです。

というか、目的は同じで、もっと効率の良いやり方ないか?ってことですね。

自分たちもそうですが、過去に失敗した試みをもう一度同じやり方でやってみようとは思わないですよね。

経済学って歴史学的な側面もあると思うんですよね。例えば、インフレーションに関する研究って沢山あると思うけど、デフレとなると本当に少ない。それは多分、日本以外で起こってないからですよね。

この経験についてはランダルレイのミンスキー本のなかに詳しく書かれているので、そちらを読むことをお勧めします。


ケネディージョンソン期、特にジョンソン大統領の『貧困との闘い』、つまり、格差を是正しようとして始めた政策が呼び水政策、つまり財政出動により、民間の投資を呼び込み、好景気にしよう。そうすれば、水が滴り落ちるように『トリクルダウン』貧しい人たちにも富の分け前がいくはずだ。

といって、呼び水政策をはじめたんですが、

結論からいうと、ミンスキーの言葉を借りると

「貧困を貧困層に再分配したに過ぎなかった」

と評しています。

上手くいかなかったんですね。

民間投資を呼び込むというのは、今の積極財政派の人たちも同じようなことを言っていますね。

だけど、それって、つまりサプライサイド経済学なんですよ。

アベノミクスはトリクルダウンが起きると思って、始められました。

積極財政派の人たちもサプライサイド経済学はもう通用しないといって、批判したと思います。

アベノミクスは金利をゼロにして、金融機関から国債をたくさん買い取って、マネタリーベース(準備預金と流通紙幣だけど、国債を買いオペして増えるのは準備預金)を増やして、つまり、お金を借りやすい状態を作って、民間投資を呼び込もうとしたんですよね。

それに対して、呼び水政策というのは需要を増やして、つまり、マネーサプライ(銀行預金と流通紙幣など)を増やすことで、民間投資を呼び込もうということなんです。よく言われるのが、潜在GDPやデフレギャップですね。つまり、需要(お金)が少ないから、供給が頭打ちになっている(ほんとはもっと生産することが出来る)、需要を増やすことで、供給をさらに増やすことができるだろう。で、これって、サプライサイド経済学的アプローチですよね。

積極財政派の人たちの代表的な存在の一人である三橋さんはとにかくなんでもいいから、需要を増やせと言います。

それに対して、MMTerは的を絞れというんですね。

狙いを定めろ。

狙ったところ、つまり、中流階級、低所得者、低技能労働者、路上生活者などの所得を底上げをしたいのであれば、どうすればいいのか。(もちろん、JGPもそのひとつだと思います。失業に起因する貧困をなくすことができますからね。)

呼び水政策が絶対的に悪なのでなく、不確実な要素が多いし、何より険しすぎないか?と思います。

もっとシンプルに速く、上記に挙げた人たちの可処分所得賃金の増加ベーシックインカム以外の方法で、しかもダイレクトに増やす方法があります。

それは消費税の減税社会保障の増額社会保険料の減免法人税の減税ですね。(ビルズナリー ラムルの考え方として消費税と、社会保険料と法人税を悪税していたと紹介されています。詳しく知りたい方はランダルレイのMMT入門第5章の6節に書かれていますので、そちらを読んでみてください。)

あとはほかにも、大学教育費を国で負担するといったことも、子供がいる世帯の多くは、子供の将来のために教育費を蓄えているでしょうから、これも可処分所得の増加にダイレクトにつながります。また、子供を持ちたいけれど、経済的に余裕がないから、子供を作れない夫婦もいるでしょうし。

また、年金生活者の人たちの暮らしも楽になるでしょう。特に、国民健康保険料というのは、なかなか大きな負担になっていますし、医療費の自己負担も増えたところです。間違っても、社会保障を減らしたり、これ以上の医療費の負担額を増やすことはあってはなりません。

さらにいうと、これは上記のことだけでは対応できないかもしれませんが、特に都市部で暮らしている、または何らかの理由により親からのサポートを受けることができない、孤立してしまっているシングル家庭への所得面、労働面、子育てに関するフィジカル面でのサポートも必要でしょう。とくにシングルマザー世帯での子供へのネグレクト、または虐待による痛ましい事件がよく報じられます。そして、それはこうしている今も進行中でしょう。

なんらかの理由により、親と一緒に暮らすことができない、親からのサポートを受けることが出来ない子供達にも充分過ぎるサポートが必要でしょう。
障碍者の方たちが日常生活に困らないように街を作り替えて行く必要があるでしょう。
もちろん、被災者の方たちへの支援も忘れてはならないし、路上生活者やネットカフェ難民と呼ばれる方たちを含めた低所得者層のための一時的に無償で住むことのできる公営住宅を増やさなければならないでしょう。
んー、言い出すとキリがないのでこの辺で。

これらの方が、とにかく政府が支出して、民間の投資を呼び込み、好景気にして、売り上げを伸ばし結果、賃金も上げていくといった回りくどいやり方よりも、だんぜん速いでしょ。(90年代のアメリカは賃金上昇無き経済成長期があったらしい。つまり、経済成長したからといって、顕著な賃金上昇が起こるとは限らないといったことをこれまた歴史のなかで経験してるんですね。先のnote参照)

ミンスキーは高投資社会ではなく、高消費社会を目指すべき、そのためには最下層にいる人たちに仕事を与え、所得を得られるようにしなければならない。
低所得者や低技能労働者、または最下層の人たちの行動を変えようとする政策は失敗に終わるだろう。(そして、実際に失敗に終わった)
重要なのは彼らをありのまま受け入れることだと説きました。

そもそも、好景気になったからといって、すべての資産価値が等しく上昇しないのと同じように、すべての産業、すべての会社が同じスピードで成長するわけもないですしね。取り残される産業もあるでしょうし。それを競争に負けたからと言って、切り捨てたら、なんのこっちゃ分からなくなる。

そして、そこに付け加え、自然災害が多い日本ですから、災害対策としてのインフラは早急に整えていくべきです。老朽化したインフラのメンテ、またはまだ高速道路が通っていなくて、交通の便が不便な地方のインフラ、最近では飲酒運転のトラックに子供たちが轢かれてなくなるというなんとも痛ましい事故がありました。子供がガードレールのない道を通学路として使用しているならばガードレールを作る、または通学用のバスを作るなどなどといった公共事業を中長期的に計画を立て、景気変動に関係なく、つまり好況だろうだ、不況だろうが、計画通りに進めていくことは絶対に必要でしょう。

もちろん、コロナ禍の経済、またはダメージを負った人たちへの大々的な『救済』的支出も惜しみなくやらなければならないでしょう。

でも、ではその仕事は誰がどのようにするのか?実際の労働力、人的資本をどうやって確保するのか?といった問題に直面します。

本当に考えなければならないのはそういったことです。

それについては↓のnoteで説明してます。


で、まあ、ここまで書いて、そこまでやってしまうと、政府の赤字がとんでもないことになるんでないの?と思いますよね。

そうですよ。だから、MMTは恒常的に政府は赤字であるべきだ、むしろそれが普通という立場です。

だから、好循環を作りだしたら、税収が増える、さすれば政府の赤字も自然と減りだすだろうといったことはMMTのなかにないですね(ないことはないだろうけど、今の政府支出の内訳ってほとんどが社会保障だから、将来的に人口動態が変化してっていうのは十分あり得る話。でも、まあ、そもそもMMTというのは、アメリカ政府が黒字になった際に、民間投資が過熱しすぎている、つまりバブルだぞ、それはヤバいだろと警鐘を鳴らしたことでウザがられていたわけだし。その話は割愛。レイの2本の黒字への道の話もあるし)

ミンスキーに言わせると、不況の原因は好況ですからね。

そのへんのはなしはまた。

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